「勧善懲悪」の誤解

 以前に、『肝油ドロップ』の質問をされ、『DHA・EPA』のサプリメントを買っていかれたお客様が再訪。
 『DHA・EPA』を飲んでみて、調子が良いという。
 劇的に何か効果があるとは思えないけど、そう感じてるなら良しとしておくべきか。
 そうそう、漢方の専門医から不眠に『当帰湯』が処方されたというのは、お客様の勘違いだったらしく、『酸棗仁湯』とのこと。
 ですよね~(´∀`)
 それなら、腑に落ちる。
 高齢だったり、痩せ型で虚弱な人の不眠に適応する物だから。
 それと、もう片方の病院からは『イフェソプロジル』と『ニセルゴリン』が処方されていることが、新たに分かった。
 ありゃ、どちらも脳の血流改善に使う薬じゃないですか。
 どんな薬でもそうだけど、なおさら飲み合わせや食事に気をつけなければならない薬。
 それなのに、双方の医師に服用している薬を知らせていなのは駄目ですよ。
 改めてお客様には、お薬手帳に服用している薬の記録を付けて一元管理するようお話した。
 すると、お客様から不穏な言葉が……。
 『医者に殺されない47の心得 医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法』などを著している、近藤 誠医師を大絶賛。
 いや、それで複数の病院に掛かって、それぞれから薬を処方してもらっているというのは矛盾してるんだけど(苦笑)
 

Screenshot of pseudoctor-science-and-hobby.blogspot.jp

 『医学不要論』を著した内海 聡医師と並ぶ、本職の医師でありながら医学的にも科学的にも間違いかつ不穏当な言説を広めているトンデモ医師の一人をベタ褒めしていて困った。
 まぁ、言論の自由があるから何を公言しても良いとは思う。
 私自身の発言の自由を堅持するためには、他人の発言の自由もまた擁護しなければならないので。
 ただ、近藤医師にしろ内海医師にしろ、本当に患者さんの為を思うのなら、本なんか書いてないで研究を科学誌に投稿したり、学会に発表したりすれば良いのに、何故かそういう事はしない。
 STAP細胞の研究で小保方晴子氏が注目された時に、マスコミの報道で勘違いした人もいるようだけど、そもそも科学誌に投稿したり学会で発表するというのは、「発見したから」とか「確定したから」ということで行われるものではない。
 同じような研究をしている人たちに、「検証してくれ」というために行なうのである。
 だから、STAP細胞が実在したかどうかは本来は重要ではない。
 あの騒動はあくまで、「検証してくれ」と言っておいて、そのデータに不備があったことが問題(捏造だったのか、うかりミスかは別として)だった。
 今後もマスコミを通じて、いろんな発見や開発のニュースが世に出るだろうけど、いちいちそれに反応しても仕方ないんである。(研究にお金を出すという人がいれば別ですが)
 大事なのは、各方面からの検証と検証と検証、継続的な検証によって確実性を高めていくこと。
 でも、近藤医師も内海医師も、その検証のための研究成果を何故か専門家には委ねない。
 それでいて、一般の人に向けて持論を展開するだけという、実に不誠実極まりないのである。
 と批判の言葉が出かかったけれど、今日のところはお客様には言葉を返さなかった。
 大事なのは、近藤医師を批判することではないので。(これは内海医師にも同じこと)
 大事なのは、患者さんをそういう危ない情報から自分を守れるように、また別な情報を提供すること。
 そのためには、話を聞いてもらえる関係性を構築し、信頼を得ることを地道にしていくしか無い。
 それはまた、私自身が変な妄想に捕らわれて流布してしまう危険性を、常に内包しているからに他ならない。
 その昔、作家の川内康範先生が『月光仮面』などのヒーロー物を創作する時に、こだわったのは「正義の味方」だという話がある。
 どういう事かというと、『月光仮面』が「月よりの使者」であって、月の化身ではないように、ヒーローは「正義」そのものではなく、あくまで「正義の味方」であるということ。
 それは同時に、やはり川内先生のヒーローに共通していた、「勧善懲悪」の精神でもある。
 よく「勧善懲悪」は子供っぽい正義感のように勘違いされ、リアル志向のヒーロー物の作品を語る枕詞に「単純な勧善懲悪モノじゃなくて……」と付けられる事があるけど、それは誤用である。
 漢字を見れば分かるはずだが、「善を勧めて悪を懲らしめる」というのが「勧善懲悪」なのだ。
 善行を強制するのでも絶対視するのでもなく、あくまで「勧める」という控えめな態度がそこにある。
 そして悪に対しても、倒すのではなく懲らしめることに留めている。
 そう、「勧善懲悪」は、言うは易し行うは難しなのだ。
 常に自分は間違っている、その可能性を考えて患者さんと向き合わなければ。
 ………フッ、語ってしまったぜ( ´Д`)y─┛~←誰だオマエ

 風邪の相談で来店したお客様から症状を訊き出すと、主訴は鼻水と喉の痛みが昨日からあるという。
 悪寒は無いそうなので、風邪だとしても入り口で止まっていると考えられるため『葛根湯』を候補にしつつ、現代薬を希望されることも考え『ベンザブロックSプラス』を一緒に案内した。
 『ベンザブロックSプラス』の購入を決められ、「咳が出たら病院かしら?」と尋ねられたのには、昼に暑く夜に涼しいことに体がついていけないだけで風邪とは限らないことを説明した。
 もちろん病院に行くのは悪くないんだけれど、かえってウイルスに感染する可能性もあるから、あまり安易に受診するのも考えもの。
 養生として、鼻水が出るのは内臓が冷えていると考えられるため、入浴などで積極的に内蔵を温めるよう勧めた。

 さっきのお客様と同じように、鼻水と喉の痛みの相談で来店があり、同じように『葛根湯』と『ベンザブロックSプラス』を案内すると、眠くなりにくい物をと要望されたので『葛根湯』を推したら、漢方薬は好まなかったらしく『ベンザブロックS』を購入された。
 運転職で、朝までの待機業務らしいんだけど大丈夫かしら(^_^;)
 風邪薬で眠くなって事故を起こされちゃ困る……って、良く考えたら体調不良で勤務するのが問題な気もしますが。
 一応は、あくまで待機で運転するかは未確定ということで売ったけど、くれぐれもご注意を。
 仕事を考えたら、漢方薬の方を選択して欲しかったなぁ。
 お風呂に入って温まってもらいたかったけど、こちらも待機業務では難しいらしく、代わりに食事は消化の良い物にして量を控えるようにとお話した。

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