本当は怖い漢方薬(タイトルで煽ってみました)

 咳の相談を受けたのだけれど、現代薬の風邪薬でアレルギーを起こした事があり、漢方薬をと要望された。
 ところが、どの風邪薬で起きたかは具体的には覚えていないという。
 ううん、これは大変な誤解で、漢方薬は副作用が無い訳でも、アレルギーが起きない訳でも無い。
 しかし、「漢方薬は効くのに時間がかかる」と同じくらい、世間一般では「現代薬より安全」と誤解されている。
 悪用されると困るから、日記には書かないけど、妊婦さんを流産させる事だって出来ちゃうんですよ、漢方薬で。
 内臓系にダメージを与えて、寿命を短くする事だって出来るんですよ、漢方薬で。
 そして、現代薬に含まれている成分の一部は、特定の生薬との併用による副作用も報告されているから、やはりアレルギーが起きたという現代薬の特定は、安全面で云えば必要なんである。
 ……と、言いたい事は日記に書くので、ひとまず目の前にいる患者さんに適応しそうな物を探さねば。
 喉の痛みは無く、咳き込むほどではないという症状から、『五虎湯』『麻杏甘石湯』は除外。
 喉が詰まる感じがするという話から、『半夏厚朴湯』を候補にしたが、神経性は思い当たらないと言われた。
 ここは難しいところで、神経性というのは実のところ、本人の自覚とは別だったりする。
 それこそ今は、季節の変わり目で体に変調が現れやすい時期。
 五月病だって、生活環境の変化とか連休明けとか原因らしい候補は幾つもあるけど、実のところは後付け設定みたいなものだ。
 疲れていなくても、意識しなくても、不意に眠くなる時があるのと同じで、神経がどう感じるかまでは、人間はコントロール出来ない。
 アレルギー体質である点と、こみ上げる咳という話からも、『半夏厚朴湯』が適応すると思える。
 しかし、本人だけが感じている「言葉に変換できない症状」というのもあるし、気持ちのうえでも「自分か選択した」というのは重要であるため、次点として上半身の乾燥に用いる『麦門冬湯』を候補に挙げたところ、そちらをお買い上げ頂いた。
 他に栄養ドリンクも希望されたが、これまたよくよく聞けば『ゼナジンジャー』でも蕁麻疹が出た事があるというので、控えるようお話した。
 『麦門冬湯』で強い副作用が出たという事例は私は知らないけど、もし栄養ドリンクと併用して何か変な症状が現れたとしたら、服用した物の種類が多いと原因の特定が難しくなってしまう。
 それから、『新ビオフェルミン錠S』を購入されたので、効果が弱いと思われる場合は、『ザ・ガード』を試してみるよう勧めた。
 さっきの話と矛盾するみたいだけど、アレルギーというのは腸の働きと関係するという説がある。
 腸の状態を改善すると、アレルギーの症状も軽減するらしいのだ。
 まだまだ研究途上の説ではあるが、「病院が患者を殺す」とか「薬は不要」などという極端なテロリストのような思想とは別で、試す価値は有るだろう。
 半身浴で下半身を温めるというのも、腸の働きを改善するためのもので、本人は風呂が短いそうだから、のぼせないように上半身に風を当てたり、水で濡らしたタオルを頭に乗せたりしての長湯を勧めた。
 そして、ビールが好きというお話から、先に温かい味噌汁やお茶を飲んで、胃に準備体操をさせるように伝えた。

 『テーピング』を購入されたお客様から、「伸びる物は無いですか?」と尋ねられた。
 テーピングは、患部が動かないように固定するのが目的だから、伸縮包帯のように伸びては困る。
 用途を尋ねたら、サッカーをしている高校生の息子さんから、『テーピング』をと頼まれたらしい。
 息子さんは、今はサポーターを足首に使用しているそうで、それが良い感じではないため、テーピングを頼んだようだ。
 という事は、息子さんの方はテーピングの目的を理解していると考えて良さそうだ。
 ただ、トレナーやコーチが専門知識を持っているようであれば、ちゃんと指導を受けた方が良い事は、お話した。

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本当は怖い漢方薬(タイトルで煽ってみました)への2件のコメント

  1. アバター はぐれ薬剤師
    はぐれ薬剤師 コメント投稿者

    古くて新しい東洋医学
    「漢方ブーム」は昭和40年頃からでしょうか。今日に至るまで誤解だらけはご存じのことと思います。安全で副作用のない代わり長くのまなくてはならない、などなど。マスコミ、メイカー含めて責任は大きいです。漢方の良さは病気に対する考え方が優れていることですね。分析的でなく統一的であり、技術的ではなく、むしろ哲学的です。顕微鏡的ではなく望遠鏡的です。人工的ではなく自然的と言えましよう。人間の体を内へと分析するのではなく、小宇宙に見立て大宇宙とその中に生かされているけし粒よりも小さい小宇宙としての人体との関係をいつも忘れない立場に立っているのが漢方と思います。

     
    • アバター 北村俊純
      北村俊純 コメント投稿者

       本当、「安全で副作用のない代わり長く飲まなくてはならない」というイメージは、変に根付いてしまいましたね(;´∀`)
       そういう人が年齢的に高いように思えるのは、当時のブームまっただ中に社会的に現役世代だった人達なのかも?
       人間の体を「小宇宙」に例えた、子供向けの学習漫画を読んだような気がします。