風邪かなと思う症状が風邪とは限らない!? すぐに風邪薬がススメられない訳

 お客様が『パブロンAゴールド』を手に、医薬品以外の一般用品を精算するレジに向かったので追いかけ、医薬品専用レジに案内しながらヒアリングすると常備薬にしていて、いつも咳は出ないというため『PL顆粒』を紹介した。
 総合薬は、咳止め成分の入っていない物を探すのが難しいくらいで、それはつまり咳が無ければ使う必要も無いと云える。
 そもそもは医学的には「上気道炎」のことを指し、上気道とは「喉から鼻にかけて」の部分。
 鼻から下、肺にかけては「下気道」と呼び、いわゆる肺炎はが悪化するとなる別な病気でではない。
 そしての原因の90%以上はウイルスであり、ウイルスの種類によって喉の痛みが強く出たり咳になったり、あるいは鼻炎のほうが目立つというように症状に偏りが現れる。
 よく「私は、喉からになる」という人がいるが、実はではないか、喉に影響を及ぼすウイルスに弱いということが考えられる。
 ここで重要なのは、病気を診断することができるのは法律的にも職能的にも医師だけという点。
 私たち登録販売者はもちろん薬剤師も、それどころか患者さん自身がだと決めつけるのも問題がある。
 特に上気道の一部である喉には、空気の通る「気道」と、飲食物が通る「食道」が並んで通っており、痛みを感じる神経はその両者の違いまでは分からない。
 どちらが炎症していても「喉が痛い」と感じるだけである。
 つまりどういうことかというと、ウイルスなどで気道が炎症しているのか、胃炎などで食道が炎症しているかも分からないのだ。
 自分は胃は丈夫とか、胃は苦しくないと思っても、それもまた分からないこと。
 何故なら、内臓には痛覚神経が無い。
 もしあったら、心臓が動くたび、食事をするたびに激痛に悩まされてしまう。
 ではどうして胃が痛むことがあるのかというと、異常が起きている場合に近くの神経が代わりに教えているのだ。
 それは、胃が痛むようであれば、すでに相当に悪くなっているということである。
 話をに戻すと、喉の痛みだけだと胃の不具合の可能性を排除できず、その段階で総合薬を使うのは時期尚早。
 例えば咳止めの成分には2つの系統があり、気道を拡張をして呼吸しやすくする物と、咳をする神経を抑える物だ。
 人間の体は機械ではないから、都合良く咳だけに作用させるということはできず、気道を拡張する方は胃の働きを活発にして胃炎を招き、咳をする神経を抑えると胃の働きをも抑制して消化力を落してしまう。
 先にも書いたように、もし胃炎が喉の痛みの原因となっていたら余計に酷くするし、咳をする神経を抑えると身体の保水機能も落ちて体内が乾燥して、これもまた喉の痛みの原因となり得る。
 さらに、総合風邪薬には鼻炎薬も入っていて、鼻水を止める成分は便秘の原因となるくらい体内を乾燥させてしまうので、同様に喉には良くないのだ。
 複数の症状に対応しようとしている総合風邪薬は、そういった副作用の複雑な薬でもあり、実は使いにくい。
 風邪に備えて薬を常備するのであれば、発熱と喉の痛みには解熱鎮痛剤で対応できるから、後は鼻炎薬と咳止めをバラバラに用意しておき、起きた症状に合わせて使ったほうが良い。
 カフェインなど一部の成分の重複に気をつければ、2つ以上の症状が現れた場合には併用するという事もできる。
 そして市販の風邪薬の中で、ゆいいつ咳止め成分が入っていないのが『PL顆粒』なため、これなら咳止めを別に持っておくだけで良い。
 ところで、先のお客様は喉の痛みなどより、体がだるくなることが多いということから『柴胡桂枝湯』を案内すると、『パブロンAゴールド』と一緒に購入された。
 市販の風邪薬を眺めてみると分かると思うけれど、「発熱・のど・鼻・せき」と書いてある製品はあっても、「だるさ・吐き気」に対応する現代薬は存在しない。
 体のだるさや吐き気のある時に使えるのは漢方薬だけで、その代表が『柴胡桂枝湯』である。

「風邪薬の選び方と風邪に似た症状」

 高齢のお客様が『パブロンSゴールドW』をレジに持ってきたけれど、常備薬にするというので鎮痛剤が家にあるか尋ねると無いというため、鼻炎薬と咳止めを組み合わせると風邪薬になることを説明し、症状別に揃える方法を提案した。
 そのうえで、総合風邪薬を使うとすれば症状から外れている場合を考えて小容量を勧め、処方のバランスの良い内容の物として『パブロンSα』を案内すると変更となった。
 さっきは長くなったから途中で話を戻したけど、実は気道を拡張する咳止めは覚醒剤系であることが多く、咳を抑制するのは麻薬系だったりする。
 よく「この風邪薬を飲むとすぐに治るから」と言われる事があるんだけど、「そりゃ良く効いた気がするでしょうよ、覚醒剤が入ってるんだから」と思ってしまう。
 そのうえ、同様に興奮作用があるカフェインまで入っていれば、なおさらである。
 問題は、それで治ったと錯覚して体に無理をさせてしまい風邪を悪化させてしまうことと、覚醒剤と麻薬には常習性があるから、風邪をひいていなくても「ちょっと体調が悪いから」と症状も出ていないのに飲んでしまうこと。
 その点、『パブロンSα』は咳止め成分が非麻薬性なので、ほんの少しだけ安心。

 お客様が『プレコール持続性カプセル』をレジに持ってきたけれど、主訴は喉の痛みと鼻炎で咳は無く、家に他のドラッグストアーのPB(プライベートブランド)の鎮痛剤があるようだったので、そちらを先に使ってみてはと提案したうえで『PL顆粒』を紹介し、そちらに変更となった。
 『プレコール持続性カプセル』に入ってる咳止め成分は麻薬性なのに、同シリーズの『プレコール持続性せき止めカプセル』の方は非麻薬性の咳止め成分なのが不思議。
 ちなみに漢方薬の咳止めに『麦門冬湯』という物があって、上半身を潤して咳を止めるのだが、生薬構成からすると胃薬に近い。
 乾燥性の咳は、胃炎が起きていると覆いかぶさっている肺が乾燥して咳になると考えられ、つまりは胃を治すと咳も治まるという事でもある。
 だから、咳がある時には食欲があっても食事を消化の良い物に切り替えるのが養生法となる。
 そして、もし本当に風邪だとすれば体を休めるというのは「内臓も含めて休ませる」ことなので、やはり食事は胃腸に優しい物にするのが望ましい。
 そこから考えても、咳があるからと総合風邪薬に飛びつくより、まずは症状に合わせて使う薬を検討するのが良いだろう。

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