医療はギャンブル!? 人間にできるコトは、トライ&エラーです

 お客様がフェルビナク製剤の『ゼノールエクサムSX』を購入されるさいに、痛み止めとして中ぐらいで良いか尋ねると、強いのかと逆に訊かれたため、成分によって鎮痛効果と浸透力が異なり、注意するべき持病なども違うことを説明した。
 しかし、症状や用途について教えてもらえず、とりあえずフェルビナク製剤は喘息がある場合には避けた方が良いことを伝えた。

 若い常連のお客様が鼻炎薬の棚で系統の異なる薬を比較していて、さらに風邪薬の棚も見ていたので気にかけていたところ、『アレジオン』と『エスタック総合感冒薬』をレジに持ってきたのでヒアリングしてみた。
 主訴は鼻炎で、鼻炎薬の違いを説明すると、すでにアレルギー性と思われる症状が出ていて鼻汁が鼻の奥に溜まっている感じがするとうので『アネトンアルメディ鼻炎錠』を紹介したけれど、鼻汁が喉に落ちてくると分かり『チクナイン』(辛夷清肺湯)をお使いいただくことになった。
 鼻炎薬には、風邪やアレルギーに関係無く症状をギュッと抑えるタイプと、花粉症などのアレルギー反応が起きないようにする予防向けのタイプとがある。
 『パブロン鼻炎カプセル』や『新コンタック600カプセル』などはギュッと抑えるタイプですぐ効くのに対して、『アレジオン』や『アレグラFX』などはアレルギー反応を起こさないようにするタイプなため、症状が起きてから使っても効いてくるのに一週間近くかかるケースもあり、用途からしても一日単位ではなく数週間単位で連用しないと意味が無い。
 また、即効性のあるタイプにしても鼻水を止めるのは体液の出る穴を締めれば良いから容易なのに対して、鼻づまりは鼻の奥の血管が炎症して膨らんでいる状態で、現代薬は炎症を抑えるのは苦手だから、生薬の入った『アネトンアルメディ鼻炎錠』や、漢方薬のほうが鼻づまりには効果的。
 さらに予防タイプの方にしても、鼻水は早く異物を外に出そうとする早発反応なのに対して、鼻づまりは異物が奥に入り追い出せなくなったと身体が判断して、ウイルスや菌を倒したり患部の修復をする材料を運ぶのに血流を良くしたりするために炎症を起こす遅発反応で、遅発反応には『アレグラFX』の主成分であるフェキソフェナジンより『アレグラ』のエピナスチンのほうが優位というデータがある。
 他の薬もそうだけれど、鼻炎薬はパッケージに書いている効能だけでは選ぶのが難しいんである。
 だから詳しいヒアリングが必要で、これが頼まれ物だったりして本人と連絡が取れないと途方に暮れることとなる。
 ちなみに鼻の症状は、漢方的には喉を通じてつながっている胃の不具合と連動すると考えられ、内臓が冷えていると鼻水に、胃炎などを起こしていると鼻づまりとして現れるので、どちらにしても消化の良い食事に切り替えるのが養生法。
 お客様にも、胃に不具合が起きている可能性をお話したところ、胃痛もするとのことだった。
 鼻汁が喉に落ちてくるのは胃が弱っている証拠で、『辛夷清肺湯』は胃薬に近い処方内容だから、少なからず効果を期待できるはずである。

 以前に頻尿の相談を受け『八味地黄丸』を使っていただいたお客様が再訪し、「すぐに効いた」と教えていただいた。
 他に血糖値を下げる市販薬を尋ねられ、『糖解錠』という物があるものの、うちの店には置いていないことと、漢方薬ではなく伝承による民間薬が許可を得て販売されている薬なため、効果は未知数であることを伝えると、何かをネットで見たようだが、その名前は覚えていなかった。
 お客様は、病院の検査で空腹時の血糖値が高かったそうなのだが、その後には別な病院に行ったというため、検査というものは推移の確認が大事だから、同じ病院に通った方が良いとお話した。
 すると、前の病院に行くと5千円も薬代がかかるというので、薬自体は断れますとお話したけれど、前回に適切な薬を当てていなかったことに不信感がある模様。
 とはいえ、私が案内した『八味地黄丸』が効いたのは、ある意味偶然に過ぎない。
 何故なら人間の身体は機械ではないから、部品交換をすれば直るというように、特定の薬がピタリとハマるものではない。
 どの薬が効くか選ぶというのはいわばギャンプルで、しかし不確定要素がありながらも勝率を上げるためのノウハウはある程度確立されているから、合わなかったら再検討していくのが勝利への道となる。
 そういう意味では、同じ病院に行ったほうがデータの積み重ねができて敗因の検証が行えるから、安易に病院を変えないほうが良い。
 新しく来られた方の病院では、前回のデータを知らないままギャンブルをすることになり、勝率が上がらない。
 もし病院を変えるのであれば、紹介状を書いてもらうこと。
 一般に「紹介状」と言われているが、ただの手紙とは違い「医療情報提供書」というのが実態で、受け入れる側の病院はそれまでの診療データを得て、勝率を上げることができる。
 お客様からは、他に青汁が身体に良いか尋ねられ、ほうれん草や小松菜などを食べない人からすれば良いとお話すると食べるそうなので、健康食品などは自分が食べていない物を選ぶよう勧めた。

糖解錠

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