その「アンメルツ」は、どの「アンメルツ」ですか? 効いた、効かなかった、正確に名前を覚えてる?

 お客様から『ロキソニン』を求められ、薬剤師がいなくて取扱っていないことを説明し、イブプロフェンでの代用を提案したところ、内服薬ではなく貼り薬の方だった。
 それなら、あります。
 ただ、お客様の患部は腕だったから塗るほうが手軽なのではとお話して、鎮痛効果が高く浸透力もあるジクロフェナクトリウム製剤と、浸透力はそれほどではないものの鎮痛効果が劣るというほどではないインドメタシン製剤を案内すると、後者が主成分の『バンテリンEX液』をお買い上げとなった。
 お客様には改めて、外用鎮痛剤は強さと浸透力の違いがあって、目的によって使い分ける、あるいは持病や他にしようとている薬との兼ね合いを検討する薬ですと説明した。
 貼り薬も内臓疾患や飲み薬と影響するということを知らずに、あるいは鎮痛効果に違いがあると思わずにブランド名で選んでしまう人もいるから、お客様が棚で選んでいるときにも、気を抜いて観察を怠ることはできないんである。
 例えば、内服の鎮痛剤を見ていた人が外用鎮痛剤を買ったとしてもおかしくはないが、実は湿布薬を頭痛で額に貼るのが目的だったなんていうケースにも出くわす。
 不思議なもので、「なんかマズイ」という勘が働くことがあるだ。
 その勘を働かせるのが、薬を選んでいるときのお客様を観察すること。

 お客様から、寝違えに『アンメルツヨコヨコ』を使っていて改善しないと相談を受けたので、実際に使った薬を確認すると『ニューアンメルツヨコヨコA』だと分かったため、目的に対して薬が弱いことを説明し、ジクロフェナクトリウム製剤を候補にしつつ『バンテリンEX』を一緒に紹介すると、そちらを購入された。
 『アンメルツヨコヨコ』に限った話ではないが、同じブランド名でも名前に数字やアルファベットなどが加わると、中身がまったくの別物という市販薬は多い。
 今回のお客様が使っていて効果が感じられなかったという『ニューアンメルツヨコヨコA』の主成分はサリチル酸グリコールで、実は鎮痛効果は刺激によるものである。
 患部にチクチクした弱い刺激を与えて痛覚神経を誤魔化すその仕組は、痒いところを叩くと痺れて痒みが気にならなくなると思うと分かりやすいだろう。
 ちなみに、無印の『アンメルツヨコヨコ』の主成分はサリチル酸メチルで、効果としてはサリチル酸グリコールと変わらず、いわゆる「湿布臭い」とか「サロンパスの匂い」と言われるのは、こちらのほう。
 でも、匂いによるリラックス効果も鎮痛には必要だったりするため、その点を優れていると考えるか、匂いが嫌だと思うかは使う人次第となる。
 そして、同ブランドの『アンメルツゴールドEX』の主成分はフェルビナクというもので、こちらは皮膚から患部に浸透して痛みの伝達物質であるプロスタグランジンが患部で合成されるのを阻害する分だけ、痛み止めとしてはサルチル酸より確実性がある。
 そして名前が似すぎていて、商品の品出しのさいに並べる場所を間違えやすく、レジで確認のためにお客様に声をかけると勘違いしていたというケースが多いのが『アンメルツゴールドEX NEO』であり、中身はジクロフェナクトリウム。
 市販されている外用鎮痛剤の中では一番鎮痛効果が高いうえ抗炎症作用も抜群、そして浸透力にも優れていて血液中にも入っていく。
 それだけに、心臓疾患など他の病気や使用している薬との影響は、よく検討しなければならない。
 もちろん、先ほどのフェルビナクにしても喘息の人には注意が必要だから、単純に強い薬だから危ないとはならないし、弱い薬だから安全とも限らない。
 『ロキソニン』のロキソプロフェンにしても、痛み止めとしての強さは同程度で内臓への影響はジクロフェナクトリウムより安全とはいえ、やはり胃腸疾患の有無については注意が必要。
 『ロキソニンテープ』を4枚同時に貼ったら気持ち悪くなったなんて患者さんもいて、やはり自動販売機にはなれないんである。
 そして、鎮痛効果も浸透力も少し劣るものの、インドメタシンも他の成分とは系統違いでプロスタグランジンの生成を抑制するので、一つの鎮痛剤が効かなかったら別な系統に乗り換えてみるというのは一つの選択となる。
 成分を比較せずに、単純にブランドや製薬メーカーを変えただけだと、実は同じ成分だったということも起こる。
 そういう意味では、『アンメルツヨコヨコ』のように似た名前の商品は混乱しやすいけれど、「○○が効かなかった」と別なブランドや製薬メーカーの薬に乗り換えるよりも、同じブランドのシリーズ間で乗り換えたほうが成分違いを試せるという考え方もある。
 まぁ、なんにしても分からなかったら、今回のように相談してもらえるのが一番。
 ただし、今回のように「アンメルツヨコヨコが効かなかった」と言われても、同じブランドの中のどれだったかが分からないと選びようが無くなってしまうので、パッケージの写真を撮っておくか添付文書を残しておくのをお忘れなく。

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 やや高齢のお客様が『スキュータムA』を購入されるさいに弱めの薬であることを伝えると、ご主人が腰痛に使っていて、病院には何か他の治療で通院してるというため、使ってる薬が分かれば強めの薬も選択できることを説明した。
 外用鎮痛剤の使い方として、肩こりのような軽度で日常的な痛みに使うのならば弱い薬を選び、打撲や捻挫などの急激で強い痛みには最初に強い薬で痛みの伝達物質類の生成をバンッと抑え込み、痛みが和らぐにつれて薬も弱くしていくというステップダウン方式がある。
 もし腰痛の程度が強いようなら、『スキュータムA』のサリチル酸グリコールでは、いかにも力不足だ。

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