安全とは言い切れないのは漢方薬でも同じ

 お客様から特定のメーカーの漢方薬シリーズの『甘草湯』を希望されたものの、すでにうちのお店の定番棚から外れていて取り扱っていないため、同じメーカーの別シリーズの『甘草湯』を案内して購入して頂いた。
 以前にそのメーカーの営業さんに聞いた話じゃ、先のシリーズから風邪や咳関係の漢方薬を外して、慢性疾患なんかの漢方薬を充実していくらしい。
 それはともかく、お会計をしながらお客様に『甘草湯』の用途を尋ねると、扁桃炎になりやすく常備薬にしているという。
 うん?
 扁桃炎に?
 確かに抗炎症作用があって、『芍薬甘草湯』『大黄甘草湯』のようにメインとして使われることがあるけれど、一方で多くの漢方処方に甘草湯が入っているのは、保水作用と抗アレルギー作用により効き目を補助し、苦味や辛味を伴う他の生薬との味を整えるためとされている。
 そして甘草の抗炎症作用は、熱を発散するもので冷やす力は無いから、喉の痛みに使うとすれば極めて初期の段階。
 お客様のように常備しておき、喉に違和感を感じたら使うというのは、確かに理に適っている。
 逆に言えば、喉の痛みを感じてから店頭に買いに来た段階では、もう『甘草湯』を使うタイミンクとしては遅いと考えられる。
 そこでお、扁桃炎になりやすいのであれば、進行した場合には患部を冷やす『桔梗湯』と、冷やしつつ熱の発散もする『駆風解毒湯』も覚えておいてもにいたいと思い、お客様に両方を紹介した。
 すると、他の薬との飲み合わせを心配されたが、その点で言うのなら単味剤の『甘草湯』の方が心配だし、甘草は炎症に関わる漢方薬の多くに入っていて、『四物湯』(ジオウ・トウキ・シャクヤク・センキュウ)という漢方薬を基本に生薬を足したり引いたりすることで適応と副作用を勘案するため、一概には安全とは言い切れないのは、どんな漢方薬でも同じことを説明した。
 とはいえ、飲み合わせを気にするのは良いことなので、お薬手帳を持ち歩くよう勧めた。
 あと、喉が腫れた時にも発熱していなければ、お風呂に入って体を温めるようお話した。
 扁桃炎というのは、熱を出すことでウイルス菌を倒す体の防衛機能が正常に働いている証拠。
 しかし、発熱するというのはエネルギーを多量に消費するため、この発熱により体力の低下を招き、喉で敵を撃退できないと風邪として進行してしまう。
 だから、風邪をひいたら体を温かくするというのは、発熱を助けてやりエネルギーの消費を抑えるためなんである。
 そうすれば、体の方も自分だけで無理やり発熱するのを控えて、早い段階で炎症を終えることができる。

 お客様から腰痛ベルトを希望され売り場を案内したが、症状を尋ねると痛むのは朝だけで、動いてからは大丈夫だという。
 それ、寝返りが少なくて同じ姿勢でいるせいや、自重による血行不良じゃないですかねぇ。
 いや、もしかすると寝返りが少ない原因が、特定の姿勢を取ると体に違和感があって、無意識に姿勢を保とうしているのかも。
 症状からすると『疎経活血湯』が適応するように思えますが、現状を把握するために病院を受信してみるよう勧めた。
 そこで、腰痛ベルトが必要かどうかを判断してもらってから購入を決められても良いかと。

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