分かりやすく簡潔な説明が難しい

 風邪薬を求めて来店したお客様、しかし主訴は咳のみで長引いてるそう。
 そこで咳止めの使用を勧めたら、いつもは咳が酷くなったら「病院で強い薬を処方してもらってる」というのだけれど、内容は不明。
 うーん、強い薬ってなんだろう(´ェ`)?
 体内が乾燥している可能性をお話して、『麦門冬湯』を案内してみる。
 目の前で咳が出れば、咳の音で予測もつくんだがなぁ。
 大抵のお客様が、咳を我慢しちゃうんだよねぇ。
 まぁ、出先で人前だからというのもあるんでしょうが。
 だからこそ、咳が酷くなるタイミングとか落ち着いてる時間帯とかの情報が欲しいところ。
 そう思いつつ詳しく訊いてる中で、咳払いが多くて喉が詰まる感じがするという話が出た。
 ピコンッ(゚∀゚)!!
 やはりヒアリングに応じてもらえると、ヒントに出逢えるもんである。
 それは、ストレス性の咳の可能性が高いです。
 そう伝えると思い当たるようなので、『半夏厚朴湯』を勧めて試して頂くことになった。
 入浴について尋ねると、ゆっくり入る時間が無くてシャワーで済ましてしまうそう。
 お気持は分かりますが、寝る時間を削ってでも入浴したほうが良いです。
 乾燥性の咳では血流を良くして水分を行き渡らせるために、ストレス性の咳では神経の緊張を緩和するために、入浴は重要。
 特に睡眠は、体温が急激に下がるほうが深く良質の眠りに入れる。
 しかし、平熱から下げてしまっては免疫機能が低下し体調を崩してしまう。
 では、どうするか。
 一旦上げてから、下げれば良いんである。
 赤ん坊の体温が眠る前に上がるのは、本能的なのか身体機能として備わっているのか分からないが、同じ原理と考えられる。
 シャワーで済ませて長く浅く眠るより、入浴して短くても深い眠りにつくほうがストレスの軽減になるのです。

 お客様からビタミンCをと注文され、サプリメントと医薬品の両方を案内すると、「風邪にはビタミンCが良いんですよね?」と質問された。
 こういう質問は、返答に困る。
「良い」の基準を、何処に置けば良いのか分からないから。
 いや、おそらく多くのお客様の質問の意図は「治す」という意味においてなんだろう。
 でも、そもそも風邪は基本的に「放っておいても治る」ので、ビタミンCで治る訳ではない。
「ビタミンC」で「治る」と言えば、嘘になってしまう。
 一方、風邪を治すために体は多くのエネルギーや栄養素を消費する。
 皮膚の材料となるビタミン類や、骨に貯蔵しているカルシウムなどを、「治すため」に消費する。
 消費したら、補給しなければならない。
 だから、風邪の治療のために「ビタミンC」が必要なのは確か。
 ただ、水溶性のビタミンCは先に多く摂っておいても貯蔵できないし、風邪をひいて体が戦っている時に補給しても、補給した栄養を分解して代謝するのにもエネルギーを消費してしまうため、普段よほど不摂生をしていなければ回復期に入ってから摂取すれば事足りる。
 というような事が頭の中を駆け巡り、何処から何処までを完結に分かりやすく説明しなければと考えて、思わず答えに窮してしまうんである。
 そして、答えに窮してしまうと、「なんだ、分からないのね」と誤解されてしまう事も(´・ω・`)
 今回は珍しく、本当に珍しくお話を聞いていただけるお客様で興味を示されたため、上記の話をそのまま伝えると、症状のヒアリングもできた。
 すると主訴は、咳と喉の痛みで他には症状は無いという。
 咳が強く出る時や咳の出方については、意識したことが無いから分らないそうだけど、夜に主に出るらしい。
 それでしたら、患部を冷やしつつ熱を発散する『五虎湯』が良いかもと案内し、比較として上半身を潤して咳を止める『麦門冬湯』を紹介した。
 そしたら、血圧が高く降圧剤を服用していると分かった。
 ありゃん(;´Д`)
 ここまでヒアリングしてきて、初めて告げられる服用している薬の情報。
 これだから、油断できない。
 しかも、お薬手帳は持ってきておらず薬の内容は不明。
 となると『五虎湯』を使うのは少し怖いので、『麦門冬湯』を試して頂くことにした。
 あと、ツボを温めると良いと思いカイロを方に当ててるという話だったけど、カイロだとミニタイプでも温める範囲が広く乾燥の原因になりかねないため、一時中止するようお話した。
 もちろん、患部が炎症している場合、体としては炎症させたい理由があるから、患部を温めて体自身が炎症するのを止めさせるという治療方針もあり得る。
 ただ、それをするとなると経過観察が必要だし、熱は上半身に昇るものだから、コントロールが難しい。
 家庭で個人がやるのには、入浴や温かい物を飲みつつ下半身を厚着する方が簡単でやりやすいだろう。

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