情報料は別途という時代が来るだろうか

 夫婦で来店し、旦那さんの咳について相談を受けた。
 咳は今朝からで、一週間前には喉の痛みがあったものの、喉の痛みについては落ち着いているそう。
 おそらく胃炎を起こしていて、胃に覆いかぶさるようにある肺から気管支にかけてが乾燥しているのだろうと予想し、咳が出るタイミングは話そうと息を吸う時ではと問い掛けるとドンピシャだった。
 まぁ、これは占い師が使うコールドリーディングの一種である。
 コールドリーディングとは、大きくは外れないだろうという問い掛けをして、相手に「私は貴方よりも貴方のことをよく知っていますよ」と錯覚させる技術で、これを活用することで信頼性を高める、あるいは騙すことができる。
 いや、外れたら外れたで、「そういう例もありますので」と知識が豊富なように装い、次の質問をシレッと続けて正解を探るだけのこと。
 ………と書くと、何やら悪いことをしてるみたいですが(^_^;)
 病院の診察室とか、話をするのが前提の場所と違って、店頭に買い物に来るお客様の殆どは、手軽に問題を解決できることを望み、長話もする気は無いから、質問は少ないほうが好ましい。
 でも、適切な薬を提供するには、現在の症状の他に経過はもちろん、他に使用した薬の情報、付随して食生活や仕事のこと、家族の有無にその家族の健康状態など、情報は多いほうが良い。
 そこで必要なのは、短時間でお客様の信頼を得て自ら色々なことを話してもらえるようにするのと、お話中にも肌の色や眼の状態、唇の艶や声の強弱といった身体的な情報を読み取るための時間稼ぎなのだ。
 でもって、ドラッグストアーで買う薬の販売価格には当然の事ながら、従業員の賃金が含まれている訳で、何も相談せずに自分で買うお客様というのは、これはもう「楽して儲ける」ことができて大変ありがたいです(*´∀`)
 ……あれ?
 ええとつまり、単純に成分とかを丸暗記してるんじゃなくて、小めんを優雅に泳ぐ白鳥が水面下では必死に足を動かしてるんですよーとかなんとか、カッコつけてみるテスト。
 とにかく、今回のお客様には体内が乾燥しているだろうことを納得して頂き、上半身を潤す『麦門冬湯』を試してもらう事になった。
 それと、咳が出ている間はキュウリやトマトといった夏野菜を避けるように伝えた。
 胃炎に限らず、体としては患部を治すために炎症を起こしたい理由があり、体を冷やす食事をすると、体の方はもっと温めようと頑張ってしまい炎症を強めてしまうので。
 というような情報の提供も、薬の販売価格に含まれていますので、訊かないと損ですよん♪
 そういえば、化粧品なんかに関する情報誌には「実は原価は10円」とか載ってたりするけど、入手の手間や調合の手間を考えてないよね?
 そして、使いこなすための知識とか、そういうのも含めての販売価格だと思うんだけど。
 そういう意味では、ネット通販で薬を買う人は、通販での販売価格をどう考えてるんだろう?
 個人的には、ネットでの薬の通販は推進派なんだけど、やっぱり販売店に相談のメールの一つもしないで買ってるのなら、私は「損してる」と思う。

 『タイガーバーム』を求めて、お客様が来店。
 確か、輸入販売をしていた株式会社龍角散の契約は切れたんじゃなかったっけ。
 うちのお店からは、すでに引き上げてしまっている。
 成分としては『メンソレータム軟膏』が近いので案内すると、お買い上げ頂くことになった。
 他に、外用消炎剤で『フェイタスZ2.0%』より『フェイタス5.0』の方が濃くて効くのかと質問された。
 ブランド名を浸透させようと同じ名前で出すメーカーが悪いんだけど、『フェイタスZ』と『フェイタス』は、成分からして別物なことを説明した。
 『フェイタスZ』の主成分はジクロフェナクナトリウムで鎮痛効果と浸透力に優れ、『フェイタス』の主成分はフェルビナクであり鎮痛効果は弱まるものの浸透力は高い。
 つまり単純な主成分の濃さで言えば『フェイタス』の方が濃いと言えるけど、効果が違うものを濃さだけで比べるのは難しい。
 しかも薬の場合は強ければ良いかって言うと、症状の強弱や体との相性もあるため、なおさら単純には比べられない。
 だからまずは、容量の少ない物で試してみてくださいという事になる。
 そして、フェルビナク製剤の方を『メンソレータム軟膏』と一緒に購入されるというので症状を尋ねたら、頚椎狭窄症による腰痛だという。
 そこで、内服薬として『疎経活血湯』を紹介してみたら、飲み薬は嫌だとの返事。
 ん?
 これは嫌な予感……。
 予感は当たり、高血圧や糖尿病の薬を病院から処方されているため、これ以上は飲み薬を増やしたくないと。
 あうっ(;´Д`)
 塗り薬と内服薬も組み合わせによる副作用とかあるから、そういうことは必ず言ってもらわなきゃ困りますよぅ。
 しかも、お薬手帳が無くて処方されている薬が不明だし。
 いつもはお薬手帳を持ち歩くのが今日は忘れたというお話だけど、ウッカリのために危険度を上げるのは好ましくなく、今日のところはフェルビナク製剤はやめてはとお話した。
 しかし、やはり貼り薬は欲しいと言われ、代わりに『ロイヒつぼ膏』を購入された。
 お客様には、市販薬の記録もお薬手帳で一元管理して、担当医には使った市販薬について報告するようお願いした。

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