お薬手帳を断るなら、ついでに救命も断りますか? 20円安くなりますよ……自分の命が

 娘さんが、ものもらいという事で抗菌目薬を買いに来たお客様から、『ロート抗菌目薬』の分包タイプを利用して効果が得られなかったと相談された。
 薬の効きが良い悪いという事ばかりではなく、相性という事もあるので、『アイサット抗菌目薬』を案内した。
 ただ、詳しいお話を聞いてるうちに、分包タイプの目薬の1本を2~3回に分けて使用していたと分かった。
 ギャッ!!Σ(ll゚Д゚ノ)ノ←本当に、こんな顔をしていたと思う。
 分包タイプの利点は、瓶タイプが一度開栓したら短期間に使い切らないとならないのと違い、1包が使い切りだから長期保存しておける点と、容器の口の部分が睫毛に触れたりして汚染されるのを防げる点にある。
 それを、分包タイプの1包を複数回に分けて使っていたのでは、そもそも分包の意味が無い。
 ううん、世の中には座薬を飲んでしまう人もいるというから、分包タイプの意味を必ずしもお客様が理解して購入しているとは限らないという事。
 販売時に、用途はもちろん使用方法についても、ちゃんと説明しないといけない。
 ………とはいえ、ドラッグストアじゃレジに持ってこられた薬は、ほぼ説明スルーでお会計というのが現状。
 どうしたら良いの、教えてエライ人(;´・ω・)
 成人の息子さんが、めまいや立ちくらみを起こすという事で、母親から相談を受けた。
 症状が現れるのは朝食後だけで、お昼以降は問題無い様子らしい。
 血糖値が急激に上がってとかなら、それが昼食でも同じ事だろうし、寝起き直後の胃の働きが悪いのだろうか。
 消化のために血流が集中して、症状が起きているのかもしれない。
 普通の食事ではなく、雑炊やスープなどの消化の良い物を朝食にするよう勧めた。
 他に、肩こりもあるそうなので、上半身の血流改善に『独活葛根湯』を案内したところ、お買い上げ頂いた。
 ツイッターで、「お薬手帳断ろう、20円安くなる」というツイートが拡散されているというニュース。
 取り上げていたまとめサイトを見てみたけど、やっぱり勘違いされているなぁと感じた。
 http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1799297.html
 「絶対に一つの医者からしか処方箋をもらわないなら」不要とか、「多くの科に通う人は注意だ」というコメントは、飲み合わせという面では正しいけど、あくまで一面でしか無い。
 「家に持ってるんだからシールでくれればいいのに」というコメントは、なんで手帳の形態なのかを考えていない。
 「薬の説明書きは別にもらうんだからそれを管理しとけばいいだろ。お薬手帳という形式である必要はない。」なんてコメントもあるくらいだから、本当に必要性が理解されてないんだというのは分かった。
 「薬剤師が手帳見て出す薬変えられるわけでもない」っていうのも、薬の変更はできないけど、それまでの服薬歴から外れる薬が処方されたら、疑義照会くらいはしますよ?
 「同じ薬を毎回出しているのに 、そのつど指導料を取る悪徳商法」という考え方は、データには継続性が必要だという事を理解していない。
 さっきのように、毎回同じ薬の服用記録があればこそ、患者さんのおおよその病態が推察できて、だからこそ違う薬が処方された時に、疑義照会をしようという判断にもなるし、それによって患者さんの病態の変化というものも知る事ができるのだ。
 また、同じ薬が継続的に処方されているという事は、その薬に対しては重大な副作用を起こした事が無いという証拠になるし、反対に他の薬が使用できない可能性というものを示唆していたりする。
  「その気になれば、ネットで薬名、薬効、副作用、禁忌も調べられる」というのは、正にその通りなんだけど、文書的な資料と現場での使用状況とは必ずしも同じではない。
 禁忌の場合はともかく、時には副作用の発現を期待して処方される薬という物もあるので。
 一般的に「副作用」というのは、使用して悪い症状が現れる事と誤解されているけど、読んで字の如く、あくまで「主作用」に付随して起きるのが「副作用」というもの。
 その「副作用」がクローズアップされて、それを「主作用」として発現するよう調整して開発された薬は数知れずである。
 「単なる日記、ほとんど意味がない」というのは、きっと日記を書いた事が無いか、宿題で作文を書くのに苦労した人であろう。
 これもさっきの継続の有用性と関係あるけど、日記というのは淡々として変化の無い日常を書き続ける事に意味がある。
 平凡な日常の中に、ポッと特別なイベントがあるから、そのイベントは目立ち思い出深くなるというもの。
 そして、その人の事を知ろうとする時、特別なイベントのあった時だけ日記に書いても、比較対象が無ければ、どれだけ輝いているか「他人から」は分かりようが無い。
 「同じ薬局を常に使う人にとっては、不要だしな。」というのは、引っ越しの経験が無い人なのだろうか。
 ことによると、旅行なんかもした事が無いのかもしれない。
 お薬手帳を必要としているのは、実は本人ではない。
 いや、本人のための物なんだけど、使うのは他の人なのだ。
 それは誰かといえば、もちろん医療関係者。
 ただし、その医療関係者は、「かかりつけ」とは限らない。
 出先で具合が悪くなったら?
 大きな事故に遭遇したら?
 災害に巻き込まれたら?
 本人に意識があればまだしも、意思の疎通が図れない状態だったら、どうするのか?
 身元確認のために、手荷物を調べたりするだろう。
 その時に、お薬手帳を見つければ参考になる。
 なにしろ痛み止めや、血圧降下剤あるい強心剤など、その手の緊急に用いる薬は、効果的である反面、その副作用も強く発現しやすい物だ。
 風邪で病院や、歯痛で歯科医へ1回でも行った事があれば、解熱剤や鎮痛剤くらいは処方された事があるはずだ。
 使用した事のある解熱鎮痛剤が分かるだけでも、それは重要な情報である。
 一刻も早く投与しなければならない状況では、スピードこそが重要で、それを実現する一助が、お薬手帳。
 お薬手帳は、常に携帯している事が重要なのだ。
 一部の地域では、お薬手帳をスマホアプリなどへの電子化を勧めていて、それはそれで便利そうなので賛成だけど、事故や災害という状況を考えると、機器の故障だの電源の確保の問題を考えると、水で濡れようがドロで汚れようが、焼失でもしない限り判読の可能性がある紙の手帳の方が安全だろうと私は思う。
 電子化が当たり前になっても、紙の手帳は残しておいた方が良いだろう。
 ………ここからは、独り言の暴言。
 自らの意志で明確に、お薬手帳を断るという人は、臓器移植の意思を示すドナーカードのように「救命拒否カード」とか持ってはどうか。
 事故や災害の状況によっては、命の選別とも言われる「トリアージ」が必要な事がある。
 その時に、見捨てて良い命を簡単に判別できれば、他に救える命がいるあもしれないので。

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