患者さん本人とのリアリングが上手くいくとも限らない

 お客様が12歳の子供を連れ、咳止めを求めて来店した。
 本人に酷くなる時の状況を尋ねると、話そうとしたりして息を吸おうとすると喉に引っ掛かる感じがするとのこと。
 そして痰が多く出るそうで、喉の痛みもあるということから『ルキノン咳止め錠』を候補にしたけど、咳の音からするとカラ咳で体内の乾燥も考えられるため『麦門冬湯』を紹介し、胃炎が原因でストレスが関係するかもとお話すると、中学受験が思い当たるみたい。
 本人の選択により『麦門冬湯』を試してもらうことになり、夏野菜を避けて根菜を摂る食養生と、入浴などで下半身を温めるよう伝えた。
 トマトやキュウリは苦手だそうだから、今回の症状では良かったかも。
 それにしても、ちゃんと自分で答えようとする子供と、話に割り込まずにサポートに徹する親というのは珍しい。
 親子両方の性格によるものなのか、教育による賜物か、他の要因か。
 自分の体のことなのに関心無さ気に親に任せてしまう子や、子供に症状も剤形の好みも語らせず勝手に話を運んでしまう親の方が圧倒的に多いから、感心してしまった。
 普段の家での関係は知らないけど、良好なんじゃないかと勝手に想像。

 『柴胡桂枝湯』に興味を持った様子のお客様に声を掛けてみると、ここ数日食欲が無くて吐き気がして食べていないため、今朝は胃液だけ嘔吐したそう。
 うわっ、大変じゃないですかΣ(´∀`;)
 ちっとも、そうは見えなかった……。
 下痢は無いそうだけど、疲労感はあるというから『柴胡桂枝湯』は適応しそうなので、勧めてそのままお買い上げ頂いた。
 もし食欲が戻っても、胃腸の方はすぐに受け入れ体制は整えられないはずなため、まずは味噌汁やスープといった噛まずに食べられる物から再開するように伝えた。

 お客様から「メンタームを」と注文されて案内したら、探していたのは『メンソレータム』のリップクリームだった。
 まぁ、名前が似ているから間違えるのも無理は無い。
 元々は、アメリカのメンソレータム社から『メンソレータム』を輸入販売していた近江兄弟社が製造まで手掛けるようになった後に事実上の倒産をし(正確には自主再建を断念し会社更生法を申請)、『メンソレータム』の販売権はロート製薬が取得した。
 面白いのはその後で、大鵬薬品工業の資本参加で近江兄弟社が再建をはかるさいに、主力製品だった『メンソレータム』の製造販売をしようとしたところ、メンソレータム社が許可を与えなかったため、以前に『メンソレータム』の略称として商標登録してあった『メンターム』を商品名として類似処方で販売を開始したんだそうな。
 いやもう、自分で書いてて混乱してくるよ(笑)
 で、話戻ってお客様の症状はというと、口角炎。
 患部を見ると、見た目で分かるくらいパックリと両方の口角が切れているので、『ヒビプロLP』や『モリアップ』などでの治療を勧めたら、何も買わずに帰られてしまった。
 ありゃん、面倒臭がられたか(;´Д`)
 というか、しきりに「スナック菓子の食べ過ぎで~」とか「まともに食事してないから~」と言っていて、会話が成立しなかった……。
 口角炎の原因は、お菓子の食べ過ぎなんかの偏食もそうだけど、胃炎の可能性があるから『半夏瀉心湯』『黄連解毒湯』で炎症を抑えつつ、『チョコラBB』といったビタミン剤で栄養を補うのが最善の策。
 というような話も、出来なかったよ。

 マスクと『葛根湯』をレジに持ってきたお客様に、『葛根湯』は咳のある風邪と発熱には向かないことをお話すると、体がダルイとのこと。
 それでしたら、『柴胡桂枝湯』の方が適応すると考えられますと紹介すると変更して購入された。
 食欲はまだあるそうだけど、消化の良い物に切り替えて量を控えるように伝えた。

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