お客様の勘違いを訂正するべきか迷うとき

 『バファリンプレミアム』をレジに持ってきたお客様に、以前から使っている物かを確認すると、使うのは初めてで、『バファリンA』との違いは知らないようだった。
 同じブランド名でも、中身は縁もゆかりもない成分であることを説明したところ、肋間神経痛に使いたいとのこと。
 それはもちろん構わないのだけれど、以前に不整脈と診断されたことがあり、肋間神経痛についてはそう思うだけで、病院には行っておらず、根拠は無い模様。
 受診勧奨してみると、出張でこちらに来ているため付近の医療機関を知らないというのと、病院は信頼していないというお話をかなり強い口調で言われた。
 ううん、何があったのかは分かりませんが、あまりの強い口調に、苦情案件になるんじゃないかと警戒してしまった。
 しかし、本来は薬は使いたくないということと、漢方薬は嫌いではないといてうお話だったので、『柴胡桂枝湯』を案内してみた。
 本当に肋間神経痛であれば『桂枝加苓朮附湯』などを考えるところだが、出張といったストレスなどにより胃に負担がかかった場合、胃の周辺部の血液の循環が悪くなり、みぞおち辺りのつかえ感や痛みなどが現れ、これを肋間神経痛と認識することがあるので、『柴胡桂枝湯』が適応するのではないかと考えた。
 もちろん、本当に肋間神経痛の可能性も捨てきれないが、現時点では分からないため、お客様の主観としての主訴にターゲットを絞った次第である。
 こちらの説明は納得していただけたようだったけれど、今回はそのまま『バファリンプレミアム』をお買い上げいただいた。
 その頃には、だいぶ表情も穏やかになったので、どうも病院に関する話を聞いてもらいたかったのかもしれない。

 やや高齢のお客様から、「正露丸トローチ」と注文され、そのような製品は無いと思われることを伝えたが、やはり「正露丸のトローチだよ!」と強く言われ、念のため商品カタログで調べてみた。
 しかし、やはりないためトローチつながりで『浅田飴』と『南天のど飴』を案内すると、黙って『浅田飴』を購入された。
 恥ずかしくて、訂正できなかったんだろうか。
 私の方も、あえて突っ込まないで訂正せずに売ったが。
 本当は、『浅田飴』と『南天のど飴』は似ているようで効能が違うから、その説明はしなければならない。
 『浅田飴』は、炎症を冷やし熱を発散して、血行を良くしつつ粘膜の再生を図る。
 『南天のど飴』は、保水と気管支拡張であるから、息をしやすく方が主な効果となる。
 だから薬の販売としては、ちゃんと確認しないのは好ましくないのだけれど、客商売としてはお客様に恥をかかせる訳にもいかず、難しいところである。

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お客様の勘違いを訂正するべきか迷うときへの2件のコメント

  1. アバター はぐれ薬剤師
    はぐれ薬剤師 コメント投稿者

    私の場合は訂正はしません。お客様が信頼している医師、信じてのんでいるお薬、健康食品、健康法、全て受け入れます。後は本当に正しい方法を一つの選択肢としてご紹介するにとどめます。理解度は様々ですから致し方のない所です。

     
  2. アバター 北村俊純
    北村俊純 コメント投稿者

    >本当に正しい方法を一つの選択肢としてご紹介するにとどめます。

     なるほど、その姿勢は大事ですね。
     主体はお客様ですから。