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  • ジキルとハイドと私

     酔い止めを求めて来店されたお客様から「使ったことがある」と示された薬は、名前からしておそらく、そのドラッグストアーのプライベートブランドのようだった。
     内容を調べてみて、同じ成分の『乗り物酔い止めQD錠』を案内した。
     案内してみて分かったけど、製造メーカーは同じだった。
     薬にはこういうことがあるので、やっぱり成分表示を取っておくのは大事。
    「この薬効かなかったから、違うのにしよう」と選んだ物が同じ処方というのは良くあること。
     今回のように、同じメーカーが同じ処方の薬を銘柄だけ変えて他社に販売を任せていたりとか、他社の処方を借りて自社名義で販売したり。
     理由はいろいろあるけれど、数億円かけて開発した薬が売れないリスクを負うより、遥かに少ない金額を支払って処方を借りたり買ったりするほうが経営が安定するし、処方を貸したり売ったりする方は自社製品で在庫を抱えるより現金収入を得られる方が、新製品の開発に投資できる。
     それはともかく、お会計をしようとしたら、実は病院で処方されている薬があると言われ(何故それを先に言わないのか(^_^;)、お薬手帳を持参しているというので(偉いのに、何故それを先に〆)、確認させてもらったら、緑内障の治療に『コプト』という目薬を使っていることが分かった。
     どうやらお客様は処方されている薬と併用しなければ大丈夫だと思っていたらしい。
     いえいえ、薬との飲み合わせどころか、『乗り物酔い止めQD錠』の主成分であるメクリジン自体が眼圧を上げてしまうため、緑内障の人の使用は好ましくありません。
     そう説明して、緑内障の人でも使える酔い止めに『苓桂朮甘湯』を紹介してみたけど、海外旅行に持っていくつもりらしく、効果に不安があるようだった。
     ううん、そうなるともう、処方された病院か調剤した薬局に問い合わせて、市販薬を紹介してもらうしかありません。
     たぶん、緑内障の人が使える酔い止め薬は、現代薬には無いと思うけど……。
     ちなみに、酔い止めに使える漢方薬には、同じく水分代謝を調整する『五苓散』がある。
     ただ『苓桂朮甘湯』の方が、上がってくるモノを下ろす効果があるので、『五苓散』は緊張すると喉が渇きやすいとか、胃に水がチャポチャポと溜まっている感じのする胃内停水の人向け。

     『コンドロイザー』や『ナボリンS』などを眺めていたお客様に声を掛けてみたら、案内を断られた。
     最近ようやく、断られるのにも慣れて気がする。
     引きこもり体質のコミュ障なんで、一度断られると、その後数人はお客様に声を掛けるのを躊躇ってしまっていたんだけど、一人のお客様に断られたからといって、もし次のお客様が情報を必要としていたら、迷惑するのは断ったお客様じゃなくて、必要としているお客様の方だからと自分に言い聞かせて。
     しばらくしてお客様が、『ユンケルB12アクティブ』を選ばれてレジに持ってきたところで改めて症状を尋ねてみたら、主訴は肩こりに背中の張りと腰痛だそうで、以前にヘルニアを患っており、何を使おうか迷っているそう。
     それなら先に言ってくださいよ~、と素の私が心の中で囁き、職務上の私の方は、さっきはまだ相談したい気分じゃなかったんだろうなと分析。
     マッサージには通っているらしく、背中の張りは、かなり固いと指摘されたとかも話してくれた。
     そこで漢方薬を案内しようとすると、初めは嫌そうな感じだったけど、それもよくよく訊いてみたら、継続しないと効かないと思っているからのようだった。
     そのため、「風邪には葛根湯」と云われるように、急性の症状には早く効きますし、体質改善はまた別な選択を候補にしたりしますと説明し、『独活葛根湯』を紹介したら購入して頂けた。
     ちなみに、腰痛には『疎経活血湯』を考えていたけど、今回の話では腰痛については、あまり気になるようでもなかったようだったから省いた。
     いっぺんに、あれもこれもと候補にすると、かえって漢方薬は難しいと思われてしまうかもしれないし。
     ………しまったぁ!!
     『ユンケルB12アクティブ』は売れ残り気味だから、在庫を減らしておきたかったんだよねぇ。
     そのまま売ってしまえば良かった(´・ω・`)←素の私
     『ジキルとハイドと裁判員』みたいに、病気の原因とか特殊能力で見れたら良いんだけどなぁ。
     あっ、でも寿命が減るのは嫌だなぁ(´・ω・`)←素の私

     

  • 効能書きだけで選ぶのは無理ですから

     漢方薬の棚を眺めているお客様が電話で話していて、「坐骨神経痛」と聴こえたので、聞き耳を立ててしまった。
     どうやら『疎経活血湯』と『桂枝加苓朮附湯』のどちらを購入するか迷っているらしく、電話を切ったところで声を掛けてみた。
     すると、父親に頼まれたそうなんだけど、その頼み方というのが、排尿痛に『竜胆瀉肝湯』を服用しており、同じメーカーで「効能書きに坐骨神経痛とある物を」なんだそうな。
     そして、お客様はお客様で、『疎経活血湯』の効能書きを見てみたら、効能書きに書いてある症状が「全て当てはまらないと駄目」だと思っていた模様。
     それだと『疎経活血湯』はまだ「関節痛、神経痛、座骨神経痛、腰痛、筋肉痛」と関連してそうな効能だけど、『牛車腎気丸』なんか「下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、痒み、排尿困難、頻尿、むくみ」でカオスなことに(^_^;)
     でも歳を取ると腎の働きが衰え、腎臓病が失明になる事があるように目のかすみと関係し、水分代謝が悪くなると冷えの影響を受けやすく下半身の関節痛を引き起こすため、『牛車腎気丸』の効能書きの症状は、ちゃんと関係している。
     漢方薬に限った話ではないけれど、効能書きはあくまでメーカーが申請して効能書きに記すことを許可された内容だけだから、成分ごとの作用を考えないと意味が無い。
     しかも、主成分の副作用を防ぐために加えられている成分もあるため、相互作用も考えなければならない。
     鎮痛薬に胃を守る成分が入っていたり、というのが分かりやすい例だろう。
     病院でもらう薬の種類が多いとネットで大騒ぎする人がいるけど、総合風邪薬の成分表示を見れば9種類以上入っているなんてのはザラで、それぞれがバラバラに処方されたら多くなろうというものである。(長期的に漫然と同じ薬が処方されているとかとは、別問題である)
     そのうえ漢方薬では、体質や症状での判別も必要になるため、初見の人がパッケージで選ぶのは無理というもの。
     しかもそれが頼まれ物では、なおさらである。
     父親についてのヒアリングを試みてみたものの、外見上の体格などは分かっても、冷えると症状が悪化するかや、痛み方に痺れ感があるかなどは分からなかった。
     今さっき電話をしていたのだから、電話をし直して本人に確認してくれると良いんだけどなぁ……。
     駄目なのかなぁ……。
     こっちからは言い出しにくいしなぁ……(;´・ω・)
     仕方がないので、未開封であれば一定の期間以内は返品を承りますとお話して、お買い上げ頂いた。

     お客様から「鼻風邪の薬を」と注文されたのだけれど、症状を確認すると、主訴は鼻炎とクシャミと喉の痛み。
     ひとまず『ベンザブロックSプラス』を案内したものの、発熱は無いそうなので、解熱剤の入っていない物の方が疲労を防げることをお話して『葛根湯加川きゅう辛夷』を紹介すると、試して頂くことになった。
     すでに夕食を食べたということだったが、この後は内臓の疲労を防ぐために量を控えるよう勧めた。
     栄養面を心配されたけれど、普段の食事が偏っていなければ大丈夫ですとお話した。
     体としてはすでに戦闘状態な訳で、戦う前に武器や燃料の補給は有効でも、戦闘中に補給をするのは人手をそちらにも割かなければならず、戦闘力が低下してしまうのだ。

     

  • 睡眠だって多種多様

     お客様から「市販で眠れる物を」と注文され、ひとまず『ドリエル』と『ウット』を案内した。
     でも、以前に『ドリエル』を使って効かなかったそう。
     『ドリエル』の主成分は、風邪薬や鼻炎薬などに含まれる抗ヒスタミン剤の一種である、ジフェンヒドラミン塩酸塩。
     風邪薬や鼻炎薬における、「眠くなる」という副作用を利用している。
     副作用というと「悪い症状」とか「望まない症状」と考えられがちだけど、あくまで副次的な作用だから本来は良し悪しとは別な話。
     実際、医療現場では副作用の発現を期待して薬を使う機会も少なくないため、これが医療事故の事件性の検証を難しくしてしまうケースも。
     『ドリエル』で眠れないってことは、風邪薬や鼻炎薬での副作用も現れないということなのかな。
     と、変なことに関心を持ってしまった。
     私なんかは、眠れない時にアレルギー性皮膚炎の薬を使ってたけど、真似しないよーに( ̄▽ ̄)
     今回のお客様は疲れている様子で、もし夜勤や不規則な生活をしているのでしたらと『加味帰脾湯』を紹介したら、興味を持たれた。
     睡眠改善薬を買いに来る人は(鎮痛薬もそうだけど)、現代薬しか考えてなかったりするため、漢方薬の話をしてもスルーされることが多いんだよね。
     胃腸薬の人は、漢方薬の話も聞いてもらえる気がする。
     最初から選択肢を狭めるのは、症状を治すなり緩和するという目的からしたら、勿体無いと思うんだけど。
     不眠の状態を詳しく訊くと、寝つくまでに時間がかかり、そのうえ3時間ほどで目を覚ましてしまうそう。
     寝つくまでに時間が掛かるのは肝臓が関係すると考えられるため、柴胡剤の『柴胡加竜骨牡蛎湯』を案内し、試して頂くことになった。
     中途覚醒は腎臓が関係していて、ウツラウツラと眠りが浅いのは胃が関係することが多いから、本来ならそっちも検討するところなんだけど、ストレスでイライラするのが思い当たるというので。
     ただ、起きている時に眠気がしてツライといったことが無いとも言っていた事からすると、体質的に睡眠時間を必要としない体質なのかもしれない。
     ナポレオンが4時間以下の睡眠時間で、それは居眠りの天才だったからという説があるが、稀に短時間睡眠者という人がいるそうだ。
     ところが、世間的には6~8時間程度の睡眠が適切と云われてるもんだから、その情報に引っ張られて睡眠時間が短いことを良くないことと考えてしまい、それ自体がストレスとなって心身を疲労させてしまうという。
     あと、短時間睡眠じゃなくて多相性睡眠の人もいる。
     症状としては似ているが、こちらは1日の睡眠を何回かに分ける体質のため、昼間に眠くなってしまう。
     ただし、ちょっと仮眠を取ればスッキリする。
     あっ、ナポレオンはこっちの方かも(゚д゚)(。_。)(゚д゚)(。_。)
     人間は本来は、多相性睡眠の動物だったという説もあるしね。
     短時間睡眠の場合も多相性睡眠の場合も、現代社会でのスケジュールに合わせるのは大変だけど、共通する対処法としては「気にしない」のが一番である。
     なにしろ病気じゃなくて、体質なんだから。
     足の早い人がいれば遅い人もいる程度の話である、本来は。
     足が遅いからといって、早い人に合わせる必要など無いはずなのだ、本来は。
     そういう事では、フレックスタイムの導入とか、もう少し社会的な取り組みが必要だと思うんだけど、睡眠の多様性を掲げて主導する団体なんかが無いからねぇ。
     対処法の「気にしない」というのが、実践するには難しいのも確か。
     部屋の明かりは消して音楽やラジオを聴いて寝つくまでの気を紛らわせるとか、途中覚醒してしまったら、いっそいったん起きてノンカフェインのお茶でも飲んでリラックスする時間にするのが良いだろう。

     

  • 発熱の初期には額を冷やし、中期からは首の後を冷やす

     鼻水とクシャミ、それと喉の痛みがあるとの相談を、お客様から受けた。
     発熱などは無く、クシャミのほうが先に2日ほど前からというお話から推測するに、喉の痛みはクシャミのし過ぎによるものだろう。
     となれば、喉の痛みは後回しにして、クシャミの方から抑えましょうと提案。
     そして、春に花粉症を患ったというお話から、『小青龍湯』を勧めてお買い上げ頂いた。

     『冷えピタ』を求めて来店したお客様に、売り場を案内しつつ発熱に使うのかを尋ねたところ、患者さんは奥さんとのこと。
     発熱したのは昨日からで38度あるというので、解熱には首の後の太い血管を冷やす水枕の方が向いていることを説明した。
     ただし、風邪の初期のまだ寒気がしている段階では、まだ解熱には早い。
     熱が出ても寒気がしているのは、風邪と戦うための準備をまだ整えているので、そこで解熱しようとするのは、ジャンプをするためにしゃがんだところを蹴り倒すに等しい。
     とはいえ発熱のし始めに上半身が火照ったり頭痛がしたりするのも苦しいから、そういう時には額を冷やしてあげるのが良い。
     それと胃腸の機能が低下することに備えて、過度に栄養を摂ろうとはせずに、食欲があっても消化の良い物に切り替え、量を控えるようにとお話した。
     『冷えピタ』の他に、水枕と経口補水液を買っていかれた。
     『冷えピタ』は、奥さんから指定されていたんだろうな(^_^;)

     

  • 使った薬の情報は大事です

     咳止めを求めて、お客様が来店。
     数日前に風邪をひき、『パブロン』を服用したというのだけれど、どの『パブロン』だったかは覚えていないそう。
     しかも、実際には発熱は無く喉が痛かっただけだった模様。
     それで総合かぜ薬を飲んだら、副作用で体内が乾燥して咳になってる可能性がある。
     そうお話して『麦門冬湯』を勧めたものの、液剤を希望されたため、痰はそれほど出ていないのを確認して『ブロン液L』を案内しお買い上げ頂いた。
     使った薬は、成分表示を手元に残しておくか、スマホで写真を撮っておいてくださいね~。

     お客様から、「しもやけの薬をください」と言われて目が点。
     いや、夏場にしもやけって、それは自律神経が乱れての血行不良ではないのか。
     暑さに負けて内臓が疲労したり、冷房の強い場所と暑い屋外を行き来した時に、血管の収縮拡張が身体への負担になって自律神経が乱れ体の体温調節が上手くいかず、偏った部位が冷えてしまうのだ。
     でも後で調べたら、疾患名としては『しもやけ』という事になるらしい。
     なるほど、先入観はイカンね。
     実際、お客様は医師から「しもやけの薬」ということで塗り薬を処方されたそう。
     ところが、薬の内容が不明のうえ、実際に患部は見せてもらえず、状態を尋ねても教えてもらえなかった。
     店頭で言いづらい部位ということは、無いと思うんだけど……。
     でも話しているうちに、どうも精神不安があるように見受けられたため、まずは希望に沿う薬で、なおかつ穏やかな成分の物を案内するしか無いかなと判断し、『ユースキンA』を紹介した。
     そのうえで、病院を再訪して治療したほうが良いでしょうとお話すると、買わずに帰られた。
     正直、帰ってもらえてホッ=3
     それでちゃんと、病院に行ってもらえれば最善なんだけど。
     足が浮腫むという話も出たから静脈循環障害なのかもしれないし、末梢循環障害のレイノー病かもしれず、担当医が分かりやすく『しもやけ』と説明しただけという可能性が排除できない。
     せめて、処方された薬の内容が分かれば、病態の予測もできるんだけど、精神不安があるようではカウンセリングと経過観察が大事で、カルテのような物を作れないドラッグストアーで継続的な治療は無理。
     候補として『当帰四逆加呉茱萸生姜湯』を当然のように考えたけど、内服薬は考えていないようだったから紹介すらできなかった(;´・ω・)

     

  • クスリ選びは間違い探しクイズ!?

     やや高齢のお客様が、中学生の子供を連れてハイキングに行くとのことで、蜂に刺された場合の対処について尋ねられた。
     どうもお孫さんとかではなく、子供会のようなグループで行くらしい。
     ふむぅ、これは難しい。
     私も、小学校高学年以上の子供たちを50~100人ほどキャンプに連れて行って指導したり補助をしていたけど、虫対策というのは案外と大変。
     ミツバチだったとして、刺さった針を取り除くことと、『急冷ヒヤロン』のように叩くと急冷できる物や濡れタオルを凍らせるスプレーを使い患部を冷やすのが基本であるものの、何に刺されたか分らないという場合もあるため、やはり病院の受診を第一に考えるのが大事だろう。
     スズメバチは黒い物に対して攻撃的になる習性があるから、黒髪が多い日本人は日除けも兼ねて必ず帽子を被ることが重要だし、もし見つけても驚いて大声を出して刺激しないようにと教えておかなければ。
     私が携わっていた頃には、事前に現地周辺の医療機関を調べ、同じく現地の消防本部に問い合わせて、救急車の平均的な到着時間を確認したうえで、先の医療機関に予め挨拶しておいたりしたもんである。
     今なら、ネットで調べられるからだいぶ楽になったはずで、そのあたりを手を抜くことの無いようにとお話した。
     安全対策というのは、大袈裟にしておいて空振りが理想なので。

     普段ソフトコンタクトレンズを使っているというお客様が、最近充血気味なため眼鏡に替えて改善してきているものの、1週間ほど経っていて心配と相談された。
     そうであれば、やはり病院を受診してもらいたいところだけど、なかなか時間が取れないというのも分かる。
     季節柄、紫外線も気になるというので『バイシンUV』をお勧めして、お買い上げ頂いた。

     製薬メーカーの営業さんから、面白いデータを見せてもらった。
     ドラッグストアーにおける、お客様の購買動向に関するアンケートの結果で、約3割の人が来店前に特定の銘柄を決めており、6割強の人が店頭で自分で選び、残りの1割に満たない人が店員に尋ねているという内容。
     私の実感でも、その割合に違和感は無い。
     しかしそうなると気になるのは、自分で選んでいるという6割強の人の判断基準だ。
     そのアンケート結果によると、パッケージを見て決めているという。
     ただ、アンケートではパッケージの何を参考にしているのかまでは分からなかった。
     ううん、そこを調べて欲しいなぁ。
     もしパッケージに書いてある効能効果を参考にしているとしたら、アレはほとんど当てにならない。
     なにしろ、パッケージに書いて良いこと悪いことが厳格に定められているため、どうしても似たり寄ったりになってしまう。
     となると手掛かりは、処方内容ということになるのだけれど、成分で判断するには基礎知識が必要だし、せめてスマホで検索して調べるくらいしないと分からないのではないか。
     例えば、エスエス製薬の咳止めで『ブロン錠エース』と『ブロン錠』を見比べてみよう。
     
     
     パッケージを見ると、『ブロン錠エース』は名前の前に「せき・たんに」と書いてあり、『ブロン錠』は名前の後に「せき・たんに」と書いてある。
     両者の成分表示を比較すると、両者の違いとして顕著なのは、『ブロン錠エース』に『L-カルボシステイン』が配合されている点。
     『L-カルボシステイン』は去痰剤で、主な働きは気道粘膜を正常化して痰の滑りを良くすることだ。
     だからこの場合、咳とともに痰が絡んで出にくいのなら『ブロン錠エース』を、空咳なら『ブロン錠』を選択するという考え方ができる。
     絶対の指針ではないけれど、迷った時には参考になるはずだ。
     そして私ならそこに第三の選択として、痰があるのに出ないのは上半身の水分不足、すなわに乾燥しているからで、それは空咳でも同じことだから、上半身を潤して咳を止める『麦門冬湯』を候補に加える。
     これはまだ成分を比較せずとも、パッケージを注意深く見ていれば、「せき・たんに」という効能効果が名前の前に書かれているか後に書かれているかで区別が付くパターン。
     では、もう一つ例を。
     第一三共ヘルスケアの総合かぜ薬で、『新ルルAゴールドS』と『新ルルゴールドDX』を見比べてみよう。
     
     
     『新ルルAゴールドS』のパッケージには、「鼻水、はなづまりに」として『ベラドンナ総アルカロイド』と『クレマスチンフマル酸塩』、「発熱、のどの痛みに」として『アセトアミノフェン』が表記されている。
     一方、『新ルルゴールドDX』のパッケージには「鼻水・鼻づまり」に順番は違うが『クレマスチンフマル酸塩』と『ベラドンナ総アルカロイド』が表記されており、他に「せき・たん」に『ブロムヘキシン塩酸塩』、「のどの痛み」に『トラネキサム酸』とある。
     これだけを見ると、まるで『新ルルAゴールドS』には「せき・たん」に対応する『ブロムヘキシン塩酸塩』が入っていないみたいだけど、成分表示を見るとちゃんと入っている。
     じゃあ何が違うんだ、と私も悩んだ。
     まるで、『サイゼリヤ』のメニュー表の間違い探し並みに難しいクイズのよう。
     両者の成分表記を見比べてようやく分かったのは、『新ルルゴールドDX』に入っている『トラネキサム酸』が、『新ルルAゴールドS』では『ノスカピン』と入れ替わっているということ。
     『トラネキサム酸』はパッケージに表記されている通り「のどの痛み」止として働く抗炎症剤で、『ノスカピン』は咳止めである。
     でも、『新ルルゴールドDX』では何故か咳についてはパッケージで触れていない。
     それと、『ノスカピン』は副作用として吐き気を発現することがあるので、食欲が落ちている風邪には私はお勧めしない。
     ともかく、この両者の違いに約6割以上という店頭で自分で選んでいる人は、本当にこんな謎解きを毎回しているのかと不思議でならない。
     いや、もしかすると謎解きマニアとかいるかもしれませんが。

     

  • 水枕を使う機会は減りましたが効果的です

     小学生の子供の痒み止めをとのことで、お客様から相談された。
     お腹の周囲が赤く腫れてるそうで、虫に刺されたようでもあり、でも刺し口が見当たらず湿疹のようだという。
     医師みたいに診察できないとはいえ、やはり本人を連れてきてくれないと、どうにも患部の状況が分からず困ったな……。
     すでに3日ほど経過しているというお話と、本人が痒がっているというお話から、ステロイド剤の使用を勧めて、『コートf ATクリーム』を試してもらう事になった。

     『冷えピタ』を求めて来店したお客様に売り場を案内しつつ、風邪などの発熱に使うのかを尋ねたら、患者は成人の娘さんで妊娠38週目とのことだった。
     熱は38度ほどで、食欲が落ちているという。
     そして薬のことを尋ねられたから、妊婦にさんに使えて食欲も落ちてる時に使える物として『柴胡桂枝湯』を紹介はしたけれど、明日には病院に連れて行くというため、今日のところは薬は考えずに、塩分と糖分を含んだ水、すなわち経口補水液などの補給だけして安静に努めるよう勧めた。
     そのうえで、『冷えピタ』より首の後から太い血管を冷やせる水枕の使用を提案し、『アイスノンソフト』をお買い上げ頂いた。

     

  • その痛み、同じ原因とは限りません

     『セデス・ハイ』と『ナロンエース』を一緒に購入されるので、お客様に念のため違う成分の物で良いのか確認したところ、成人の娘さんと自分とでは違う鎮痛剤を使うのでとのお答え。
    「それは良いことですね」とお話すると、娘さんは頭痛と生理痛とでも鎮痛剤を使い分けているという。
     安易に鎮痛剤の種類を増やすようだと問題あるけれど、痛みの原因や発症の過程が違うことを考えると、やはり使い分ける方が良いだろう。
     なんでもかんでも『ロキソニン』とか『イブプロフェン』というように、体の負担を全く考えないのは、歳をとってから困ることになる。
     ただ、鎮痛剤自体が一時しのぎであり、鎮痛剤に頼っていると重大な病気を見逃してしまう可能性があるため、軽減する治療も検討するように伝えた。
     例として、低血圧や目眩を伴う頭痛で、ストレス等が思い当たる場合には『苓桂朮甘湯』が候補になることをお話したら、お客様自身は適応が思い当たるらしかった。
     いずれまた、ご相談をという事に。
     同じく水分代謝の異常で、胃に水が溜まる感じや重い感じがする人の頭痛には、『五苓散』が候補になります。

     『葛根湯』を購入されるお客様に、上半身を温める物なので夏場には向かないことを伝え、使うとすれば雨やエアコンで冷える時にとお話したうえで、夏風邪に適応する物として『柴胡桂枝湯』を紹介した。
     そして、『葛根湯』は家に置いておくより持ち歩くよう勧めたところ、お客様は『葛根湯』を未病(発症する前の状態)に対応するために実際に持ち歩いてるとの事だった。
     ありゃん、とんだ赤っ恥(ノ∀`*)
     でも、お話してみないと「知ってるかどうか」は分からないし、相手が実は知っているかもと思って言わなかったら、知らない人はずっと知らないままという事に。
     もともと一人大好き、話し掛けられるのも話し掛けるのも苦手な私としては、プロポーズするよりハードルが高いけど、声を掛けない訳にはいかない、と自分に発破をかける。
     あっ、奥さんにはプロポーズしてないわ。
     知らないうちに、結婚することが決まってたから。
     お母んには、「一人に絞ってなかったアンタが悪いJ( ‘ー`)し」って言われた……。

     

  • 「言葉は多くの場合、心を隠す役しかしない」と云いますが、言わないと分かりません

     風邪薬を次々と手にして迷ってる様子のお客様に声を掛けたら、中国人のようだった。
     カタコトの日本語で聞き取った限りでは、主訴は喉の痛みと頭痛の模様。
     『新ルルA』と『新ルルAゴールドDX』を手にしていたけど、主訴に狙いを定めた方が良いことをなんとか伝えて、『ルルアタックEX』と『パブロンエースAX』と『ベンザブロックL』を候補に挙げた。
     その後もしばらく迷われて、『パブロンエースAX』を購入された。
     帰られてから気がついたけど、『葛根湯』も見ていたから、『銀翹散』を勧めてみても良かったかも。
     意思の疎通を図るのに気を取られて、すっかり忘れてた。

    【第(2)類医薬品】パブロンエースPro 36錠【セルフメディケーション税制対象】

     『スキュータムA』をレジに持ってきたお客様に症状を詳しく訊いたら、親指を突き指したらしく、手首まで痛みがあるという。
     初期には氷で冷やしたそうなので、より鎮痛効果の高いインドメタシン製剤か浸透力のあるフェルビナク製剤での短期決戦を提案した。
     それと、当初は貼る物を希望していたけど、関節部でもあるため液剤を勧めたら、蒸発して効き目が弱まることを心配していると分かった。
     なるほど、今まで液剤を避ける人がいるのが不思議だったんだけど、そういう風に思われていたのか(゚д゚)(。_。)(゚д゚)(。_。)
     やはり、対話してみないと分からないもんですな。
     薬を決め打ちで買うお客様には、後学のためにも、ぜひ「選んだ理由」や「使っている理由」を教えて頂きたく。
     今回は、『バンテリン液』を試してもらう事になった。

    【第2類医薬品】【興和】バンテリンコーワ 液EX W 90g【バンテリン】【肩こり・腰痛】
     

  • 精神的な病気は家族の病気?

     中学生の男の子の咳止めを求めて、お客様が来店した。
     でも、なんだかいつもと勝手が違う。
     他店で購入した『ルル』(種類は不明)が効かず、『ストナプラスジェル2』を買ったらカプセルが大きく、子供が飲みづらかったという。
     そして、本人は痰がからむと言っているらしいのだけど、咳が酷くなるタイミングなどは分からない模様。
     現代薬に『ブロン錠エース』を、漢方薬に『麦門冬湯』を案内してみると、本人は不登校で普段は体調が優れず、でも遊びに行く時には元気だという話をされた。
     全然関係無いが、「不登校」という言葉が嫌い。
     正確には、いつも間にか「不登校」に用語が統一されたのが納得いかない。
     詳しい経緯は知らないけど、私が子供の頃には「登校拒否」と言っていた。
     それが、登校しない理由は、イジメとか家庭の事情とか様々だからという理由で「拒否してる」んじゃなくて、状態として「不登校」に統一されたとか。
     それで、「不登校は特別じゃない」という事にしたいみたい。
     でも、それじゃ明確な意志を持って「拒否してる」子供が、状態としての「不登校」に取り込まれて、「特別なことじゃない」なんて言われたら、他にどんな行動を起こして自己を表明すれば良いというのか。
     意志を持った登校拒否は、それ自体が行動の一つなのに、それが「特別なことじゃない」なんて受け入れられてしまったら困ると思うんだけど。
     何か事件の一つでも起こさないと、「特別視してもらえない」訳で。
     現代の子は、大変だ。
     ……思いっきり話が逸れた。
     でも昔なら、学校に行こうとすると体調が崩れて、遊びに行く時には元気というのは「単なる甘え」と見られていたのが、現代では心療内科的に『非定型うつ病』という診断があり、ストレスによる自律神経失調症とも関係するという見立てが出来るようになったのは良い点か。
     痰がからむ感じがして、「んんっ、んんっ」と咳払いしつつも実際には痰が出ないようなら『半夏厚朴湯』が候補になることを説明した。
     もしかすると、カプセルが飲みにくいというのも、気道や食道がストレスで狭くなっているせいかも。
     でも今日のところは、お客様自身が以前から使っていてお気に入りらしい『ブロン錠エース』を購入された。
     そして、お客様自身は『加味逍遙散』を不眠に常用していて、一度別な漢方薬に変更したら駄目で、また戻したそう。
     ただ、その変えたという漢方薬を覚えていなかったため、何か分からなかった。
     うーん、お客様とお話していた感じだと、お客様自身がストレス性の精神不安なんじゃあるまいか。
     『加味逍遙散』が不眠に適応しているというのもそうだし、最終的に自分の好みの薬を選んで、今回の患者である子供の症状には感心が及んでいない判断基準の偏りは、不安神経症の人にありがち。
     まぁ、子供の不登校に悩んでいるとすれば当然か。
     でも、その親の不安感やピリピリ感が子供に伝播していたり、あるいは子供が何か親に言っても、最終的に親の好みに受け応えが偏るようだと、それが今度は子供のストレスになってという循環を生み出している可能性すらある。
     子供の不登校問題に限らず、高齢者の認知症とか、アルコール依存症とかで、本人を心療内科や精神科に診察させる時には、実は家族の方をこそ受診させたほうが良かったりするんだよねえ。
     これが、風邪とか怪我とかなら受診勧奨しやすいんだけど、心療内科や精神科を受診してみてはと勧めるとなると、途端にハードルが高くなって店頭では言い出しにくい(ー_ー;)
     眠剤とか抗うつ剤とかの、悪いイメージが先行しているのも問題だ。
     漢方薬に詳しい心療内科や精神科の医師が、何処かにいないかな?

     『ベンザブロックせき止め錠』を選んでるお客様に声を掛けてみたら、主訴は喉の痛みで、3日ほど前からというお話だったため、咳止めよりも『パブロントローチAZ』で患部の炎症を抑えるか、『駆風解毒湯』で患部を冷やすよう提案してみた。
     すると、一週間前には風邪をひいていたという。
     それですと、体内が乾燥しているのが原因かもしれません。
     前言撤回になるけど、それなら上半身の保水をする咳止めの『麦門冬湯』が候補になる。
     ところが、体内の乾燥については強く否定された。
     疑問形ならともかく、なんでそんなに強く否定されたのか分らない……(^-^;
     でも一方で、どうやらトローチを医薬部外品ののど飴と同じように思っているらしく、それゆえに効き目に疑問を持っているのだと、お話していて分かった。
     そこで、『パブロントローチAZ』は医薬品で効能が確認されている事と、トローチの利点は患部の近くに長く留まることですと説明すると購入を決められた。
     お会計しながら、喉の痛むときの養生についても伝えようとしたけど、興味が無さそうだったため、しつこく感じられても困るのでやめた。
     まぁ、炎症を起こすのは体のほうでは熱を出したい理由があるからなんで、お風呂に入ったり温かい物を飲むことで、体に「頑張って熱を出す必要が無い」ことを教えてあげてというだけなんですが。