眠れないことは苦しいでしょうから、関係無いと思えることも、どんどん話して下さいませ

 杖をついたお客様から『ドリエル』を求められ、他にも同じような薬があるか尋ねられたので『ウット』を紹介したけれど、前に使った物の方が安心とのことで『ドリエル』の購入を決められた。
 使っていた薬を変えないというのは、一つの判断基準として悪くない。
 ただ、主成分のジフェンヒドラミンは眠りに入りやすい代わりに、目覚めてから頭がボーッとする人もいる。
 その点を確認すると、大丈夫とのことだった。
 いずれにせよ、もともとジフェンヒドラミンは鼻炎薬やアレルギー性の皮膚疾患の飲み薬として使われていて、その副作用である眠気を睡眠補助剤として利用しているから、長く使うような薬ではない。
 お客様からは他に咳の相談を受け、夜中に出て激しくはないというため上半身を潤す『麦門冬湯』を案内したところ、中枢神経系に働きかけ興奮を抑える系統の鎮痛剤と、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の鎮痛剤の他にも何か胃薬が処方されていると分かった。
 ズゲッ(゚д゚;)!!
 睡眠補助剤を使って良いか、担当医か調剤している薬剤師に確認しないと駄目じゃないですか。
 最初に、もっと詳しくヒアリングするべきだった~。
 『麦門冬湯』の方は使っても問題は無いはずだけれど、神経を抑制する鎮痛剤の副作用で体内が乾燥して席になってる可能性があるし、ジフェンヒドラミンも身体の保水機能を狂わせてしまう。
 そう説明すると、お客様自ら「先生に訊いた方が良いかな?」と言われたので、「そうですね」と答えた。
 すると今度は、足が勝手に動く症状で通院しているという話も出て、情報量が多すぎ対応しきれなかった。
 たとにかく、いったん『ドリエル』も『麦門冬湯』も購入をやめてもらって、科目が違っても困っていることは医師に相談したほうが良いと伝えて、お帰りいただいた。
 あっ、そうそう、市販薬を買う時にもお薬手帳は必要なことと、普段から持ち歩くように伝えた。
 出先で事故に遭って意識を失っていたら救命処置をするのに大事な情報源となるし、大規模災害で避難所生活になった場合には特例として医師の診察を受けずに薬を受け取れるうえ、救援物資に入れてもらうよう依頼することもできる。
 それにつけても、久しぶりに怖い案件だった(((((n;‘Д‘))ηナンダカコワイワァ

 若いお客様から『ネルノダ』のドリンクを尋ねられ、置いていないことと効果には疑問があることをお話したところ興味を持たれた。
 同シリーズの内容からすると、糖分とGABAで脳をリラックスさせ、ヒハツの効果により血管を拡張し、生姜が血流を良くすることで睡眠の質を上げようというのだろう。
 しかし、糖分なんか他の飲食物で過多になるくらいだし、GABAはもともと脳内で作られる物。
 疲労回復を謳うドリンク剤に入っていることの多いタウリンと同じく、体内に存在する物を外から多く摂ったらといって本当に役に立つのかは分からない。
 血管の拡張と血流の改善なら、お風呂に入れば済むことである。
 つまり、「効果が無い」とは言い切れないが、お金を払って買うほどの意味があるのかというと疑問の方が大きい。
 お客様は話を聞いていただけるかただったので、漢方における睡眠の考え方も説明した。
 漢方では睡眠は内臓機能と関係があるとされ、眠りにつくのに時間がかかる入眠困難は“肝”が亢進していて、眠りについても夜中に目が醒めてしまう中途覚醒は“腎”の不調であり、寝て履いてもウツラウツラとして深く眠れないのは“脾”(胃腸)が疲労している、というように原因を探っていく。
 すると、お客様は新卒で就職したばかりということと、疲労感はあるものの日中に急な眠気が起きたりはしていないというため、肝を支えて胃を助ける『柴胡桂枝湯』を紹介したところ購入された。
 先述した代表的な3種類の睡眠障害では、入眠困難に『柴胡加竜骨牡蛎湯』『抑肝散陳皮半夏』とか、中途覚醒に『牛車腎気丸』のほか『知柏地黄丸』とか、眠りが浅いのなら『加味帰脾湯』『桂枝加竜骨牡蛎湯』などの候補があるが、人間の体は機械ではないから「ソレにはコレ」といった決め方はできない。
 特に睡眠は、生活習慣や仕事の内容、あるいは家族関係や友人関係など、かなりプライベートな情報が必要だから、関係無いと思えることも、どんどん話してもらえると助かる。
 お客様から服用方法を尋ねられ、適宜増減のことをお話すると「聞かなかったことにしますね(ニッコリ)」と言われた。
 あははは、ちょっと話しすぎてしまいましたね(^_^;)
 基本は食事と離れた時間で「食間」ということになり、目安としては食前なら30分前、食事をしたなら1時間後くらいが目安。
 市販薬は、どうしても用法・用量が定められていて、それを逸脱する使い方はできない。
というか、安全のためには守らなければならない。
 でも、病院で処方される場合には医師の監督下において「適宜増減」という使い方もあるというお話をした次第。
 体重によっても量と効果が変わるから、少量で効くなら減らすとか、効き方が弱ければ増やすという運用方法があるのだ。
 この話をするのは、自己責任で試してみてはということではなく、病院へ行くのを促すためにしているので、誤解の無いように。
 危なそうな人には別な話題を持ち出すんだけど、今回のお客様は分別がありそうだったので。
 あと、昼間に急な眠気に襲われるような不都合が起きていなければ、体を横にしての休息自体に意味があるので寝ることにこだわらなくても良いことをお話した。
 それから、眠気を誘うには学校での校長先生の話を聞いていると眠くなるのと同じように、脳に退屈させるのが良いので、心の中で1から100までゆっくり数えるのを10セット、つまり1000数える方法を教えた。
 新型コロナウイルス禍で大変なときですが、お仕事頑張って下さい(´∀`*)ノシ

 お客様が『ドリエル』を購入されるさいに、目覚めに頭がボーッとしないか尋ねたところ「大丈夫」とのお返事だったけれど、目的がカフェインを大量に摂取してトレーニングしたら眠れなくなったからとのことだった。
 駄目じゃん!!
 カフェインは単純に興奮させる作用があるだけではなく、血管はもちろん各臓器にも負担をかけ、ジフェンヒドラミンは反対に身体機能を低下させるから、身体に良くないことを伝えたけれど、「大丈夫」と返されてしまった。
 ………無力だ(´・ω・`)ショボーン

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