高齢者には、「使い慣れた薬」が良いのか、「体に優しい薬」が良いのか

 やや高齢のお客様から『イソジンうがい薬』を求められ、品切れになってることと、現在ではあまり使う必要が無く、毎日のうがいなら水道水でも充分なことをお話した。
 殺菌成分の入った物でうがいをすると体を守る菌まで殺してしまうし、特にイソジンは常用すると甲状腺障害を起こす可能性がある。
 甲状腺から分泌されるホルモンは身体の新陳代謝に関わり、機能が低下しても反対に亢進しすぎても駄。
 低下すると皮膚疾患の治りが悪くなるほか、不要な水分を体内に溜めてむくんだり、精神面では無気力になったりして、亢進しすぎると血圧の上昇や汗をかきやすくなり、持ちも昂りやすくなる。
 生活面に大きな支障が生じることに、なりかねないんである。
 お客様からは、『葛根湯』の売り場も尋ねられたのだけれど、主訴が咳だというので、上半身を温めて体内を乾燥に導くから咳には良くないことを説明したら、テレビで「医師が毎日飲むと良い」と言っていたという。
 いや、『』は常用するような漢方薬ではないから、医師がそんなコトを言うはずは無いと思う。
 いや、テレビに出て名を売りたい医師(憶測)なら、そんな素っ頓狂なコトも言うかも?
 いずれにせよ、高齢者の咳は胃腸が弱くなるのと保水機能が低下する乾燥性が多いから、上半身を潤す『麦門冬湯』が第一候補となる。
 しかし今回は、咳き込むというより喉のつかえ感があるというため、この新型コロナウイルス禍におけるストレスを考え、『半夏厚朴湯』を案内した。
 ストレスを受けると身が縮こまるように、呼吸をする気道や血液を運ぶ血管が収縮しやすくなり、喉が締まれば咳払いが多くなる。
 それに対応するのが『半夏厚朴湯』で、受験生やプレゼンの発表など緊張する場面で頼りになる。
 でも、お客様は『麦門冬湯』の方が気になったらしく、同様に喉を潤す現代薬の『ストナ去たんカプセル』も紹介したところ、前者を購入された。
 合うようであれば、保険の適用薬なので病院を受診してみることも勧めた。
 テレビに出て、いっちょ名を売りたい医師(決めつけ)が言ったコトに惑わされるよりも、実際に医師と会って対応してもらった方が良いので。

 若いお客様から『正露丸』を求められ売り場を案内したうえで、『セイロガン糖衣A錠』は抗炎症と鎮痙攣のための生薬を二つ抜いてあることと、腸には味覚と嗅覚があって匂いも効能のうちであること、そして大幸薬品と他社とでは処方が異なることを説明した。
 お客様の目的はもちろん下痢で、痛み止めの薬との併用について尋ねられたので、ロートエキスが入っているタイプの『正露丸』は避けた方が良いとお話したところ、『セイロガン糖衣A錠』をお買い上げいただいた。
 下痢をしやすく、ストレスが思い当たるというため『桂枝加芍薬湯』も適応しそうなので紹介し、病院に行ったことがないというから、専門家の話を聞きに受診してみるよう勧めた。
 ストレスが原因となると、やはり『正露丸』も糖衣錠じゃない、大幸薬品の本家を使ったほうが良いように思える。
 糖衣錠で抜かれている陳皮には、末梢の細い血管を拡張させて胃腸の働きを助けるとともに、その芳香によって、「腸のストレス」をも緩和することが期待できるから。

 高齢の親子のお客様が来店し、『ヨードチンキ』と『タケダ漢方便秘薬』を求められ売り場を案内しつつ、前者は最近では使われていないことと、後者は古い処方なので他社製品の方が価格が安いことを説明した。
 傷口に強力な殺菌剤を使ってしまうと皮膚の再生を邪魔してしまうから、水道水で患部を洗い流したら清潔な状態で密封し、自然に治るのを待つか、念のため抗生物質の塗り薬を用意しておくのが現在の主流。
 そして、『タケダ漢方便秘薬』は『大黄甘草湯』という漢方薬の中では強い部類で、高齢者が使うには向いていない。
 腸内の滑りを良くする『麻子仁丸』の主成分が入ってる『オイルデル』や、食べる量が減って便も少なくなっている場合に用いる『』などの方が体への負担が少ない。
 しかしどちらも、総合風邪薬の『パブロンゴールドA』と一緒に購入された。
 俗に「金パブ」と呼ばれる『パブロンゴールドA』には、咳止めに覚醒剤系と麻薬系の成分が入っていて、「コレを飲むと、すぐに治る」とか「気持ち良い」とお客様から言われると、薬物による依存症を心配してしまう。
 しかし、実のところ高齢者は残りの寿命を考えたら、もう使い慣れてる薬を他の物に変えたり、使用を控えるという考え方をしなくても良いのではないかと、迷うところでもある。
 高齢者医療に携わっている医師も、残り20年くらいの余生がある60代と、90代の患者さんに同じ対応で良いのだろうかと疑問を呈している。
 例えば、高血圧への対応として「塩分を控えましょう」とか、コレステロールを気にして「脂質を控えましょう」というのは、「残りの人生の愉しみを奪っているのではないか」という問題に似ていて、副作用が身体に差し障りがあるとしても使い慣れた薬を使うことによる「安心感」のほうを優先するべきなのではということだ。
 ブラック・ジャックとドクター・キリコが、なんと答えるのか知りたくなる(´・ω・`)

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