毎日の排便は必要ない!? 出しやすいトイレでの姿勢と、漏らしそうなときの歩き方

 やや高齢のお客様から便秘薬を求められ、売り場を案内してヒアリングしたところ、毎日出ていたのが2日に1回になったものの苦満感は無いというため、排便は週に2回でも大丈夫なことを説明した。
 毎日の排便をというのは、子供に習慣づけさせるための教育が目的で、実際には個々人でサイクルが異なって当たり前。
 この手の誤解の広がりは他にもあって、「テレビを見すぎると目が悪くなる」というのもそう。
 あれは教育的な指導が独り歩きしてしまったけれど、長時間目を見開いて疲労するのは間違いないものの、走りすぎたからといって足が悪くなる訳ではない。
 もちろん回復のための休息やケアは必要だし、度が過ぎれば怪我もする。
 しかし、運動しないと急速に筋肉が痩せ衰えバランス感覚も低下して歩けなくなるのと同様に、目は使い過ぎよりも暗いところで物を見るほうが視力の低下につながる。
 深海魚の目が退化するようなものである。
 だから、節電のつもりで昼間に窓からの日光だけ取り入れて薄暗い部屋で過ごすのもNG。
 そして便通の話に戻ると、お客様には加齢により睡眠時間が短くなるのと同じで赤ちゃん返りみたいなものと説明した。
 赤ん坊は内臓が未発達だから、回数が増えるか少ないかの極端な状態になりやすく、歳を取ってくると内臓の機能が低下して1回の量が減ったり間隔が空いたりする。
 そして、腸内の水分を吸って便を柔らかくする『酸化マグネシウム』と、腸内の滑りを良くする麻子仁を主体とする『オイルデル』の他に、植物の種が水分を吸って便の量を増やす『サトラックスビオファイブ』を紹介したところ、食べる量が減ったということから『サトラックスビオファイブ』を試していただくことになった。
 排便はトイレでの姿勢も大事とお話すると「色々やった」とのことだったけれど、洋式便器に座ったら胸が膝につくくらい前屈みになるか、足を台に乗せる方法を教えると、「知らなかった」と言われた。
 人間の直腸は立っているときには肛門に蓋がされるような仕組みになっており、そのおかげで人間は立ちションベンはできても立ちグソはできないようになっている。
 そういう意味では、膝を抱える姿勢になる和式便器は排便に向いていると言える。
 だから急な便意に襲われたさいに、お腹を押さえるように前屈みになると漏らしてしまうので、背筋を真っ直ぐに伸ばしたほうが長く耐えられる。
 そしてトイレに入ったら、下半身を出すときに要注意。
 ここで脱ごうと前屈みになると悲劇が起こる。
 姿勢を正したまま、まっすぐの姿勢を崩さずに下半身を脱がなければならない。
 また、お客様はトイレで新聞読むというので、それは体が「トイレで排便する必要が無い」と学習してしまうから、やめるように伝えた。
 寝室で寝転がりながらスマホを見たり本を読んだりすると、寝室を寝る場所と体が認識できなくなって眠りの質が下がるのと同じである。

 高齢の夫婦のお客様が来店し、ご主人が便秘に『酸化マグネシウム』が効きすぎてトイレに着く前に漏らってしまったとのことだったのだが、1日に5錠飲んでいたという。
 規定の用量の範囲内ではあるけれど、大人なら初回は3錠から使い、適宜増減するのが運用方法である。
 しかし奥さんが「弱いのを」と言われるため、薬は強いか弱いかよりも、体の中での効き方と使用する量が大事なことを説明したうえで、『オイルデル』と『サトラックスビオファイブ』を紹介したものの、私の話は聞いてもらえず最初の話にループしてしまった。
 なにしろご主人にヒアリングしてみても奥さんが割って入って、肝心の本人と会話ができなかった。
 便秘は1週間くらい続くとのことだったが、肝心の出たときの便の状態も分からなかった。
 最初が固くて後は柔らかいのか、出ても軟便なのか、コロコロ便なのかなどでも対応が変わってくるのだが。
 最初だけ硬いようなら滑りを良くする『オイルデル』だろうし、出ても軟便なら便を増やす『サトラックスビオファイブ』が候補になり、コロコロ便だと腸が変に痙攣している可能性が考えられるから『桂枝加芍薬湯』も選択肢になる。
 他のお客様がレジにいらしたので、少しお待ちいただいてるあだに『新ビオフェルミンS』を選ばれ、指定医薬部外品は一般の商品と一緒にお会計ができるものだから、そちらで買って帰られてしまった。
 ううん、ご主人大丈夫かしら。
 奥さんも、ご主人を心配してのことだと思うのだけれど、釈然としない。

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