心配の基準が違う

 お客様からの注文が「消毒スプレーを」とのことだったため『消毒用エタノールスプレー』を案内したけど、「違う」というので用途を尋ねると、病院から帰ってきた時に靴下に使いたいそう。
 病院のスリッパを履くから、その除菌をしたいということだろうか?
 それなら、『消毒用エタノールスプレー』でも良いのでは。
 さらに詳しく訊いてみたら、靴ずれで皮が剥けた所にも使いたいという。
 やっぱり、『消毒用エタノールスプレー』で良いような。
 いや、靴ずれなら『オロナイン軟膏H』で消毒しつつ患部が擦れないようにするべきか。
 しかし、それは望まれていないようで、さらにお話を訊いてみたら、どうやら『ファブリーズ』や『リセッシュ』のことらしく、売場を案内すると、その手の消臭除菌スプレーを買っていかれた。
 どうも、治療を先に考えてしまう悪い癖が。
 でも、お客様の目的を達してから、やはり靴ずれの治療については重ねて勧めるべきだったか。

 『ルル滋養内服液』が風邪に良いかとお客様から質問され、疲労に使えますとを答えたが、症状を尋ねると自身ではなく中学生の娘さんが、熱が出そうと訴えているらしい。
 ただ、実際にはまだ発熱しておらず、だけど早々に『バファリンルナJ』を飲ませそう。
 ありゃΣ(゚Д゚ υ)
 気持ちは分かるけど、発熱する前に解熱剤を使うと疲労してしまう事がある。
 しかも、詳しく訊いたらすでに本人は、体がだるいとも言ってるらしい。
 疲労が出ている時というのは、かえって熱を出すことができず、それはつまり風邪と戦う戦力が乏しいという事だ。
 そこで解熱剤を使うというのは、喧嘩をする気力が無い人を、喧嘩をするなと押さえつけるようなもんで、ますます風邪の勢力を強めてしまう。
 明日からテスト期間ということで、お客様としては早く治してやろうと思ったんだろうけど、完全に裏目のパターン。
 ここは本人の体の後押しをするために、『葛根湯』が家にあれば使ってみてくださいと勧めると、無いので購入されるという。
 それなら体を温めるのは『葛根湯』がやってくれるから、『ルル滋養内服液』は不要になるので、代わりに『柴胡桂枝湯』を併用して体力を下支えするよう提案した。
 本来なら、すでにだるいという話からすれば『柴胡桂枝湯』をメインに据えるところなんだけど、テストを休まずに受けるとなると、『葛根湯』で上半身に活力を与えなければなるまい。
 ちと乱暴な使い方ではあるが、まぁ若いから使える方法ということで。
 一緒に購入して頂くことになり、『柴胡桂枝湯』を通常の回数服用させて、『葛根湯』は朝起きてから服用させるようにお話した。

 お客様にデュアナチュラの『甘草グラボノイド』が置いてあるか尋ねられ、探してみたけど仕入れてなかった。
 ダイエットに使う物らしいんだけど、甘草をそんなふうに使って大丈夫なんかね。
 抗炎症剤として使う場合は熱を発散するから、その過程でエネルギーを消費するということか。
 でも、多く摂り過ぎると低カリウム血症を招くし、なんだか心配。
 本格的にダイエットを検討するのであれば、『防風通聖散』などを使ってみるのはいかがでしょうと提案すると、医薬品は使うのが心配らしい。
 一応データは取っているとはいえ、臨床試験を経ていないサプリメントのほうが私は心配なんだけど、心配の基準も違うもんなんだなぁ。
 お客様からは、他にどんなサプリメントを摂れば良いかと相談されたので、普段の食事で食べる機会の少ない食材をリストアップして、不足していると思われる物をチョイスするよう勧めた。
 本日のところは、お買い上げは無し。
 こういう時、お客様をある方向に導いて良いものなのか、それともお客様の要望にだけ応えておくのが良いのか迷う。

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