家電の故障なら店頭で相談するはずなのに、自分の体の故障は自分で解決できると思ってしまう心理とは?

 高齢のお客様から、80代の親の胃痛の相談を受けたのだけれど、血圧の薬の他にも何か服用していて、それが分からないというため、筋肉の痙攣を抑える『ブスコパン』と漢方薬の『芍薬甘草湯』を紹介したうえで、先に調剤してもらってる薬局で相談するのがベストとお話をした。
 こうして薬の候補を挙げるのは、あわよくば買ってもらおうという訳ではなく、対応策があることを示すことにより、手に負えないから病院や調剤薬局に丸投げしているのではないというのを理解していただくため。
 初見のお客様に信頼してもらうというのは、はなから無理ゲーではあるものの、だからといって諦める訳にはいかないんである。
 しかし、やはり何か買って行きたいとのことで、『芍薬甘草湯』を購入された。
 候補の薬を挙げるやり方は、こういうリスクがあるのが困りもの(;´Д`)
 さりとて、うちの店での購入を諦めて、今度は他のお店に行き店員に何も相談せず不適当な薬を購入されても困る。
 何か他に上手い対応方法があれば、教えてもらいたい。
 お客様には、成分表示をお薬手帳に貼って担当医報告することと、市販薬の購入時にもお薬手帳が必要なことをお話した。

 お客様からリップクリームを求められ、マスクのしすぎで唇が荒れているとのことから『モアリップW』での修復を勧めたうえで、『ワセリン』を使って患部を保護するだけでも自己修復の効果が期待できることを教えたところ、家にあるというため「それで充分」と伝えたら、お帰りになった。
 これで、いいのだ。
 商品を指名するお客様が、他の候補を考えておらず、でも別な対処法が存在するというのは良くあること。
 それで次回に、商品の指名ではなく相談をしてもらえれば、セルフメディケーションが成り立つ。
 お客様には、唇の荒れはマスクのせいだけでなく、胃炎を起こしている可能性もあることを伝えた。
 唇は、胃壁が口まで伸びていていて裏返っているようなもの。
 唇には胃の状態が現れるんである。
 だから、唇の荒れに対する養生法は胃に優しい食事となる。

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 夫婦のお客様が来店し、『パブロンメディカルC』と『第一三共胃腸薬』をレジに持ってきたため併用は避けるようお話したところ驚かれたものだから、こっちが驚いた。
 『第一三共胃腸薬』は総合胃腸薬の中では塩分となるナトリウムが抜いてあるとはいえ、他にもミネラル成分が入っており、風邪薬に含まれる鼻炎を抑える成分の効果を弱め、逆に咳止め成分が身体機能を低下させるため、ミネラル成分が循環器に負担をかけてしまう。
 患者は奥さんで、主訴は咳と胃の不快感というため、解熱鎮痛剤や鼻炎薬の成分は不要と考えられるので、咳止め薬を提案すると家に『ブロン液エース』か、『ブロン液L』があるとのことだった。
 正直中身が違うから、どちらか分からないと困る。
 体への負担は、後者のほうが少ないと考えられるのだけれど。
 また、お客様は家にあった『パブロンメディカルC』をすでに服用し、胃がつかえる感じがしたから胃薬を使おうと思ったというため、それは咳止め成分の副作用の可能性が考えられることをお話して、『セルベール整胃錠』を勧めると、やはりそれも家にあると分かり、全てキャンセルとなった。
 風邪薬に入っている代表的な咳止め成分には、覚醒剤系と麻薬系との2系統があり、麻薬系は神経を抑えて咳を止めるのだが、そんな都合良く咳だけを止めるなんてことはできず、呼吸機能そのものを低下させ、心臓の鼓動も弱めて、胃腸の機能も低下させてしまう。
 つまり、胃のつかえ感が副作用の可能性は充分に考えられるし、反対に胃炎を起こしていて、その炎症に神経が反射反応を起こし咳になっている可能性すらある。
 後者の場合なら、胃薬を使って胃を先に治せば咳も治まる。
 お客様には、消化に良い食事に切り替えるよう勧めた。
 それにしても、飲んで具合が悪くなったのに、同じ風邪薬を追加で買おうとしたり、家にある薬を使わずに別な物を買おうとしたりするのが、私には良く分からない心理だ。
 これが家電なんかの故障だったら、まず店頭で相談するはずなのに、どうして自分の体の故障は自分で解決できると思ってしまうのか。
 薬を買いに来る前に、家にある薬を写真に撮ってきてもらえれば、その中に使える薬が無いかもアドバイスしますので、ぜひ相談して下さいませ。

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