人間の体自体が実験室だとして自分でコントロールできるのか?

 夫婦で来店され最初は旦那さんから、うがい薬の場所を尋ねられた。
 場所を案内しつつ、うがい薬は健康な時かつ風邪が流行っている時期などに集中的に予防目的に使う物で、現に喉が痛む時には避けるようにお話したところ、奥さんの咳に使うつもりだと言われた。
 咳に使ったら、なおさら駄目なのに、どうしてそう思われてしまうのか。
 殺菌や消毒する薬にセンサーがついてる訳じゃないから、有害な菌も有益な菌も無差別に倒してしまううえ、当然のことながら自身の細胞も傷めてしまう。
 この辺り、SFアニメとか観てると分かりやすいのにと思ったり。
 『トップをねらえ!』というロボットアニメに、「ホーミングレーザー」という武器が出てくるんだよね。
 ホーミングというのは「自動追尾」という事で、ミサイルならミサイル本体にセンサーを取り付けられるから「ホーミングミサイル」という物は実在する。
 ところが、「ホーミングレーザー」と言ったら、レーザー光線に自動追尾機能があるという事になり、つまりこの武器は一種の「科学的にありえない」というギャグなんである。
 小学校高学年の次郎も、一緒に観てて「ホーミングレーザー? どんな仕掛けだよ(*´∀`*)」と理解していた。
 この手のギャグというか、意味不明な物としては、「抗酸化作用」を謳ってるサプリメントもある。
 老化の原因が酸化作用だから、それに対抗することで老化を防ぐんだそうな。
 老化というとマイナスイメージだろうけど、つまりは肉体的には成長であり、成長の果てに減衰があるのは当然のこと。
 人間が酸素を吸うのは、生きるために酸化という化学反応が必要だからなのに、酸化を止めたら死にますよ?
 まぁ、確かにそれが過剰に起きると困るという理屈は分かる。
 じゃあ、それを抗酸化作用があるというサプリメントで調整できるのかというと、これが疑問なところ。
 仮に酸化を抑えるとして、それで酸化作用が必要以上に減ってしまったらどうするのか。
 逆に酸化を促すサプリメントはあるのかといえば、聞いたことが無い。
 いや、ある。
 酵素である。
 酵素というのは、それ自体では役に立たず、ある物とある物の化学反応を促す触媒として作用する。
 だから、「酸化作用が弱くなってしまった体を改善する」というサプリメントがあっても良さそうなものなのに、何故か無い。
 まぁ、酵素は酸素と違って種類が多種多様で、それぞれの効果も違うときてるから、なおさら調整は難しいですが。
 化学者が実験室で専門の機材を使って行うような化学反応の調整を、素人が自分の体で実践してコントロールできるのか?
 ……ああ、話が逸れ過ぎた(^_^;)
 咳の経過を尋ねてみれば、風邪の後に咳が残ったそうなので『麦門冬湯』を案内してみたら、使ってみたけど効かなかったと言われたため、現代薬の方が希望かなと思い、痰が出ないことを確認して『ブロン錠』を紹介した。
 漢方薬で次点を候補にするなら、患部の乾燥を取り除く『麦門冬湯』に代わって、患部を冷やしつつ熱を発散する『五虎湯』なんだけどね。
 とか思っていたら、『麦門冬湯』は2回服用しただけだと分かった。
 ありゃん(;´∀`)
 『麦門冬湯』の効能は咳止めだけど、生薬構成は胃薬に近く、体内の乾燥には胃炎が関わっていたりするため、胃を治し上半身に保水することで咳を止めるという、やや回りくどいプロセスを経る。
 打ち身で腫れた時に患部に塗って冷やす石膏を飲むことで、直接的に患部の熱を取る『五虎湯』の咳止めとは、そもそもの考え方からして違うのだ。
 だから、もともと体力が充実している人とか体格の良い人、あるいは風邪の後に長引いている咳の時には体内の乾燥は相当に深刻なため、1回や2回服用しただけでは実感できるほどには効果が現れなかったりする。
 ふむぅ、困った。
 同じ『麦門冬湯』でも、医療用のなら効能書きに「適宜増減」という一文があるんだけど、市販薬のパッケージでは用法・用量が指定されている。
 これはもちろん、個人の判断で危険な運用をしないようにという事ではあるのだけれど。
 えー、これは独り言です。
 独り言ですよー。
 私個人や、家族ならば3日分を1日で飲み切る勢いで使います。
 ただしこれは、漢方薬だから安全という事ではありません。
 あくまで、『麦門冬湯』の生薬構成が、比較的穏やかに現れる内容だからです。
 ゲフンゲフン((( +д+))o=3=3
 すいませんねぇ、お客様がいるのに気づかず、独り言を呟いてしまって。
 ……という小芝居を終えて改めて『麦門冬湯』が家に残っているか尋ねてみると、まだ有るそうなので、まずはそちらを継続してみるようお話した。
 そして、さっきも少し触れたように、風邪によって胃炎を起こしているかもしれないため、消化の良い食事をして、お風呂には長めに入り下半身を温めるよう勧めた。
 帰りぎわに、「今まで薬のことを、お店で尋ねるなんて思いもしなかった」と言われた。
 自動販売機じゃないので、尋ねて下さいな(´∀`*)ノシ
 ってか、最近は自動販売機も気温とか購入者の顔とかで判別して、お勧めのドリンクとかを案内してますね。
 そのうち本当に、症状のチャートを画面のホタンで答えて薬の販売なんてのもありそう。

 やや高齢のお客様が『爽和』をレジに持ってきたさいに、使用経験があるかを尋ねてみると初めてとの事だったため、症状を確認した。
 すると、脂っ濃い物を食べると胃にもたれるというお話で、『大正漢方胃腸薬』の方が合うように思われた。
 でも、ストレスも思い当たるようだったから、そのままお買い上げ頂いた。
 そして、『爽和』は予感がしたら先に服用しておいた方が効果的なことを伝えた。
 偶然なのか、今回のお客様にも「薬のことを確認して買うのは、思いつかなかった」と言われた。
 ネット上で、「薬は毒」とか「薬を飲むな」という極端な書き込みを見かけるけど、この警戒感の無さは、それはそれで困る……(;´・ω・)

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