風邪の初期に備えるのなら『葛根湯』と『銀翹散』の両方があると安心です

 お客様から初めは『葛根湯』のドリンク剤をと注文されたけれど、主訴は喉の痛みと微熱で、『葛根湯』がどんな物なのか知らないというため、『銀翹散』と比較して説明した。
 一般に「風邪の初期には葛根湯」と言われているが、この「初期」というのは症状が現れてからでは遅い。
 なんとなく「悪寒がする……気がする」とか「頭が重い……かな?」といった、予兆の段階、早め早めに使うのが効果的。
 そしてその特性は、上半身を温めて血流を良くすることだから、さきほどの悪寒の他に鼻水など「温めると具合が良くなる」症状に適している。
 反対に言えば、体を温めて具合が悪くなる症状には向かなくて、喉の痛むときだと余計にヒリヒリして、咳があったらますます咳は酷くなり、発熱していたらもう温める必要は無い。
 その反対の症状に適応するのが『銀翹散』で、上半身を冷すことにより喉の痛みや鼻づまりに使えるから、風邪の初期に備えるのなら『葛根湯』『銀翹散』の両方があると安心。
 発熱して体の節々が痛むような風邪の中期には『麻黄湯』を、熱が下がって疲労回復の目的には『柴胡桂枝湯』を用意しておくとなお良し。
 胃腸虚弱だったり、微熱から熱が上がらないまま低空飛行になりがちな人は、最初から最後まで『柴胡桂枝湯』を使うという手もある。
 どうやら今回のお客様は、『葛根湯』を栄養ドリンクのたぐいと思っていた模様。
 ただ、当たらずとも遠からずと云えなくもない。
 朝はだるいとか、目覚めがスッキにしない場合に使うと、血流が良くなってシャッキリとする。
 お客様は家に、総合風邪薬の『パブロン』リーズのどれかがあるからドリンク剤だけ欲しいという話になり、あまり価格の高くない物をお望みのようだったのでコストパフォーマンスの高い物として『キューピーコーワαドリンク』を紹介したところ購入された。
 総合風邪薬は咳が酷くなるまでは飲まない方が体に良いとお話して、鎮痛剤もあるというため併用できる『ペラックT』と『パブロントローチAZ』も紹介した。

 高齢のお客様から『キスミー薬用リップクリーム』は唇の割れに効くか尋ねられ、『モアリップW』を紹介したけれど、以前に使って刺激があり駄目だったとのこと。
 メントールが少し入っているから、そのせいかな?
 病院ではストレスが原因と説明され、唇の割れを治す薬も無というお話をされたのだが、お薬手帳を見せてもらうとベンゾジアゼピン系の精神安定剤が処方されていると分かった。
 ここは、お客様のお話を聞くことに徹して、ご主人の介護の苦労話などに時間をかけ、『キスミー薬用リップクリーム』を試していただくことになった。
 唇は胃の不具合も関係することをお話しすると、「大丈夫」とのことだったけれど、お薬手帳では胃薬も処方されていた。
 内臓には痛覚神経が無いので(あったら心臓が動くたび、食事をするたびに激痛でのたうち回ることになる)、自覚症状が無くても疲労していたり悪くなっていることはあり得る。
 嫌なイメージになるけど、胃壁が食道を通して体の外に裏返ってるのが唇なので、唇が荒れているのは胃が荒れてると考えて消化に良い食事にするのが養生法となる。
 なんでも、お客様の息子さんは医師で、お孫さんは薬剤師だそうだ。
 ご家族のことは分からないけれど、医療者が身内に冷めた対応をするのはありがち。
 また、家族ということでバイアスがかかるのを避けるために、あくまで身内は他の医療者に任せるというスタンスの人もいる。
 お客様は、市販の薬を使った場合に担当医に報せていないというので、成分表示はお薬手帳に貼るよう勧めた。
 そうすれば、処方されてる薬と市販薬を一元管理できる。

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