効能書きだけで選ぶのは無理ですから

 漢方薬の棚を眺めているお客様が電話で話していて、「坐骨神経痛」と聴こえたので、聞き耳を立ててしまった。
 どうやら『疎経活血湯』と『桂枝加苓朮附湯』のどちらを購入するか迷っているらしく、電話を切ったところで声を掛けてみた。
 すると、父親に頼まれたそうなんだけど、その頼み方というのが、排尿痛に『竜胆瀉肝湯』を服用しており、同じメーカーで「効能書きに坐骨神経痛とある物を」なんだそうな。
 そして、お客様はお客様で、『疎経活血湯』の効能書きを見てみたら、効能書きに書いてある症状が「全て当てはまらないと駄目」だと思っていた模様。
 それだと『疎経活血湯』はまだ「関節痛、神経痛、座骨神経痛、腰痛、筋肉痛」と関連してそうな効能だけど、『牛車腎気丸』なんか「下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、痒み、排尿困難、頻尿、むくみ」でカオスなことに(^_^;)
 でも歳を取ると腎の働きが衰え、腎臓病が失明になる事があるように目のかすみと関係し、水分代謝が悪くなると冷えの影響を受けやすく下半身の関節痛を引き起こすため、『牛車腎気丸』の効能書きの症状は、ちゃんと関係している。
 漢方薬に限った話ではないけれど、効能書きはあくまでメーカーが申請して効能書きに記すことを許可された内容だけだから、成分ごとの作用を考えないと意味が無い。
 しかも、主成分の副作用を防ぐために加えられている成分もあるため、相互作用も考えなければならない。
 鎮痛薬に胃を守る成分が入っていたり、というのが分かりやすい例だろう。
 病院でもらう薬の種類が多いとネットで大騒ぎする人がいるけど、総合風邪薬の成分表示を見れば9種類以上入っているなんてのはザラで、それぞれがバラバラに処方されたら多くなろうというものである。(長期的に漫然と同じ薬が処方されているとかとは、別問題である)
 そのうえ漢方薬では、体質や症状での判別も必要になるため、初見の人がパッケージで選ぶのは無理というもの。
 しかもそれが頼まれ物では、なおさらである。
 父親についてのヒアリングを試みてみたものの、外見上の体格などは分かっても、冷えると症状が悪化するかや、痛み方に痺れ感があるかなどは分からなかった。
 今さっき電話をしていたのだから、電話をし直して本人に確認してくれると良いんだけどなぁ……。
 駄目なのかなぁ……。
 こっちからは言い出しにくいしなぁ……(;´・ω・)
 仕方がないので、未開封であれば一定の期間以内は返品を承りますとお話して、お買い上げ頂いた。

 お客様から「鼻風邪の薬を」と注文されたのだけれど、症状を確認すると、主訴は鼻炎とクシャミと喉の痛み。
 ひとまず『ベンザブロックSプラス』を案内したものの、発熱は無いそうなので、解熱剤の入っていない物の方が疲労を防げることをお話して『葛根湯加川きゅう辛夷』を紹介すると、試して頂くことになった。
 すでに夕食を食べたということだったが、この後は内臓の疲労を防ぐために量を控えるよう勧めた。
 栄養面を心配されたけれど、普段の食事が偏っていなければ大丈夫ですとお話した。
 体としてはすでに戦闘状態な訳で、戦う前に武器や燃料の補給は有効でも、戦闘中に補給をするのは人手をそちらにも割かなければならず、戦闘力が低下してしまうのだ。

以下の記事も読まれています。


 
登録販売者から一言 壱の巻 登録販売者から一言 肆の巻「おくすり手帳と個人情報の使い方」 市販薬購入前チェックシート