同じ効能が書いてあっても、成分が違えば薬の効き方も違います

 お客様から、痛みを止めで殺菌作用もある薬をと求められたけれど、内服の抗生剤は市販されていないことを説明した。
 目的は抜歯後の疼痛なようなので、痛みの伝達物質の生成を抑制し、その信号を受け取る中枢神経にも効いて、眠気を催す鎮静成分の入った『イブA』を案内すると、すぐに大容量の購入を決められたが、最初は小容量で相性を見た方が良い事をお話して、そちらをお買い上げいただいた。
 鎮痛剤には、アスピリン製剤の『バファリンA』もあるが、これは病院では血液をサラサラにする目的でも使われるため、歯を抜いた時や歯茎から出血してる場合には血が止まらなくなるから向かないので、相談してもらえて良かった。
 相談せずに自己判断で選んでいると、そういう成分ごとの特性を知らないまま買ってしまう可能がある。
 お客様が歯を抜いたのは2日前で、処方された鎮痛剤が切れたから買いにいらしたそうだけれど、しかし何の薬が処方されたのか覚えてなかった。
 こういう時にこそ、お薬手帳を活用してもらいたいところ。
 処方された薬が分かれば、同じ成分の物を探したり、同じ傾向の薬を案内することが出来る。
 それから、捻挫や打ち身などの急性の痛みと同様に、痛みの伝達物質を生産する工場の活動を止めるのが、予後の経過を良くするので、初日に冷やすのが大事とお話したところ、もう一本抜く予定だっていうため、今度は初日に氷水か保冷剤を使って冷やすよう勧めた。
 急激に冷やせば、身体機能が低下して痛みの伝達物質の生産量が減り、痛みが長く続くのを防げる。
 なお、『冷えピタ』とか『熱冷まシート』のような冷感だけの物では駄目である。

 お客様が『トクホン』をレジに持ってきたさいに、痛み止めとしては弱めの薬であることを伝えると驚かれ、頭痛の時にコメカミに貼ってるというので、私の方も驚いてしまった。
 お客様は『サロンパス』より効くから強いと思っていたというので、主成分は同じサリチル酸系なことと、『トクホン』には弱い麻酔薬が入っているせいかもと説明した。
 ちなみに、『サロンパスAe』にも『トクホン』と同様に弱い麻酔薬が入っている。
 ただ、そもそもサリチル酸は痛み止めとして弱いというよりも、鎮痛効果そのものが無い。
 弱い刺激を患部に与えることで、痒いところを叩くと痺れて痒みが気にならなくなるのと同じように、痛覚神経を混乱させて痛みを緩和させるという仕組み。
 その弱い刺激はマッサージ効果があるから、肩こりや筋肉の疲労などに向いている。
 お客様がコメカミに貼っていた理由は頭痛持ちで、以前に病院で処方された『ロキソニン』を飲んでおり、しかし鎮痛剤を毎日飲んでいると「だんだん効かなくなる」と思ったから、その代わりに使っていたようだ。
 ところが、調剤薬局に相談してみたのか訊いてみると、『ロキソニン』が処方されたのは首を傷めて整形外科に通った時の物なのに、自己判断で頭痛に使ったという。
 しかも、頭痛で行った病院では何か別の鎮痛剤が処方されたそうだが覚えておらず、それが効かなかったから行っていないというため、フィードバックが大事なことをお話した。
 痛み止めに限らず、薬は同じ効能に使っても身体の中での働き方が違う物が存在する。
 例えば血圧を下げる薬にしても、血管を拡張して下げるのか、血液をサラサラにして下げるのかで効き方が違い、当然のことながら副作用の現れ方も異なる。
 そして、人間の体は機械ではないから、どの薬が効果的かは使ってみなければ分からず、処方する医師の頭の中には複数の候補があるはずなのだ。
 それは、店頭で薬を案内している私たちも同じこと。
 効かなかったのであれば、効かなかったことを教えてもらわないと、次の候補を案内できない。
 だから、処方された薬が効かなかったのであれば、同じ病院に行ったほうが良い。
 そこで他の病院に変えてしまうと、次の病院においても初診ということになり、前回のカルテは無いから比較ができない。
 お客様は、肩こりと頭痛と首の痛みが連動しているようだから、アスピリン製剤の『バファリンA』が向いてるようにも思える。
 漢方薬なら、上半身を温めて血行を良くする『葛根湯』も候補になる。
 しかし、お客様のお話では気圧の影響を受けているようなので、漢方薬の『テイラック』(五苓散)『呉茱萸湯』を紹介し、漢方に詳しい病院を紹介した。
 漢方薬を使えば、お客様が心配している鎮痛剤の使い過ぎの対策となるだろう。
 ただ、できれば前の病院に行って紹介状を書いてもらうよう勧めた。
 一般的に「紹介状」と呼ばれているが、正確には「診療情報提供書」という物で、次の医師が参考にすることが出来るのだ。
 先にも書いたように、ただ病院を変えるだけだと、次の医師は以前の情報を知らないまま初診となってしまう。
 お客様には、今回は鎮痛効果が一段高く浸透力のある『フェルビナクローション』をお買い上げいただいたが、コメカミに塗って良いか尋ねられたので止めるようにと答えた。
 どうしてそんなに薬を直接、頭に貼ったり塗ったりしたいのか(^_^;)
 鎮痛剤を飲み続けることのリスクを考えるのに、薬を目的外に使うことには無頓着という不思議。

【第2類医薬品】ビタトレール フェルビナクローションEX 100mL
新生薬品株式会社

 

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