葛根湯を便利に使うキーワードは「温めると良くなる」

 お客様が『葛根湯』の液剤を購入されるさいに、強い喉の痛みや咳と発熱には適応しないことを伝えると、「風邪には葛根湯がイイと聞いた」というので、上半身を冷やして喉の痛む風邪に対応する『銀翹散』との対比を例に、上半身を温めて具合が良くなる症状に用いることを説明した。
 なんでも医師に『葛根湯』の処方を頼んだら、「あまり薬は出さないようにしている」と断られたとのこと。
 お客様が主訴を話してくれないので判断しにくいが、その医師としては『葛根湯』は不要と診断したのだろうか。
 お客様には、落語の『葛根湯医』のお話をして、合わない症状もあることを重ねて説明した。
 『葛根湯医』には様々なバージョンのサゲがあり、私が知っているのは大工が屋根から落ちたと聞いて「よし、葛根湯だ!」というもので、他の人からは、患者を連れてきた付き添いの人にも『葛根湯』を飲ませようとするのもあると聞いた。
 それから、上半身を温める『葛根湯』は液剤よりも持ち歩きやすい顆粒タイプを常に携帯し、出先が寒い時に服用する使い方を教えた。

 漢方薬の棚で肩こりの関係の物を見比べていたお客様がいたので声をかけるか迷っているうちに、他の買い物をするためにレジにいらしたので、お会計をしながらヒアリングしてみた。
 運動して楽になる肩こりには上半身を温める『葛根湯』が適していて、痛みが強ければ『独活葛根湯』も候補となる。
 一方、ストレスや胃の不具合からの肩こりには『コリッシュ』(治肩背拘急方)を使うのが良いことを説明した。
 運動して楽になるのは血行不良と筋肉の硬直が原因となるが、胃に不具合がある場合は前かがみになりやすく、首だけでボウリングのボールほどの重さを支えることになり、それが肩こりの原因ということがあるのだ。
 つまり後者の場合は、血行を良くするよりも胃の不具合を解消する方が優先となる。
 ただお客様は、『葛根湯』は漢方薬だから効くのに時間がかかると思われているようだったので、「風邪には葛根湯」と云われているように、即効性があることをお話した。
 また、『葛根湯』の上半身を温める作用を利用して、思わぬ薄着で出かけて寒かった場合や、夏場にエアコンが効きすぎている場合に活用できることを伝えた。

 お客様が『パブロン SゴールドW』を購入されるさいに、喉の痛み止めには弱いことを伝えると、今回は痛くないとのことでそのまま購入された。
 しかし興味は持たれたので、喉の痛みには抗炎症剤のトラネキサム酸やアズレン、グリチルリチン酸などが入っている物が有効なことをお話したところ、『パブロンエースPro』について訊かれ、イブプロフェンを濃くすることで対応していると考えられることを伝えた。
 それから、風邪の予兆がしたらすぐに使える物として『葛根湯』を紹介し、また上半身を温める性質を利用した活用法をお話したうえで、総合の風邪薬よりも、喉の痛み・咳・鼻炎などの症状別に薬を備える方法もあることをお話した。
 すると「今日はお金が足りないから」と言われて、営業トークになってしまったかとハッとした。
「薬は不要なのが一番」と返したけれど、話に夢中になって配慮が足りなかったと反省(´・ω・`)

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