家族でも同じ薬が合わないケース、昔から使っていても歳とともに合わなくなる薬もあります

 夫婦のお客様が来店し、奥さんが咳止めの『アスクロン』を買い物カゴに入れていて気にかけていたところ、『のどスプレー』を求められたので殺菌系と抗炎症系の他に両方を合わせたハイブリッドの3種類を紹介した。
 何かご主人と相談していたようだが、『アスクロン』のみを購入となった。
 ゼーゼーとかヒューヒューと喉が鳴る呼吸が苦しい人向けで良いか尋ねると、常備薬にしていて一番良く効くからとのお話だった。
 ただ、家族で使ってるというため、家族でも症状や体質に合ってるとは限らないので、薬を分けたほうが良いこともあるのを説明した。
 一般的に風邪による咳の原因がウイルスなどなのに対して、この『アスクロン』が適応する喘息の咳はハウスダストや花粉症といったアレルギー性の場合で、気管支が炎症して狭くなっている場合には『五虎湯』も候補となる。
 他にも胃炎などによる体内の乾燥ならば、『麦門冬湯』のように上半身に保水したり喉を潤す去痰剤の『ストナ去痰カプセル』が候補になるし、同じ喘息でもストレスが関係して喉が締まり咳払いが多くなる場合には『半夏厚朴湯』『柴朴湯』といった、より適応する薬を使ったほうが良い。
 特に『アスクロン』には内臓機能を低下させて咳を抑えるノスカピンも入っており、胃の働きも悪くさせるので服用時の食事に気をつけるよう伝えた。
 咳をすると脳はエネルギーを欲しがってお腹が空くものの、胃の働きは悪くなっているから消化の良い食事を量を控えめにすることが、養生として必要になる。

 子供を連れたお客様が来店し、数日前に『口内炎パッチ大正クイックケア』を購入していただいたのだけれど、夜寝ている時は大丈夫なものの昼間は取れやすいとのことで、『オルテクサー軟膏』をお買い上げとなった。
 食事で食べ物が患部に触るというお話があったので、基材が口の中に残るパッチタイプを勧めたのだが、軟膏のほうが手軽に塗り直すことができたかもと考えると、私の判断ミス。
 申し訳ない。
 せめてものお詫びの気持ちで、先日は急いでる様子だったためカットした養生法として、身体は炎症させて治したいと思ってるから入浴したり下半身に厚着をするとともに、冷たい物の飲食は避けて患部にしみない程度には温かい物を摂るよう勧めた。
 どうして身体が患部を炎症させるのかというと、熱することで血流が良くなり、老廃物を回収したり修復する材料を運ぶのが活発になるうえ、ウイルスなどの外敵が原因の場合には免疫力を高めることができるから。
 ところが、炎症している部分を冷やすと気持ち良いので、つい冷たい飲み物を飲んだり冷たいサラダなどを食べがち。
 そうすると身体の方は、「もっと頑張って炎症しなきゃ」と炎症を強めてしまう。
 そこで身体が温まる工夫を重ねると、「あっ、頑張って炎症しなくても大丈夫なんだ」と身体が気づいて炎症も落ち着く。
 ここのところ気温が低くなっているのも炎症が強まる一因と伝えたところ、お客様も納得された様子だった。

 お客様から胃薬を求められ売り場に案内すると『太田胃散』を選ばれたので、血圧の薬は使っていないか尋ねたところ何か病院から処方はされていて、いつもは飲んでおらず血圧が高い時だけ使っているとのことだったが、薬の名前を覚えてなかった。
 血圧を下げる降圧剤にも種類があり、血管を拡張する物、血液をサラサラにする物、利尿作用によって血圧を下げる物と様々。
 薬によっては、血圧が高い時だけに飲むのではなく日常的に飲まなければ意味が無い物もあることをお話して、先に担当医か調剤する薬局に相談してから『太田胃散』を使うか、成分表示をお薬手帳に貼って事後報告する方法が考えられることを説明したうえで、お買い上げいただいた。
 お客様からは、「必ず血圧が高くなるの?」と繰り返し訊かれたけれど、人間は機械ではないので人によるし、その日によるし、状態にもよると答えた。
 おそらく今までは気にしたことが無かったのが、急に不安になったのだろう。
 むやみに不安にさせるのは私も本意ではないものの、これを期に気にしてもらいたいところ。
 お客様は「昔から使ってる」と言うので、『葛根湯』を例に、歳とともに使えなくなる薬もあるとお話した。
「風邪の初期には葛根湯」と云われるが、上半身を温める力が強く胃に負担がかかるため、もともと胃腸が弱い人には適さず、血圧も上昇させるので高齢になってきたら避けた方が良いこともある。
 すると、まさにお客様自身が『葛根湯』を飲むと胃が苦しくなると言われたことから、胃腸と肝臓の働きを助ける『柴胡桂枝湯』を紹介したら「良いことを聞いた」と喜んで帰っていかれた。
 心配である( ´Д`)=3

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