• タグ別アーカイブ: 風邪
  • 第7回 「体質における実証と虚証」

     第5回では「病証における実証と虚証」について解説しました。
     ところが「虚実」は、体質を表現するときにも使われており、胃が丈夫で体格が良く普段から体力がある人を「実(じつ)」といい、胃が弱くて体格が弱々しく普段はあまり体力のない人を「虚(きょ)」といいます。
     そのため両者を混同して、体質が実の人は実証で、体質が虚の人は虚証だと決めつけてしまっている俄(にわか)漢方医さえいます。
     確かに、体力のない人は正気が衰退して虚証になりやすく、体力のある人はなかなか正気が衰退しませんから実証の期間が長く続きます。
     しかし病証における虚実と、体質における虚実は必ずしも一致するものではありません。
     例えば、体力が少なく貧血気味であっても普段はあまり風邪をひかない人は、たとえ体質としては虚証でも外感の病邪に対抗する抵抗力はまだ衰退していないので、風邪のひき始めは、正気と病邪の間に激しい闘争が起こり、病証としては実証が現れます。
     漢方製剤の効能書の中に、「比較的体力があり……」というような記載を目にすることがあります。
     しかし漢方の見立てをする時には、体質としての虚実だけにとらわれずに、必ず病気を発生させた病邪がまだ強いのか、それともすでに正気が衰退しているのかを判断することが必要です。
     一般的には、急性症または再発直後の病証の多くは実証に属し、慢性化して疲労により悪化するような病証の多くは虚証に属します。
     あくまで一般的にはですけど( ^ ^ ;)

     

  • 第3回 「漢方薬は長く飲まないとダメ?」

     初めてお客様からの質問に答えることになります。
      ついでに言うと、初めて漢方薬の具体的な内容になります(^ ^;)
     漢方薬は一般に、効きが遅いと思われていますが、決してそんなことはありません。
      漢方薬は、病気の初期から遷延期までの進行具合と患者さんの体質に応じて使い分けられるように 体系化されています。
      例えば、よく風邪に用いられる葛根湯(かっこんとう)は、 風邪をひいたなと感じた時点ですぐ服用すれば、1~2時間で改善されるケースが多く見られます。
     その最初の一服で効果がなければ、2~3時間後にもう一度服用するようにします。
      ひき始めの風邪なら、たいていはそれで治ります。
      それこそ漢方薬の講習会では、 「一晩で風邪を治さなければ、お店の信用は無くなりますよ!」と、脅かされるくらいです(^ ^;)

     

  • 第2回 「漢方医学と西洋医学の違い」

     西洋医学は、人間の体を分析し、個々の臓器や細胞などの状態を調べ、 その結果をもとに胃の病気、心臓の病気というように病気を分別していきます。
      そして、胃が悪ければ胃を、心臓が悪ければ心臓を治そうとします。
      これは主に西洋のキリスト教徒に、この世界は神が「人間のために作られたもの」との考えがあり、 「病気(自然)に対して挑戦する」・「思い通りにコントロールする」という発想によるものです。
      少し話がそれますが、捕鯨禁止運動なども「自然を大切に」というよりも 「自然は人間のもの」、「鯨が可哀想」というのも「鯨は可愛いペット」という感覚が、 見え隠れしており、根底には先に記した思想が横たわっています。
     私もキリスト教の信者ですが、これはあまりにも奢った考え方ではないでしょうか。
     一方、東洋の思想には「人間も自然の一部」という考え方があり、 「自然との調和」を目指してきました。
      これは病気への姿勢も同じで、漢方医学では、体を分解せずに全体を診ます。
      例えば風邪をひいた場合でも、 胃が熱を持ったために風邪の症状が出たのではないか、 それならば風邪を治すだけではなく胃も治さなければ、 あるいはストレスから風邪の症状が出たのではないか、 それならば緊張をほぐしてあげなければというように考えます。
      つまり、病気とは「生体の恒常性(ホメオスターシス)の乱れであり、 体の調和が壊れて発症する」という認識に立った医学が、漢方医学なのです。
     そこでよく言われるのが、 「病気を治すのではなく、人を癒すのです」という言葉です。
      私が漢方薬の講習会に行くたびに、講師の方に何度も教えられました。