頭痛がするからといって頭が悪い訳ではない

 やや高齢のお客様が、床ずれということで相談にいらしたんだけど、話を良く聞いたら違って、長時間座っていたり自転車に乗っていて臀部が擦れたようだとのこと。
 一般に「床ずれ」というと字面から「寝たきりで腰の辺りが衣服や下着と擦れて起きる」と思われがちだけど、医学的には「褥瘡」(じょくそう)と呼び、起きていることは患者さん自身の体重で局所的に血流が滞って鬱血し、栄養不足になった細胞が壊死する現象である。
 だから、「ちょっと床ずれで~」といった感じで気軽に相談されると、むしろビックリしてしまう。
 なにしろ、皮膚組織が死んじゃってる状態という事だから。
 そのため、「床ずれじゃない」と分かってホッとしてしまったのはナイショだ(^_^;)
 患部はカサブタのようになっていて、痛くはないものの痒いそう。
 人間に「痒み」を感じる神経は無く、脳が「弱い痛み」を「痒み」として認識している。
 そういう意味では、「痒み」を軽視もできない。
 自宅には『クロマイP軟膏』があり、3日ほど使っていても良くならないという話だったけど、それも詳しく聞いてみると、汗疹だと思い制汗パウダーを併用していて、しかも患部を全く保護していないと分かった。
 それはまず、『クロマイP軟膏』を単独で使って、患部は下着と擦れないようにガーゼを当てて保護しましょうと提案。
 ガーゼと固定するための『スキナゲート』を、お買い上げ頂いた。

 お客様から、かすみ目と疲れて目の相談を受け、価格と効き目に関連は無いことを説明しつつ、あまり安いのも不安そうだったため、『スマイル40EXゴールド』を案内し、クールの方を使って頂くことになった。
 そして、成人の娘さんの肩こりについても相談を受け、勉強をしていて肩がこるというものの、温めても駄目だったという。
 一般的な肩こりは血行不良だったりするから、『独活葛根湯』で上半身を温めてやれば改善することが多いのだけれど、『コリッシュ』(治肩背拘急方)を案内してストレス性の可能性をお話したところ、普段の勉強というよりも試験前に酷くなるようだということで、試して頂くことになった。

 肩こりの相談で来店したお客様は、病院で『ロキソニン』と『葛根湯』が処方されたものの、『葛根湯』を飲むと背中が痛む感じがするという。
 その事については、友人からは胃が悪いのではないかと指摘されたそうな。
 おおっ、その友人は只者ではありませんね(`・ω・´)!!
 するとお客様が、キョトンとした。
 しまった、反応が芝居がかり過ぎたか。
 つい、演劇をしていた頃の癖がσ(^◇^;)。
 お客様としては、どうして友人がそう言ったのか分からない様子で、そのこともあって相談にいらしたようだ。
 人間の生命活動は、複雑な化学プラント工場による奇跡の連続によって維持されていて、それこそ「生命の神秘」と呼べるほど。
 しかし、あまりに完璧にするのには無理があるのだろう。
 生きることにリソースを割いて、点検業務は案外と手抜きをしていたりする。
 その一つが、「痛み」の取り扱い方。
 世の中には、『無痛症』という病気を患っている人もおり、その人は痛みというものを一切感じない。
 一見良さそうだが、転んで骨が折れても何も感じない。
 どこかに強く打ちつけて内出血を起こしても、打ちつけたことすら気づかないから、生命の危機にさらされる。
 つまり、痛みを感じるというのは体の不具合を知らせる大事な機能なのだが、その信号を受け取る脳の方では、あまり信号の種類を区別しない。
 信号の種類を区別しないもんだから、信号の発信元の特定もしない事がある。
 要するに、「痛む場所が悪いとは限らない」のである。
 そう、頭痛がするからといって頭が悪い訳ではないのだ。
 ………って、あれ?
 なんか、色いろんな意味で変な言い回しになってしまった(笑)
 とにかく、脳からは内臓の位置情報なんか認識していないうえ、内臓には痛感神経が無いため、内臓に不具合が起きると近くを通っている神経が代わりに感知し、時には体表部近くの皮膚領域の神経が脳に異常を伝える。
 これを「関連痛」と言い、私が肺炎になった時には肩の痛みとして感じた。
 咳が出ず、熱も微熱だったもんだから全く肺炎とは気づかずに、インドメタシン製剤の『バンテリンクリーム』でも塗ろうかと思ったくらい。
 でも、トイレに行こうとしたら立ち上がれず、その時には明確な言葉も喋れなくなり、奥さんに「きゅうきゅうしゃ……」と呟くのがやっと。
 でも、奥さんは事態を把握できず(私が明確に喋れなかったため)、電話のところまで這いずってみせて、ようやく異常に気がつき救急車を呼ぶことになった。
 あとで考えると、家に『バンテリン』や鎮痛剤が無いおかげで助かった気がする。
 うちは普段から鎮痛剤のたぐいは常備しておらず、いわば「買いに行けるかどうか」を症状の軽重を測る物差しのようにしていた。
 夜中でなければ近隣にドラッグストアーがあるし、朝が来るまで耐えられないほどの痛みなら迷わず救急車を呼ぶ事態だと想定していたので。
 でも、もし鎮痛剤があって効いてしまったら、一時的に安堵してしまい、さらに悪い状態になっていたかもしれない。
 うちの奥さん察しが悪いから、私が寝たままでも気にしないだろうし(;´・ω・)
 ………話が逸れ過ぎた。
 とにかく、お客様は痩せ型で声の張りが無くて、もともと胃は弱いというお話だったので、『ロキソニン』も『葛根湯』も胃への負担が大きいはず。
 薬の影響で起きた胃の不具合を、脳が背中の痛みとして誤認していると考えられる。
 胃が弱くて『葛根湯』が使えない人には、『コリッシュ』(治肩背拘急方)の方が適応するので紹介してみたところ、購入して頂くことになった。

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