冷えの咳、乾燥の咳、炎症での咳、咳にも色々ありまして

 風邪薬の棚で迷っている様子のお客様がいたので声を掛けてみたけど、案内を断られた。
 そして『ベンザブロックS』をレジに持ってきたところで、改めて症状を尋ねてみると、鼻水と鼻づまりを行ったり来たりしている鼻炎だとのこと。
 鼻以外の症状が無く、鼻水と鼻づまりを行ったり来たりするのは体温調整が上手くいっていないからと考えられることを説明し、解熱剤や鎮咳薬なんかまで入っている風邪薬より鼻炎薬にしてはどうかと提案した。
 すると、そもそも症状は軽いらしく、どうも薬が必要なようにも思えない。
 入浴に関して確認したらシャワー派だというので、それなら体温調整を安定させるためには血流の改善が大事とお話して、熱すぎないお湯に、ゆったり入るよう勧めた。
 という訳で、本日のところはお買い上げは無し。
 去り際に、「勉強になりました!」と言われた。
 しまった~、鼻炎にも風邪にも使える『葛根湯加川きゅう辛夷』は紹介しておくべきだった。
 レジに来る前の段階だったら、紹介しやすかったんだけどなぁ(苦笑)

 成人の娘さんの肌の乾燥と痒みということで薬を買いにいらしたお客様、詳しく症状を訊くと患部を掻いた時にブツブツができるという。
 乾燥が原因で?
 それは、乾燥じゃなくて何かに反応しているのでは?
 いや、そうではなく先に痒みを感じて、その時点では皮膚に変化は無いという事なのか。
 だとすれば、寒暖差アレルギーのようにも思える。
 でもリクエストは乾燥の薬だから、ひとまず保湿にと尿素入りの『ケラチナミンコーワクリーム』を案内しつつ、今までに尿素入りの物を使ったことがあるか尋ねると、本人じゃないから分からないという。
 うん、まぁ……そうですよね。
 それで改めて痒みに適応する薬を候補に挙げようと思ったけど、お話からすると本人から頼まれた模様。
 本人からは、「何でもいい」と言われてるらしいのだが、患部の様子や症状が酷くなる時あるいは軽くなる時といった情報が無いのでは、範囲が広すぎて、薬の適応はもちろん、そんな当てずっぽうなことにお金を使って頂いて良いものなのかと。
 この頃になって、ようやく当初の疑問である「何かに反応しているのでは?」というお話をすることができて、お客様も「本人じゃないと分からないわね」と帰っていかれた。
 本当にそう考えたのか、私の対応を面倒くさいと考えたのかは、それこそ分からなかったけど(;´Д`)

 咳止めの棚を眺めているお客様に声を掛けた当初は案内を断られたけど、しばらくして相談を受けた。
 良かった。
 トイレに行きたくて、でもお客様が売り場にいる間はレジを離れられないから困ってたのσ(^◇^;)。
 冷たい物を飲むと咳が出るというお話で、今日も子供が飲み残したジュースを飲んだら咳が酷くなったそう。
 冷えが原因の咳となると、いつもの体内の乾燥を改善する『麦門冬湯』や、寝る時に咳き込むような炎症での咳に用いる『五虎湯』ではなく、上半身を温めて咳を止める『小青龍湯』の出番か。
 そう考えて案内しようと思ったら、お客様は薬局勤務だという。
 あれ?
 それでしたら、薬によっては自店で購入できるのでは?
 すると、「うちの薬剤師さん意地悪だから、相談できないんです」というお答え。
 え~と、あまり踏み込まないほうが良いのかしらん(^_^;)
 でも周辺情報も重要だったたりするため詳しくお話を訊くと、ホントにそんな薬剤師さんが居るんかいなと思うような話が次々と……。
 一発アウトではないだろうけど、問題アリ……いや、たぶん大丈夫… きわどいけどオーケー、違法ではないしギリで平気……?(『人類は衰退しました』の私ちゃん風に)
 もちろん、それは一方的な話を聞いた範囲でだけど。
 少なくも、職場環境は悪そうである。
 ううむ、なんというタイミング。
 いや、実は先日、ピッタリな漢方薬を入荷したばかりで。
 別にお客様から『カンポアズマ』を取り扱ってないかと問い合わせがあり、その時には生憎と置いていませんとお詫びした。
 そして、その時点では入荷するつもりも無かった。
 というのも、この『カンポアズマ』は、抑うつなどの精神神経症状がある人が呼吸困難になった時に用いる『神秘湯』と、これまた緊張性の喘息を患っている人に適応する『半夏厚朴湯』を合わせた処方。
 要するに、そんな症状の人は病院に掛かっているケースが考えられ、店頭で応対する機会は多くない。
 でも、市販薬で販売しているからにはメーカー側では、何か広範囲な適応を想定しているのではないかと気にもなっていた。
 そしたら、某会合で『カンポアズマ』とは別なメーカーの学術部の人と逢う機会があり、使いどころを尋ねてみた。
 他のメーカーの製品なのに、詳しく教えてくれた(笑)
 いや、その節はありがとうございましたm(_ _)m
 その人の話によると、冷えが原因の咳に適応するという。
 例えば今の季節なら、暖かい部屋の中にいて寒い外に出ると咳き込むとかである。
 多くの咳は、気管支の炎症や乾燥によるものだけど、確かに冷えが原因の咳というのはあるものの、それは細胞が縮こまり防御態勢になるからで、そういう時には『小青龍湯』で温めてやるものと思っていた。
 じゃあ『カンポアズマ』との使い分けはどうかというと、『小青龍湯』が上半身に働きかけるとすれば、『カンポアズマ』は柴胡剤でもあり肝臓に働きかける『神秘湯』と、喉のつかえ感を改善する『半夏厚朴湯』との組み合わせにより咳を抑える。
 というのも、肝臓は暑さにも寒さにも極端に弱く、肝臓を傷めると抑うつ状態になることがある。
 そういう事では、『小柴胡湯』『半夏厚朴湯』を合わせた『柴朴湯』に近い使い方が考えられる。
 なので、以前に何度か『柴朴湯』が適応しそうな患者さんがいらした時に、うちのお店では『柴朴湯』を入荷できるルートが無く病院で処方してもらうよう案内するしか無かったのだが、『カンポアズマ』て代用できるかもと考えたのだ。
 そして試しに仕入れてみたら、今回のお客様の来訪。
 冷えが関係する咳で、ストレスも加わっているとすれば『カンポアズマ』が適応しそうである。
 乗り換え先として『半夏厚朴湯』と、薬局は店内が乾燥しがちだから『麦門冬湯』を紹介し、『カンポアズマ』を試して頂くことになった。

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