≪第9回≫苓桂朮甘湯

漢方薬症例クイズ≪第9回≫

 実際の症例を元に、患者さんの症例データーを提示します。
 “書いてある内容”から推理して、適応すると考えられる漢方薬の名前を当てて下さい。基本的に当店で扱っている漢方薬としますが、解答としては必ずしも限定しません。「なるほど、その方法もあるか」と思われる解答であれば、正解とする事があります。(生薬のみや民間療法などは除外します。)
 正解者の中から、抽選で3名様にフレンドリーBEARマットを進呈いたします。絶対の正解というものはありませんのであくまで、“あそび”として楽しんでいただければと思います。皆様の参加をお待ちしています。

フレンドリーBEARマット

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 玄関、キッチン、バスルームトなどで使用する、フレンドリーBEARマットを3名様にプレゼントいたします。

募集期間:~1月24日(月)
正解発表予定:1月31日(月)

問題
 女性。78歳。
「疲れ目の目薬を下さい」と来店。
 その他の症状を尋ねたところ、尿量が少し少なくなった気がするという事が分かった。
 目の症状は腎と関係があり、水の代謝を良くすると改善する事がある。
 そこで、効能書きには目に関する症状は無いが、やはり水分代謝の異状が関係する“眩暈(めまい)”に用いる漢方薬を渡した。
 3日後、疲れ目は改善してきたものの、涙が多く出るようになったと相談にいらした。
 尿量については特に変わった気がしないという。
 水分代謝が良くなる事で、頭部の余分な水が涙として出たのだろうと推測。
 もうしばらく服用を続けてもらう事にしたところ、10日後に再び来店し、涙はあの後すぐに治まって、目の疲れと合わせて尿の出も良くなったという。
 効能書きとしては、“眩暈”などに用いる漢方薬の中で、今回使ったものはなんだったろうか? 

正解
 正解は苓桂朮甘湯です。

 当選したのは、以下の3名の方です。おめでとうございます。
  ※tkb様…選んだ理由:八味地黄丸かとおもいましたが。
  
梅木 瑞樹様…選んだ理由:ナシ

 正解者が2名でしたので次選の漢方薬として適応する物を挙げた方を正解者とするところですが、杞菊地黄丸と解答しつつも、選んだ理由において苓桂朮甘湯と比較検討した事を明記されていた方を当選とさせていただきました。
 ※かば様…選んだ理由:腎機能低下に伴う症状と思われます。この薬にはかすみ目などにも効果があり選びました。ノイローゼなどの症状があれば苓桂じゅつ甘湯も良いと思います。

解説
 漢方では目に関する症状は、基本的に“水分の代謝異常”と考えます。
 体内に取り込んだ水分はいったん胃で受け取り、次に腸で吸収されてから腎臓によって全身に分配されるのですが、胃の働きが悪くなると腸への水分の受け渡しが正常に行えなくなり、ポンプの役割を負う腎臓も安定的に働けず、やがて疲労してしまうという悪循環に陥ってしまいます。
 それらに対して、苓桂朮甘湯に含まれる桂皮(けいひ)は胃の働きを助け、燥性の性質を持つ茯苓(ぶくりょう)と蒼朮(そうじゅつ)が腎機能を高め、水の偏在を調整します。
 この処方は胃アトニー(胃が働かない)に向いており、水分代謝が悪い可能性のある目の疲れを訴えている患者さんが、同時に尿量が少ないという点から、不要な水分を取り除くために苓桂朮甘湯を用いました。
 効能書きには神経質やノイローゼとありますが、必ずしも必須条件ではありません。しかし、正確な量は分からないとはいえ、涙が多く出るというのを気にするという事は、ややその傾向はあったと考えられるでしょう。
 また、苓桂朮甘湯は仮性近視や慢性軸性視神経炎の治療にも用いられる事が多いので、最初に選んでみて様子を見てから、他の漢方薬に替えていくという方法も考えられます。

補足
 問題にも書いてある通り、“眩暈(めまい)”もまた水分代謝と密接な関係があります。
 その点に注目したと思われる解答の中では、五苓散が多かったです。
 生薬を見てみると苓桂朮甘湯と桂皮と茯苓そして蒼朮まで同じで、確かに候補の1つとなりえます。
 また、沢瀉(たくしゃ)と猪苓(ちょれい)は、利尿作用のある生薬の代表で、尿量減少という症状とも合致します。
 しかし五苓散の効能書きに、“口渇”とあるのを考慮しなければなりません。
 口渇の多くは熱証による事が多く、燥性の生薬で構成されている五苓散は、より水分代謝の異状が顕著な状態、すなわち吐き気や下痢気味等の随伴症状がある場合が適応するでしょう。
 今回の患者さんの場合、主訴自体には眩暈は無く、水分代謝の異状は顕著では無いと考えられます。
 同じような理由により、沢瀉湯(たくしゃとう)という解答も少数あったのですが、除外しました。
 他に、患者さんが高齢であることに要点を置いたと思われる解答として、杞菊地黄丸八味地黄丸がほぼ同じ程度ありました。
 どちらも高齢者の目の症状に用いる物ですので、まさに目のつけどころは良いと思います。
 ただし、繰り返しになりますが今回の主訴はあくまで“目の疲れ”であり、また“尿量減少”も尋ねた結果として「気がする」という程度ですので、服用するさいには注意が必要です。
 まず
杞菊地黄丸六味丸の変方で、やはり口渇のある事を目安にするのが良いでしょう。また、高齢者で六味丸が適応するのは物質面の不足が顕著な場合で、それにより体温調節が上手くできずに手足に火照りがあったり、のぼせによって不眠であるなどを確かめておくのが適切です。
 一方、八味地黄丸は機能面の衰退が顕著な場合に適応し、同じく口渇が参考となるものの、逆に手足の冷えを訴えていたり、疲労倦怠感が強い場合に用いるのが効果的です。特に、涼しい方が気持ちよく感じるかどうかを確かめておかないと、のぼせて気分が悪くなるという事もありえます。
 利水の効能があり、かつ肝腎不足の視力障害にも効く車前子(しゃぜんし)を含む物として、
牛車腎気丸という解答もありました。先の杞菊地黄丸八味地黄丸と同じように、高齢者の目の症状に用いる漢方薬として間違いではありませんが、やはり随伴症状を患者さん自身が申し出る、あるいは尋ねてみて主訴に加えるほどに強く言われていない場合には、慎重に用いるのが安全面でも良いかと思います。
 クイズという性格上、
“書いてある内容”から推理してという制約を設けているため、正解を限定的にしていますが、おそらく実際に患者さんと対面したり、自分が同じ症状がある場合には、随伴症状や体質などについても、より深く考えたり情報を得ようとすると思います。
 漢方薬に限らず、通常店頭で薬を選ぶ時には効能書きを眺めて、症状の中に求める記述があれば「これだ」と決めてしまうでしょう。また、それしか情報が無いというのも実情です。
 そして、漢方薬の誤解に「効くのに時間がかかる」というのがありますが、同じくらいに「漢方薬なら安全だから」と言われる事も、患者さんとお話していて少なくありません。
 しかし、効能書きの中に適応しそうな症状が書いてあっても、必ずしも適応するとは限りません。
 同時に、効能書きには主訴は入っていなくても、使える場合があります。
 今回の問題では、効能書きには主訴に関する事は直接的には書かれていないものの、同時に作用が強くない物を選んでもらおうと思いました。
 漢方薬を比較検討する場合の、参考の一助になれば幸いです。

解説:北村俊純

参加者コメントより
 keikoko:クイズを解くためにかなりの時間を漢方の勉強に使えました。詳しくなりたいです。

 今回は残念でしたが、またよろしくお願いします(・v<)

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