風邪薬の「熱かぜ」「鼻かぜ」「咳かぜ」の区別は意味が無い? 咳止め成分が効かない咳もある

 お客様が、抗炎症成分のアズレンと患部を冷やす桔梗を合わせた『マードレトローチ』と、やはり抗炎症成分のトラネキサム酸にステロイドに似た骨格を持つグリチルリチン酸を合わせた『ペラックT』を一緒に購入されるので、念のため別な人が使うのが確認すると、前者をのど飴のつもりで選んでいたと分かり、片方だけでも充分と考えられることと、医薬品だから1日の回数制限があり飴の感覚で使ってはいけないことをお話した。
 お客様からは併用は駄目なのか訊かれ、使えるけど費用的にモッタイナイことと、もし喉の痛みが強くて併用するのであれば、やはり炎症に効果のあるイブプロフェン製剤の鎮痛剤のほうが効果的と伝えた。

【第2類医薬品】マードレトローチ 18錠

 高齢のお客様に、外出時に咳が出ると睨まれるからと相談され、娘さんからは夜中にも咳をしてると言われたそうだが、こうしていても咳き込んでいる様子は無い。
 血圧などの薬は使っていないという一方、歩くだけで息切れする様子だったため上半身に保水する『麦門冬湯』を提案すると現代薬を求められたので、非麻薬性の咳止め成分の『プレコール持続性カプセルカプセル』を案内したところ、両方を購入された。
 あれ~?(。_゚)(゚_。)コケッ
 お客様がお帰りになってから、喉を潤すことを考えて『麦門冬湯』を提案したのだから、咳止め薬ではなく『ストナ去たんカプセル』の方を勧めれば良かったかもと思った。
 どうしてこうなった。

 お客様が『パブロンメディカルN』をレジに持ってきたけれど、咳は無く主訴は鼻水とクシャミというため鼻炎薬を提案すると、その前には『ベンザブロックS』を使っていたとのことだった。
 確かに、どちらも鼻の風邪をパッケージでアピールしているけれど、実のところ風邪薬は何をどう選んでも必ず咳止め成分が入っている。
 そして咳止め成分の多くは、覚醒剤系と麻薬系。
 覚醒剤系で喉を開いて呼吸をしやすくし、麻薬系で咳をする中枢神経を抑えるとされているものの、近年の研究によれば急性の咳には副作用のリスクを取るほどの効果は得られないとされており、病院では処方されない傾向にあり、去痰剤のほうが選択されるという話を製薬メーカーの中の人から聞いた。
 でもって副作用はいえば、覚醒剤系は血圧を上げ心臓に負担がかかり、麻薬系の方は心臓を始めとした内臓機能の低下を招いて、保水機能も狂わせるため体内が乾燥し咳の原因になってしまう。
 誤解を恐れずに言ってしまえば、咳が出ていても役立たずで、咳が無いならなおさら不要。
 風邪薬を飲むとすぐに治ると答えるお客様が少なからずいるのだけれど、「覚醒剤系による興奮作用」と「麻薬系による認知機能の低下」のコンボで「治ったと錯覚している」可能性が高い。
 もう少しオブラートに包んで、そんな咳止め成分のリスクを説明したところ、少しは咳があるようだったため鼻炎薬も咳の面倒を見てくれることをお話したものの、風邪薬が欲しいようだったため咳止め成分の入っていない、ほとんど唯一と言っても良い『PL錠』を案内し、そちらをお買い上げいただいた。
 そして、そもそも鼻水は内臓が冷えてるのが原因と考えられ、積極的に温かい物を飲むよう勧めたけれど、もう興味は無いようだった。
 必要と思う物を手にして、達成感を得たからだろうか。
 かといって、目的の物を先に提示しないと話を聞いてもらえないこともあるため、ケースバイケースで難しい。
 鼻水への対処は、温かい物を飲むだけではなく、しっかり入浴したり、暖かい部屋にいてもお腹周りは厚着をするといったように、体内を温める工夫を重ねるのが、薬を使うよりも重要なのだけれど。

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