患者さんの希望に沿うことの難しさ

 夫婦のお客様が、数種類ある『葛根湯』で迷っている様子だったので声を掛けたところ、ご主人が喉が痛いとのこと。
 そして、喉の痛み以外の症状は無いと言うので『駆風解毒湯』を紹介したうえで、風邪が気になれば『銀翹散』も候補になることを説明した。
 すると、喉はそれほど痛くなくイガイガする感じがするということから、胃炎の可能性をお話しして『麦門冬湯』を提案した。
 こんなふうに、お話をしていくうちに主訴が最初に聞いたのと変わってくることがあるため、ヒアリングというのは案外と難しい。
 そのうえ今回は、あくまで『葛根湯』を希望されたため、『桔梗湯』を併用する方法もお知らせしたうえで、『葛根湯』の種類自体は生薬の濃縮の違い程度で、どれを選んでも基本的には変わらないことをお話しして、お買い上げいただいた。
 本当のところは、上半身を温める『葛根湯』では、ますます患部が乾燥してイガイガしてしまう可能性があるし、濃いタイプだと温まりすぎて胃が気持ち悪くなるケースも想定される。
 しかし、本人の望む物を提供するのは小売業の基本だし、医療現場でも説明して納得していただいたら治療方針を決定するのは患者さん自身という考え方がある。
 ただ、栄養ドリンクの『ユンケル』や『ハイクタンD』にも興味を持たれたため、栄養ドリンクを体で処理をするのにもエネルギーを必要とするため、かえって体の負担になる可能性を伝えた。

 『ストナデイタイムをレジに持ってきたお客様に症状を尋ねると、鼻水もクシャミも無く、主訴は咳と痰と喉の痛みだと言うので『パブロンエースAX』を勧めたところ、『パブロンSゴールドW』を飲んで効いた気がしないため、他社製品を選んだということだった。
 実のところ、同じブランド名がついていても名前に数字や記号があると内容は似て非なる物だから、乗り換えるのであれば同じブランド名か同じ会社の製品の中で乗り換えた方が良い。
 下手に他社製品に乗り換えてしまうと、実は同じ成分の薬だということがあり得るのだ。
 しかも今回の場合、主訴と薬の内容が合っていないときている。
 他社製品を使いたいと言うお客様の希望を汲んで、『ルルアタックEX』を紹介して、お買い上げいただいた。
 痰の面倒は見てくれないが、喉の痛みを軽減できれば「効いた」と感じてもらえるだろうと判断したもの。
 それと、痰の原因になるキュウリやトマトといった夏野菜は避けるようお話しした。

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