医療の連携をするには、患者自身(また家族)がチームリーダーになる必要があります

 やや高齢のお客様から蕁麻疹の相談を受けたのだが、詳しく尋ねてヒアリングしてみると患部の見た目は股部白癬(インキンタムシ)のような状態で、一時的ではなく症状が起きたままだという。
 しかも全身に出ていて、痒みは無いとのことだが上半身の患部だけは痛痒いとのこと。
 一般的な湿疹は、患部と健康な皮膚の境目がハッキリしないグラデーションになっているのに対して、蕁麻疹はミミズ腫れのようになり、インキンタムシは盛り上がるというよりも境目が分かりやすい特徴がある。
 蕁麻疹なら、市販薬では内服薬の『ムヒAZ錠』が考えられるものの、お客様は病院を受診しているそうなので、そこでの治療を優先するようにとお話して、お帰りいただいた。
 皮膚疾患は見た目だけでは判断できないし、通院しているのならば担当医の治療方針を邪魔する訳にもいかない。
 もし、どうしても市販薬を使いたいということであれば、そのこと自体を担当医に相談したほうが良い。
 残念ながら、制度的に医療の連携をする仕組みが無いので、患者自身がチームリーダーとして取りまとめる必要がある。

 お客様が耳の後ろを虫に刺されたとのことで相談を受け、4段階で効果の違いを説明した。
 特に気をつけなければならないのは、剤形が異なると中身も大きく違う薬があること。
 代表的なのが、『ムヒSクリーム』と『液体ムヒS』で、前者は一番弱く、後者はステロイド剤が入っていて一段飛ぶくらい強い。
 その間には、痒み止めな局所麻酔が加わった『ウナコーワクール』が入る。
 ちょうど値引きになっている『マニューバ EX11』が、『ムヒアルファEX』や『ウナコーワエース』と同じくステロイド剤のランクも一つ上がる一番強い薬であるため案内してみると、購入された。
 皮膚疾患への対応は、初期に強めの薬を使った短期決戦からのステップダウン方式が主流。
 ステロイド剤を怖がって弱い薬から始めてしまうと、治るまでに時間がかかり、患部を掻いたりして傷つけると痕が残ってしまうからだ。
 まずは強めの薬で体感的な症状を抑えて、症状が軽減するのに合わせて薬も弱めの物に落としていく。
 お客様にレシートを置いて行かれそうになり、『医薬品副作用被害救済制度』があることを説明して、お持ち帰りいただいた。
 副作用が現れて入院が必要になった場合に費用を請求するのには、購入店から証明書を発行してもらわなければならず、当然のことながらレシートが無いと駄目なので。

医薬品副作用被害救済制度

医薬品副作用被害救済制度

 夫婦のお客様が『イボコロリ』と『ウオノメコロリ』を見較べていて、ご主人が他の売り場へと立ち去り、奥さんが『イボコロリ液』をレジに持ってきたので、液剤は『ウオノメコロリ』と内容が異なることを説明した。
 絆創膏タイプはどちらも同じなのだが、液剤は『ウオノメコロリ』に皮膚を柔らかくする成分が加えられている。
 ウオノメは芯を持ち、患部が固くなるからだろう。
 今回の患者は6歳の子供で、病院では液体窒素による凍結療法をしていたそうだが、子供が痛がるため『イボコロリ』の液剤を使っているとのことだった。
 しかし患部は手なので、主成分であるサリチル酸は皮膚を腐らせることで患部の新陳代謝を促すという仕組みからするれば、目や口などを触ってしまうリスクがあることをお話したら「足以外に塗っては駄目なのか」と訊かれて、そもそも7歳未満は年齢制限に引っかかることを説明すると、パッケージにも書いてある注意事項を読んでいなかった。
 医師に凍結療法を辞めたいと伝えたことは無いそうだが、凍結以外はやってくれる病院が無いとも言っていて実際の背景は良く分からなかった。
 小さい子供が凍結療法を痛がるのは珍しくないから、希望すれば他の治療法をしてくれるはずなのだけれど……。
 まずは担当医に相談して、もし本当に他の治療法をしてもらえないようであれば、担当医から他の病院を紹介してもらうか、先に他の病院を探してから紹介状を書いてもらうよう勧め、本日はキャンセルとなった。
 紹介状を頼んだら医師に嫌がられるのではないかと心配になるかもしれないが、紹介状を書く方にも診療報酬が入るから、まず心配は必要無い。
 もし渋るようなら、それは病院経営のことを考えない馬鹿であるから相手をする必要も無い。
 紹介状というのは単に紹介するだけの手紙ではなく、『医療情報提供書』というもので、診断や施した治療の内容を相手の医師に教える内容となっており、紹介状が無いと次の医師もまた同じ治療法を選択することにもなりかねない。
 実際、自分で病院を移ったという患者さんが、前の病院と同じ薬を処方されて、「効かないから」という理由で市販薬を買いに来店されるケースは少なくない。
 紹介状を書いてもらって病院を移っていれば、あるいは薬が効かなかったことを元の医師に伝えていれば、そういうことを防げるんである。

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