胃薬は種類が多くて難しい

 『スクラート胃腸薬』を購入されるお客様に、お会計をしながら症状を尋ねると、成人の息子さんから「なんでもいいから胃薬を買ってきて」と頼まれたそうな。
 それと、家にあった胃薬を飲んでいて無くなったからというのだけれど、何を飲んでいたのか、それを飲んでみてどうだったのかも不明。
 そして肝心の症状の方はというと、「具合が悪い」としか分らない。
 ううん、せめて胃もたれなのか胃痛なのか、満腹時の不調なのか、空腹時にも苦しいのかだけでも分かれば、案内のしようがあるんだけどねぇ。
 名前の似ている『スクラート胃腸薬S』の方なら、健胃薬が入っていて応用範囲が広いけど、『スクラート胃腸薬』の方は「空腹時の胃痛」というようにグッと狭くなってしまう。
 お客様には、簡易な鑑別方法として、水を飲んで楽になるのか、お湯を飲んで楽になるのかを確かめてみるよう勧めた。
 本当に簡易過ぎるけど、それだけでも水を飲んで楽になるのなら胃炎や胃の亢進(働き過ぎ)、お湯を飲んで楽になるのは胃内停水やストレスによる胃痙攣というように考えられる。
 それに、どうも息子さんは胃薬をしょっちゅう飲んでいるというから、炭酸水素ナトリウムの摂り過ぎによる血管の収縮や、ロートエキスで胃腸の働きが悪くなっているというという可能性もある。
 なんでも摂り過ぎは、良くないんである。
 なによりも、「なんでもいいから」で胃薬を選ぶというのは、風邪薬よりも難しい。
 風邪なら、頭痛・悪寒・発熱・関節痛・咳・鼻・喉といったところだろうか。
 しかも、頭痛と悪寒と発熱と関節痛は繋がってるし、咳・鼻・喉も繋がっているから、ドコかを治せば残りの患部も一緒に治ることが期待できる。
 一方、胃薬はというと、亢進を抑える制酸剤・消化を助ける消化剤・胃を修復する健胃剤・胃酸の出過ぎを抑えるけど作用機序の違うH2ブロッカーとM1ブロッカー・粘膜修復剤・運動調整剤・鎮痛鎮痙攣剤・整腸剤・下痢を止める止瀉剤・便秘薬・痔疾剤と風邪薬よりも多種多様。
 簡単な表を示すと、息子さんは痔もあるとか。
 本日のところは、いったん返品となって、改めて症状を確認してきていただくことに。

 お客様から、肩こりに匂いがあまりしない湿布をと求められ、薬剤の種類によって違うことを説明した。
 いわゆる「湿布臭い」とか「サロンパスの匂い」と云われるのは、サリチル酸グリコールである。
 症状を確かめると、急性で軽い頭痛を伴うそうなので、浸透力のあるフェルビナク製剤を案内したうえで、内服薬に『釣藤散』と『コリッシュ』(治肩背拘急方)を紹介したところ、病院で胃潰瘍の薬が処方されていると分かった。
 おっと、それじゃ『葛根湯』は使えませんね。
 服用している薬は、先に確認するべきでした。
 次の受診が近いというから、『釣藤散』は担当医に相談してみるよう勧めた。
 本日は、『フェルビナク5.0%』をお買い上げ頂いた。

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