市販薬の購入は、患者自身が医療のチームリーダーとして振る舞いましょう

 若いお客様から、新型コロナウイルスが心配で何か備えておいた方が良い薬はあるかと相談を受けた。
 もともと風邪のウイルスであることと、そもそも風邪を治す薬は存在しないことを説明したうえで、発熱したら体力を落とさないために胃腸と肝臓を守る『柴胡桂枝湯』を紹介した。
 新型コロナウイルスでも風邪でも怖いのは、進行して肺炎など他の病気にかかることである。
 家には『新ルルA錠s』があるというので、咳が出てから使うようにお話して、咳止め成分の入っていない『PL顆粒』も紹介した。
 総合風邪薬には問答無用で咳止め成分が入ってることが多く、大きく分けると覚醒剤系と麻薬系の二種類。
 覚醒剤系は喉を開いて呼吸をしやすくしてくれる反面、興奮作用によって血圧が上昇し心臓などへの負担がかかり、まだ治っていなくても元気になったと錯覚してしまうリスクがある。
 麻薬系の方は中枢神経を抑えて咳を止めてくれるものの、身体機能が低下するため水分代謝が悪くなって体内が乾燥し、便秘したり乾燥性の咳を引き起こすことさえあり、気力も萎えて病気と戦おうとする気持ちまで弱まるリスクがある。
 つまり、咳が無いのに咳止め成分の入っている風邪薬を使うと、リスクだけを受けることとなってしまうのだ。
 お客様は、以前に病院から処方されたイブプロフェンがあるというため、使う前に調剤した薬局に使用の可否を問い合わせてみるようお話した。
 調剤薬局を、病院からの処方箋を持っていって薬を受け取るだけの場所と思っている人が多いけれど、普段の健康相談にも応じてもらえるから、ぜひ活用してもらいたい。

 若いお客様が『鼻炎薬Aクニヒロ』を購入されると、その場で開封し、「いつも飲んでるんで」と添付文書まで置いていこうとされたため、副作用が出て入院治療が必要になった場合、『医薬品副作用被害救済制度』を利用して補助金を受ける要件に「用法・用量を守った」という項目があるので、その証明のために持っていた方が良いことをお話した。
 すると、箱は置いて添付文書のみをシブシブながらお持ち帰りになった。
「いつも」が「しょっちゅう」だったら、なおさら問題だが……。

医薬品副作用被害救済制度

医薬品副作用被害救済制度

 やや高齢のお客様が『アリナミンEXゴールド』と『アルガード目すっきり洗眼薬α』を購入された後で、後者の効果について尋ねられた。
 そして、病院で処方された目薬が効かなかったから買うというため、お薬手帳を見せていただくと、ドライアイ用と抗アレルギーの2種類だった。
 どうして、お会計する前に訊いてもらえないのか(;^ω^)
 ドライアイ用の目薬は、目の表面が乾燥して凸凹になっているのを治すための目薬だし、抗アレルギー目薬の方は花粉などに反応させないのが目的なので、痒みや炎症を抑えるのには弱いうえ、メントールの入った市販の目薬のようなスッキリ感は得られない
 本当は、処方された目薬の方を優先して、市販の目薬を使うことの可否を医師か調剤した薬局に相談するべき案件である。
 私からは返金対応を申し出たのだけれど、どうしても使いたいというため、『アルガード目すっきり洗眼薬α』を使ったら、処方されている目薬は15分以上離すようお話をした。
 そして、成分表示をお薬手帳に貼り、次に病院に行ったさいには医師に報告するようお願いした。

以下の記事も読まれています。


 
登録販売者から一言 壱の巻 登録販売者から一言 肆の巻「おくすり手帳と個人情報の使い方」 市販薬購入前チェックシート