お会計をする前と、お会計をしてからの、どのタイミングで情報提供するか、それが問題だ

 お客様が『ポピショット』を購入されたけれど、消毒系であることを伝えると、抗炎症剤のアズレン製剤を使っていて使い切ったから代わりにするというので、消毒系のリスクとして患部が治ろうとするの邪魔することと体を守る菌も倒してしまうことを説明した。
 喉の痛みにアズレン製剤を使っていたのであれば、同じ成分を継続したほうが良い。
 その説明の中で、ヤクザを取り締まったら半グレがのさばってしまうという喩え話をした。
 実は体を守ってくれる菌だけでなく、体にいついてる菌なら悪い菌も居たほうが良いのだ。
 それこそ体表部に常在しているアクネ菌はニキビの原因ともなる困り者だけれど、同じく常在していて食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌の活動を抑制してくれる。
 じゃあ、食中毒を起こすなんて危ない黄色ブドウ球菌は倒したほうが良いかというと、実は体の外部から来る菌を退治してくれるから、居なきゃ居ないで困るのだ。
 そんな体に悪さする菌も、宿主である人間に死なれては生きていくのに不便だから、そうそう住む場所を荒らすこともしないという複雑な関係。
 お客様にはキャンセルも受けますと伝えたのだけれど、そのままお帰りになった。
 私の方もお会計をする前に、のどスプレーには殺菌系と抗炎症系があることを伝えれば良いのだけど、すでにレジに並んで買う気になってるお客様の中には、早くレジを通さなければ「急いでるんです!」と怒り出す人もいる。
 でも、レジを通すと目的を達したと感じるのか、あとは財布を出したり電子マネーなどで精算するだけと思って気が緩むのか、ようやく話を聞いてもらえる。
 そして、レジに並ぶ前に案内を申し出ても「大丈夫です」と断られることが圧倒的に多い。
 だから、お客様の方から現在の症状とか目的に合っているかを相談してもらえるのが一番なのだが、自身で選んだ物は間違いないと確信しているのか、あるいは何が問題かを把握していないからなのか、質問しようという発想すら湧いてこない。
 そのため、こうして自身が使っていた適応する薬と違う物を選んでしまうということが起こる。
 この溝をどうやって埋めれば良いものか、それが課題でもある。

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 お客様から『イソジンうがい薬』を求められたけれど、唾を飲むのも痛いというためアズレン製剤を勧めた。
 喉が痛む時に『イソジンうがい薬』を使うと「楽になる」とか「治る」とという人がいるものの、それはある意味では錯覚に過ぎない。
 殺菌剤は刺激物でもあるため、虫に刺されて痒いところを叩くと痺れて痒みが気にならなくなるように、患部を荒らしている刺激で痛みが軽減したり、そもそもの痛みが軽く炎症も弱ければ自然に治っているだけ。
 殺菌剤の使いどころとしては、家族で風邪をひいている人がいるとか、職場などで風邪が流行っているという場合に、短期集中的に感染予防とするのが適している。
 普段から使っていると、むしろ自身の防御力を弱めてしまう。
 そして今回のお客様は、心臓の薬の他にも多くの処方薬を飲んでいると分かり、いつも調剤している薬局に相談するようお話した。
 薬の種類によってはイソジンは使えないし、アズレンは大丈夫だったとしても、調剤している薬局を頼らずに市販薬を買いに来ていること自体が問題。
 お客様にも、うがい薬だからといって安全ではないことを伝えたところ、本日はお帰りになった。

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 高齢者夫婦のお客様が来店し、『葛根湯』を購入されるさいに合わない症状があることを伝えると、主訴は体のだるさで、ついさっきからというため『柴胡桂枝湯』を紹介したうえで、『葛根湯』を飲むのであれば家に帰ってからじゃなく、たった今であることをお話した。
 一般に「風邪の初期には葛根湯」と言われているれど、上半身を温める特性上、内臓が冷えて起こる鼻水や発熱前の悪寒など、体を温めると改善する症状に良く効く反面、喉の痛みや咳などのように温めて悪化する症状には適さない。
 もちろん発熱してからではもう遅く、胃への負担もあるから、胃腸の機能が低下していると考えられる体のだるさには良くない。
 ただし、だるさは血行不良でもあるため一時的に体を温めてみるという使い方はあり得る。
 それでも、体のだるさは時間が経つほど身体機能が低下してくるので、使うタイミングは速さを要する。
 お客様にも、『葛根湯』をキャンセルしていただいても構わないことを伝えたのだけれど、そのままで良いというから、体の負担を考え2日以上は飲まないように伝えた。
 例えるなら『葛根湯』は体に戦うよう鞭打って活を入れるのに対して、『柴胡桂枝湯』は体をマッサージして労るようなもので、体が弱っているときにどちらが適しているかは明白であろう。

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 お客様が『ボラギノールA』の座薬を持ってきてレジに持ってきたさいに、ステロイド剤なので炎症が強い時に向いてると説明し、出血がある場合には止血剤の入っている『プリザエース』が候補になると伝えたところ、「イボ痔には?」と質問されたので舌下錠の『ヘモリンド』を紹介した。
 『ヘモリンド』は、舌の裏側に置いて胃腸を介さずに血液に直接吸収してもらうことによって患部に効果を発揮する。
 すると、『ボラギノールA』と『ヘモリンド』の両方を購入された。
 お客様には、初期であれば日帰り手術なので先に病院に行ってから、市販薬を使うかの判断を医師にしてもらう方法もあることをお話すると、「考えてみます」とのことだった。
 イボ痔となると、表に出いるのが1個だとしても肛門の奥には2~3個できている可能性もある。
 実は、肛門の中にイボができていても人間は知覚することができない。
 というのも、人間の内臓には痛覚神経が無いからだ。
 これは当然のことで、もし痛覚神経があったら、心臓が鼓動するたび、物を食べるたびに痛みにのたうち回ってしまう。
 なのに、胃痛などを感じるのは近くの神経が異常を報せてるんである。
 肺炎を背中の痛みとして感じたり、心筋梗塞を肩の痛み、肝臓がんを腰痛と勘違いしてしまうのも、この神経の仕組によるものだから、漫然と市販薬を長期連用されると怖い理由でもある。

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