咳が出ていなければ風邪薬を勧めにくい理由とは? 店頭では伝えきれない副作用

 若いお客様が『ベンザブロックL』をレジに持ってきたけれど、主訴は鼻水と喉の痛みだというので、鼻炎薬も喉の面倒を見てくれることを説明して提案すると『パブロン鼻炎カプセルSα』に変更された。
 ただ、鼻水に色があるというから何かウイルスなどと戦っていると考えられ、一週間くらい続いているとのことだった。
 お客様には、温かい物を積極的に飲んで、食事は消化しやすい物にするよう勧めた。
 免疫機能は体温が高いほうが向上するのと、敵と戦うのにはエネルギーが必要で、しかし消化するのにも意外とエネルギーを消費するから、敵と戦う方にエネルギーを振り向けてもらうためにも、普通の食事よりは消化しやすい食事に切り替えてもらったほうが良い。

 お客様が風邪薬の棚で迷ってるようだったから声をかけたところ、主訴は鼻水とクシャミ、そして喉に鼻汁が落ちてくるというため鼻炎薬を提案したのだけれど、販売期限が迫って値引きしている『エスタックイブ』の方が気にかかるようで、常備薬にもしたいというため、比較的身体に負担のかからない『パブロンSα』を紹介した。
 それでも『エスタックイブ』を購入されたので、使うとすれば咳が出てからで、使う前に温かい物を飲んで入浴して下半身に厚着をするよう勧めた。
 正直、鼻水とクシャミは内臓が冷えているのが原因と考えられ、クシャミは粘膜が敏感になって何かにアレルギー反応を起こしているかホコリ等からも刺激を受けているのだろう。
 そして喉に鼻汁が落ちてくるのは胃が弱っている時に起きる現象だから、内臓を温めて消化の良い食事に切り替えれば、薬を使わずとも治ってしまう可能性が考えられる。
 その状態で『エスタックイブ』のような総合風邪薬を使うと、処方内容がまさに体が治ろうとするのを邪魔してしまうから、心配なんである。
 今回の場合、喉の痛みはあるものの発熱はしていない。
 対応する成分は解熱鎮痛剤のイブプロフェンとなるが、痛みの伝達物質の一つであるプロスタグランジンの生成を抑制するものの、この物質は胃粘膜の分泌を促進して胃を守る効果もある。
 つまり、痛みを止めるということは自動的に胃を保護する機能も止めてしまう。
 咳が無いというお話なのに、咳止めとして入っているジヒドロコデインリン酸塩は麻薬系で中枢神経を抑制することによって効果を発揮するのだけれど、症状が起きていないから今回は空振りとなって、残るのは副作用ばかり。
 その副作用は、胃腸の働きを悪くして消化力を落し、体内の保水機能を狂わせて乾燥させてしまうため、便秘を起こしたり、かえって咳を誘引する。
 今回の症状で実益があるかなと思われるのが、同じく咳止めとして入っているメチルエフェドリン塩酸塩。
 気管支を拡張してくれるので、喉の痛みを軽減するのと、実は覚醒剤系だから身体機能は活性化する。
 ただし、覚醒剤ということは自身の体が元気になったと錯覚してしまい、体に無理をさせたり、内臓が弱っていても食事が普通にできてしまう。
 もっとも症状に貢献しそうなのは、鼻炎薬として入っているクロルフェニラミンマレイン酸塩で、炎症抑えてくれる他に皮膚の痒みにも効果があるから、クシャミも抑えてくれる。
 でも、やはり中枢神経に作用するため胃腸障害を起こす可能性があり、使うのであればやはり食事には気をつけたほうが良い。
 残念ながら、店頭ではここまで細かい説明はできない。
 私が、咳が無ければ、あるいは複数の症状が咳を含んで同時に起きているのでなければ、総合風邪薬を勧めにくい理由を知ってもらえると嬉しい。

 若いお客様が、『ベンザブロックS』を購入されるさいに咳の有無を尋ねると、主訴は鼻水と喉の痛みが少しあるものの咳は無いというため、鼻炎薬を提案した。
 鼻炎薬でも、軽いの喉の痛み程度であれば効能に入っていることを説明し、咳止め成分のリスクもお話したうえで、どうしても風邪薬ということであれば『PL顆粒』を紹介してみたけれど、そのままお買い上げとなった。
 『PL顆粒』は市販の風邪薬の中では、唯一と言って良いほど咳止め成分の入っておらず、パッケージにも「のどの痛み、熱、鼻みず」としか書いていない。

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