喧嘩両成敗とはならない風邪薬

 『冷えピタ』を求めて来店したお客様に売り場を案内しながら用途を尋ねると、旦那さんが発熱して37.5度あるとのこと。
 何か薬などの対処をしているのかも訊くと、特に何もしていないそう。
 まあ、風邪というのは読んで字の如く、「風(外から)の邪(よこしま)」が体内に入って悪さをすることで、体の方は『風邪(ふうじゃ)』に対抗するために、発熱で戦い、咳やクシャミで外に追い出そうとしているのだから、薬を飲んで風邪の諸症状を抑えるということは、戦おうしている本体を羽交い締めにして「まぁまぁ、喧嘩は良くないよ(((ノ´ー`)ノ」と、止めるようなもんである。
 そうやって風邪のウイルスに対しても仲裁してくれるなら良いんだけど、ウイルスに対抗する風邪薬というのは存在しないので(病院で処方される抗生物質はウイルスには効かない)、喧嘩を制止されるのは本体の方だけ。
 すると本体の方はウイルスに蹂躙され、ウイルスが勝手に出ていくか活動を停止するまで傍観するしか無い。
 風邪薬を飲んだ後に残る疲労感は、実はコレである。
 風邪薬を飲まずに、自然治癒した後の自前のエネルギーを消費したことによる「やりきった感」の疲労感とは決定的に違う。
 ……なんだか、戦わなければ相手も襲ってこないと思ってる某9条の人たちを連想しないでもない。
 ウイルスと話し合いできるなら、やってみろヽ( ´ー`)ノ
 ああ、話が逸れた。
 とにかく、体が戦いに集中できるように休むのが大事。
 そういう意味では、出すぎた真似だけど買い物袋に大量に食品が入っているのを目にしたため、食欲があっても量を控えさせるようにお話した。
 本人は「お腹が空いた」と言ってるようだけど、それは脳がエネルギーを欲しがっているからで、戦っているところに横から補給物資を渡しても、受け取る方は戦いに廻す人手を補給物資の仕分けに取られてしまい、戦いに集中できなくなってしまう。
 普段よほど不摂生をしているのでなければ、自前のエネルギーで賄ってもらったほうが決着は早く着きます。
 どうしても空腹が我慢できないようであれば、甘い物で満腹感を得るようにすれば量を必要としないことを教えた。
 昔から、風邪で寝込んだ時には、お粥と果物というのは、だから、良く考えられている対策なのだ。
 それはつまり、「食欲が落ちてから」食事の内容を切り替えるのではなく、風邪の初期の段階で体への負担を減らすことが短期決戦に持ち込むために必要ということ。

 『葛根湯』を買われるお客様から、子供が風邪をひいていて、『パブロン鼻炎カプセルS』と併用させて良いか質問された。
 答えはもちろん、駄目である。
 『葛根湯』に含まれる麻黄と、『パブロン鼻炎カプセルS』の主成分である塩酸プソイドエフェドリンは作用機序が同じなので、血圧を異常上昇させる恐れがある。
 って、それ以前に『パブロン鼻炎カプセルS』は15歳未満には使えません。
 えっ、まさか家にあって飲ませたんじゃ!?Σ( ̄□ ̄;)
 つい焦ってしまったが、これは私の早トチリで、『葛根湯』と一緒に買おうか迷っていたとのこと。
 いや、それでも年齢制限の欄を見落としてるわけですが、お客様。
 子供の症状はというと、冷えたのが原因か鼻水が出ているというので、『葛根湯』で上半身を温めるのが良いでしょうとお話した。
 また、鼻水が放っておくと垂れてくるくらいであれば、もっと温める力の強い『小青龍湯』をと案内した。
 今回は、『葛根湯』をお買い上げ。

以下の記事も読まれています。


 
登録販売者から一言 壱の巻 登録販売者から一言 肆の巻「おくすり手帳と個人情報の使い方」 市販薬購入前チェックシート