「自己責任」は「自分勝手」と紙一重

 ご夫婦で来店したお客様から、授乳中に使える肩こりのバップ剤をと求められ、『サロンパス』を勧めてお買い上げ頂いた。
 フェルビナク製剤なんかも完全に駄目な訳ではないけれど、やはり危険は避けておくほうが良いだろう。
 そして、自宅に『葛根湯』があるようであれば、授乳中の肩こりはもちろん風邪の初期にも使えますよと案内すると、家にあるとの事だった。
 それから、子育てにストレスはつきもの。
 ストレスによる肩こりとも考えられるので、『葛根湯』や入浴など温めて症状が緩和しない時には、『コリッシュ』(治肩背拘急方)を試してみてくださいと紹介した。

 鎮痛剤の相談を受けたお客様の買い物カゴを覗くと、『葛根湯』が入っていたので症状を尋ねると、頭の片側がズキンズキンと痛むという。
 上半身を温める『葛根湯』が適応する頭痛は、眼の奥が重いような頭痛や、肩こりと連動した下に引っ張られるような頭痛で、ズキンズキンと拍動するような頭痛ではかえって悪くなる。
 そう説明すると、すでに自宅にあった『葛根湯』を服用し、治らないため鎮痛薬と追加の『葛根湯』を買いに来たそう。
 鎮痛剤を使うのはともかく、どうして効かなかった『葛根湯』を買い足そうと思うのか、その心理が分らない(´・д・`)ゞ
 というか、鎮痛剤の相談をされた段階で、経過を話してくださいな。
 そして詳しくお話を訊くと、鼻水があり、その鼻水は透明でサラサラだという。
 なるほど、その鼻水は内臓の冷えが原因だろうから、それだけなら『葛根湯』で温めるというのは一つの手である。
 しかし、効かなかったということと頭痛の種類からすると、冷えで胃の機能が低下しているのが頭痛の原因のように思える。
 だとすれば、『柴胡桂枝湯』の出番である。
 そのうえで鎮痛剤もとなると、やはり胃への負担を考慮して『バファリンA』か『イブA』だろうと案内したら、『イブA』は家にあるとのこと。
 そして、もともと胃は悪くなりがちだというので、『コリッシュ』(治肩背拘急方)も紹介してみた。
 本日は、『葛根湯』を取りやめて『柴胡桂枝湯』をお買い上げ頂いた。

 やや高齢の二人組のお客様が来店し、一人から『ロキソニン』を注文された。
 しかし取り扱っていないため説明しつつ用途を尋ねると、明日のマラソン大会に参加するのに、足が痛むから鎮痛剤が欲しいという。
 練習での筋肉疲労が思い当たるというから、鎮痛効果だけでなく炎症を抑える『新セデス錠』を案内すると、「治したい訳じゃないのよ」と言われてしまった。
 それは分かるけど、痛みというのは体の異常を知らせている訳で、鎮痛剤でそれを感じなくさせるということは、患部に無理をさせても気づかなくなるということで危ない。
 世の中には、生まれながらに無痛症の人もいて、骨が折れたり出血するほどの怪我を負っても気づかないため、命の危機に毎日されされていたりする。
 そこまで極端でないにしても、鎮痛剤で痛みに対して鈍感にしてしまうのだから、せめて炎症くらいは抑えておいたほうが良い。
 しかし、「痛みさえ感じなければいいの」と本人は言い、一緒に来ている友人らしい人も「たいしたことないから」と言う。
 その「たいしたことない」の根拠を訊きたい(-_-;)
 しかもその人、「炎症してる訳じゃないの。痛いだけだから」とも言い出す。
 炎症じゃなくて足が痛んでるとしたら、もっと大変な病気じゃないのかと。
 そして本人からは、「明日だけしのければいいから」と強く要望され、『ロキソニン』を望まれるのなら『イブプロフェン』も化学構造式が似ていますから、代用になりますよと説明すると購入された。
 途中で、専任のコーチや相談できる医師はいないのか尋ねてみたけど、まぁ無駄だった。
 たとえ病態を悪化させるとしても、「患者さんの希望を第一に」というのが医療に携わる人間が優先しなければならない事だと頭では理解できていても、やはり心情的には納得いかない。
 なによりも、個人的には「自分の体を大切にしない人間にはスポーツをする資格は無い」と思うのだけどどうか。
 本人は「自己責任」のつもりなのかもしれないが、もし大会中に怪我をすれば運営者はもちろん、もし当日に中止になったり今大会が最後なんてことになったら他の参加者にも迷惑が掛かるわけで、それを考えないのは「自分勝手」だとしか思えない。
 せっかく申し込んだ大会だから参加したいとうのであれば、専任のコーチは難しくとも頼る医師くらいは、自分で見つけておくべきだろう。
 そして、当日に向けて体調管理して、練習のペース配分をしたうえで、異常があれば参加を諦める。
 その覚悟が無いレジャー気分なら、それこそ大会になど参加せず自分で走れば良い。
 それなら正に、「自己責任」である。
 結局のところ、参加者の一人としてマラソン大会を担っている一員という自覚が無くて、お客様気分なんだろうな。
 マラソン大会が、どうなろうが知ったこっちゃないという意識。
 まぁ、実のところ私怨みたいなもので、マラソンは公道を使うため、「一番迷惑なスポーツ」と思っていて良い印象がない。
 だから、余計にいい加減な参加が許せなかったりヽ( ´ー`)ノ
 ちなみに、筋肉疲労が内蔵にも負担を掛けて腎臓などの循環器系を悪くしてしまう事もあるから、私としてはかなり本気で止めたかった。

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