「治す気あるんですか?」と思わなくはない

 成人の息子さんが喉の痛みと鼻炎を訴えていて、「いつも使っている」というトローチを探してお客様が来店したんだけど、名前も成分も分からないという。
 それじゃ、選別のしようがありませんがな(^_^;)
 しかも、よくよく訊くと特定のメーカーのオリジナル品らしい。
 となると、そもそも医薬品か医薬部外品か菓子類かの区別も怪しい。
 お客様には、医薬品であれば消毒系か抗炎症系のどちらかだと思われますと説明したけど。
 そして主訴の一つである喉の痛みについて詳しくヒアリングすると、朝起きた時に喉が渇いた感じがして、鼻汁には色が付いているそう。
 病院はすでに受診しているらしく、抗生剤とカロナールなどを合わせて5種類ほどの薬が処方されているというのに、お薬手帳も持参していないのだから、正直「治す気あるんですか?」と思わなくはない。
 勉強も努力も大嫌いな自分だから、なおさらそう思ってしまう。
 仕方が無いので、もう少し症状について詳しく訊くと、発熱自体は無いというから、むしろその抗生剤とカロナールで体内が乾燥してしまい、それが喉の痛みになっているのだろうと判断して、『麦門冬湯』を案内した。
 また、息子さんは学校の関係で帰りが遅く疲れている様子だという話があったため、主訴については処方されている薬に任せるとして、『柴胡桂枝湯』で体を下支えするよう提案した。
 下痢にもなったというのは、おそらく抗生剤で有益な腸内細菌も倒してしまったからだろう。
 『柴胡桂枝湯』は、そういう低下した胃腸機能を支援するのにも使える。
 ただ、やはりそういう状態の時には、食欲はあっても量を控えさせることが必須。
 脳の方は、体調を整えるのにエネルギーが欲しいから食欲として「食べろ」という信号を送るかもしれないけど、内臓の方は指示に従える状態ではない。
 そうお話すると、タウリン系のドリンク剤を飲んでいると分かった。
 親心として、そうしたい気持ちは分かるけど、ドリンク剤を処理しなければならず体に負担を掛けてしまうから、あまり勧められない。
 もしどうしても栄養剤をというのであれば、栄養を蓄積できる生薬系の『ユンケル』などの方をと勧めた。
 すると今度は、『ユンケル』のピリ辛の味が苦手だというので、マイルドな味にしてある『ユンケルL』を紹介したうえで、カフェインを含まず上半身の乾燥を防ぎながら疲労を抑える『新ヒストミンゴールド』を案内した。
 だけど、主訴に加えて頭痛もあるという話から、改めて『柴胡桂枝湯』を勧めて、お買い上げ頂いた。
 また、帰りが夜遅くそのまま寝て朝にシャワーをあびているというので、寝る時間を削ってでも入浴して血流を良くすることにより睡眠の質を上げるようお話した。
 そして、『柴胡桂枝湯』については、本人が飲むのを嫌がれば、お客様自身が使うように勧めた。
 お話しているうちに、どうも息子さんのことであれこれと考えて気疲れしていねみたいだったから。
 感情を支配する胃と肝臓を助ける『柴胡桂枝湯』は、心配しがちな親御さんにも役立つはずなので。

 水虫薬の『ピロエースZ』を求めてお客様がいらしたけど、材料に問題があってメーカーが回収していることを説明した。
 ネットでの良い評判を見て使おうと思ったらしいのだけれど、病院に行ったことは無く、菌の有無は調べていないそう。
 患部が水疱になっていて痒みが強く、ネットで見た状態と同じだから水虫と判断したらしい。
 どんなページを見たのか分かりませんが、水疱になっていて痒みが強うと言うのであれば、『掌蹠膿疱症』の可能性もある。
 『掌蹠膿疱症』は無菌性で、それこそ水虫との見分けは難しく、だけど症状としては同じである。
 だから、お客様には一度は病院を受診するよう勧めた。
 それと、お客様は患部を一生懸命に洗っていて、かなり擦っているのに治らないと言っていた。
 これも間違いで、患部を一生懸命に擦るということは、体からしたら防御しなければならず、傷んだ皮膚を再生するために水疱を作り出す。
 ますます、水虫かどうか疑わしい。
 とりあえず水虫薬を買いたいと強く望まれたため、比較的皮膚に優しい『ダマリンL』をお買い上げいただいたものの、患部は優しく洗うよう伝えた。

 お客様から『ベンザブロックLプラス』の効き目を質問されたけど、主訴を確認すると咳と喉の痛みに痰の絡みがあるものの、発熱や鼻炎は無いというので適応しないかもしれないとお話して、咳止めを使うよう提案した。
 すると咳については、息を深く吸うと出るというので、体内の乾燥の可能性を説明したところ、喉がカラカラと鳴るという。
 ならばやはり、上半身の水分不足であるため、『麦門冬湯』を勧めてお買い上げ頂いた。
 一応、比較として『ダスモック』(清肺湯)も候補に挙げたけど、煙草は吸わないそうだから外した。

 以前に咳の相談を受けて『麦門冬湯』を勧めて良好になったお客様が、今回は自ら『銀翹散』を選択された。
 主訴を確認すると、喉の痛みと頭痛とのこと。
 鼻水があるというから通常であれば、上半身を冷やす『銀翹散』は避けるところなれど、鼻水は気になるほどではないというから、そのままお買い上げ頂いた。
 ただ、いつもは風邪の初期に『葛根湯』を使っているというので、上半身を温める『葛根湯』とは使い分けが必要なことを説明した。
 すると今回は、頭痛と合わせて右肩に肩こりを感じるというので、喉の痛みが落ち着いたら、『葛根湯』に乗り換えてみるよう勧めた。

以下の記事も読まれています。


 
登録販売者から一言 壱の巻 登録販売者から一言 肆の巻「おくすり手帳と個人情報の使い方」 市販薬購入前チェックシート