胃の症状は患者さん側にも医療者側にも、「語彙力」と「想像力」が必要

 お客様から胃薬の場所を尋ねられ案内すると、いつもは『第一三共胃腸薬』を使っているとのことだったが小容量の物が品切れで、症状をヒアリングして上手く言語化できないようだった。
 まぁ実際、自分の症状を人に伝えるというのは案外難しい。
 喉の痛みでヒリヒリするのかズキズキするのかというのなら、まだイメージが共通化できるけれど、胃の不具合となると「シクシクした痛み」とか「重いような感じ」など患者側とヒアリングする側の双方に想像力と語彙力が必要となる。
 私が、子供に薬を買い与えるときに子供本人を連れて練習させたほうが良いと言ってるのも、ぶっつけ本番で上手くいく訳が無いからだ。
 今回は、どうやら胃もたれがあるようなので、胃と腸のどちらが原因かでも対応さが変わることを説明し、健胃剤が多く疲れたいを助ける『第一三共胃腸薬プラス』の方を試していただく事になった。
 胃もたれは胃の不具合とは限らず、腸の機能が低下していると胃に食べ物を送ってこないようストップをかけて起こる場合があり、そういう時には腸の消化力を改善する『タナベ胃腸薬ウルソ』を用いるという選択もあり得る。
 つまり、同じ症状でも原因が異なる可能性があり、「いつもの定番の薬」が合うとは限らない。
 そのためお客様には、胃薬を選ぶのは難しいとお話して、最初に店員を捕まえて相談してみるよう勧めた。

「ホントは難しい胃薬の選び方」

 お客様から『ソルマック』を求められ、うちのお店には医薬品のソルマックは『ソルマックプラス』しか置いていないことを伝えたところ「それで良い」とのことだったが、残ってるのが一個しかないと分かると何故か買わずにお帰りになった。
 もっと多く欲しかった?
 でも、胃薬はその時々で状況が変わるから量があっても仕方がないし……。
 指定医薬部外品の『ソルマックサキノミ』なら在庫は多くあるものの、ウコンに蘇葉と紅参を加えただけの清涼飲料水みたいな物で、胃には優しくても、あまり効果が期待できる物ではない。

 お客様が『大正漢方胃腸薬』を購入されヒアリングしてみたけれど、「いつも使っている」とのことで症状は教えてもらえなかった。
 それでも一応は、お湯と水のどちらで楽になるかの鑑別方法を教え、『半夏瀉心湯』も紹介してみた。
 お湯を飲んで楽になるようなら胃の疲労が考えられ『安中散』に筋肉の痙攣を抑える『芍薬甘草湯』の入った『大正漢方胃腸薬』が合うし、水を飲んで楽になるようだと胃炎や逆流性食道炎の可能性があり『半夏瀉心湯』が候補となる。
 ただし、健康な人でも1日に約50回は胃液が逆流しており、疲労していると患部の修復が間に合わなくて症状が起きているケースもあるため、そういう場合には『半夏瀉心湯』ではなく『ギャクリア』(六君子湯)を使うのだけれど、そこまでは紹介できなかった。

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