薬は、「いつも飲んでるから大丈夫」とは限りません

 お客様が『イブクイック頭痛薬DX』を購入されるさいに、鎮静成分のリスクを伝えて「大丈夫」というお返事だったのだけれど、レシートを置いていかれたので追いかけ、『医薬品副作用被害救済制度』の利用に必要とお話しして渡した。
 しかし、お客様は「いつも飲んでるから」と言って去っていった。
「眠くなることがある」と説明することの多い鎮静成分は、脳の認知機能を落としてしまうので「眠くなったことは無い」という人も、その眠気そのものを認知できていなかった可能性がある。
 だから、車の運転や危険を伴う機会の操作は御法度だし、事務仕事などは効率が落ちることを考慮したほうが良い。
 副作用が出て入院治療が必要になった場合、『医薬品副作用被害救済制度』を利用するには購入した店で証明書を発行してもらわなければならないが、レシートが無ければ対応してもらえない。
 そして「いつも」というのは、かえって心配になる。
 鎮静成分には依存性があるから、気が付かないうちに薬物依存になっているかもしれないし、人間の身体は機械ではないから毎日同じ状態とは限らず、副作用は飲み慣れた薬でも起こり得る。
 どうか、事故のありませんように。

 お客様が『OS-1』を2本と『OS-1ゼリー』1個を購入されるのでヒアリングしたところ、ご主人がワクチンを接種するのに備えてというため、パッケージに書いてある使用上の注意と発症していない時に飲むリスクを説明した。
 『OS-1』は自由に買えるけれど、使用のタイミングについては「医師・薬剤師・管理栄養士・登録販売者」の指導に従って飲むようにという注意書きがパッケージに記されているのに、読んだことあるという人は、まずいない。
 一般的な経口補水液と較べてミネラル成分が多いのが『OS-1』の特徴で、ミネラルは腎臓などの循環器に負担をかけてしまうため、気軽に飲むものではないのだ。
 特に、内臓機能が低下していたり既往症がありがちな高齢者や、内臓が未発達な小さな子供は注意が必要。
 たいていは、他の経口補水液やスポーツドリンクで充分である。
 お客様からは、ワクチンによる副反応などについて何か情報を知っているかと尋ねられたので、症状が現れたとして相談のできる病院や薬局を先に見つけておくのが薬を備えるよりも大事なこととお話した。
 ワクチンを接種した当日は、余計なエネルギーを使わないために消化に良い食事をと勧めた。
 お客様ご自身のカラ咳の相談も受け、胃の不具合の可能性をお話したところ、病院を受診して異常無しとのことだったが、走った後の足の疲労が足に異常無しと診断されるのと同じことと説明し、ゆったりと入浴することを勧めた。
 例えば、カラ咳に使う漢方薬の『麦門冬湯』の生薬構成は胃薬に近く、胃を癒すことが咳止めとして働くと考える。
 なので、温かいものを積極的に飲んだり、入浴して内臓の血行を良くするのが養生法となる。

 お客様が『セイロガン糖衣A錠』と『アルコール75%』のボトルをレジに持ってきたさいに、前者は『正露丸』と処方が異なることを伝えると驚かれたけれど、下痢を止めたくはないというので「良い判断です」と答えた。
 ただ、『正露丸』から痙攣を抑える生薬と炎症を鎮める生薬を抜いたのが『正露丸糖衣A錠』であり、胃腸には味覚も嗅覚もあるので、あの独特の匂いもまた効果のうちであることは説明した。
 そして、『アルコール75%』のほうは裏側に「保湿液」と書いてあることと、「消毒」あるいは「殺菌」の表示は厚労省の認可を受けなければ書けない用語であることをお話して、アルコールではなくベンザルコニウムの『メディスコール』に変更となった。
 ベンザルコニウムの方が手荒れしにくいと伝えたところ、同じ成分の『コーワ消毒液』も購入された。

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