買い置きの市販薬は、使う前に販売店に電話で相談するのが理想だと思います

 お客様が『コルゲンコーワIB錠TXα』をレジに持ってきたけれど、咳止め成分の問題点をお話したところ、置き薬にするというので症状別に薬を揃える方法を提案した。
 何が問題かといえば、咳止め成分の多くは覚醒剤系と麻薬系とに大別され、しかも一緒に入っている総合風邪薬が多い。
 覚醒剤系のやることは気管支を拡張して、呼吸をしやすくすること。
 ところが人間の体は機械ではないから、気管支だけを都合良く拡張することができず、血管も拡張して血流が激しくなり高血圧の人には良くないし、心臓への負担もかかるうえ、覚醒作用が回復していない身体を治ったと錯覚させ、自身も体に負担をかけがちになる。
 麻薬系のやることは、中枢神経に働きかけて咳を抑えるのだけれど、こちらも都合良く咳だけなんてことはできないため、心肺機能までも落としてしまい呼吸は浅く、心拍数は少なくなる。
 ここで思い出してほしいのだが、先述したように覚醒剤系により血管が拡張され血流は通りやすくなるのに、出し入れの調整をする心臓の方は麻薬系のせいで働きが悪い状態になるのだ。
 さらに、中枢神経が抑えられると体内の保水機能が狂う。
 人間は成人で体重の約60%が水分とされており、保水機能が狂うと乾燥しがちになって便秘を起こし、また乾燥性の咳を招くので、咳止めの副作用が咳として現れるなんてことにもなりかねない。
「薬はリスク」という言葉があるように、薬を使うときには期待する作用と副作用を天秤にかけ、メリットが大きいと考えられる場合に用いる物にもかかわらず、咳が出ていないのに咳止め成分を体に取り込むというのは、副作用だけを享受することになる。
 また、鼻炎を抑える成分も体内を乾燥させたりと身体機能を落としがちであるため、副作用が重なるという問題も総合風邪薬は抱えている。
 実のところ総合風邪薬は、解熱鎮痛剤と鼻炎薬と咳止め薬の3種類を基本としていて、そこに喉の痛みを抑える成分や痰を出しやすく成分を足してあることが多く、それでいてこれらの症状がいっぺんに現れるというのは案外と少ない。
 喉の痛みから始まったり、鼻の症状だけだったりするほうが普通だから、置き薬も「解熱鎮痛剤」「鼻炎薬」「咳止め」というようにバラバラに揃えておき、起きた症状に合わせて使っていく方が体にも財布にも優しい。
 しかし、今回のお客様が風邪薬を希望されたので、市販の風邪薬の中では唯一と言って良いほど咳止め成分の入っていない『PL錠』を紹介し、そちらをお買い上げいただいた。

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 お客様から風邪薬を求められたけれど、患者は成人の娘さんで、発熱と鼻炎に喉の痛みがあるものの咳は無く、家に鎮痛剤も置いていないといいうため、発熱と痛み止めには解熱鎮痛剤の『イブ』を使って、鼻炎は体を温めることにより対処するか、咳止め成分の入っていない風邪薬の『PL錠』をと紹介したところ両方を購入された。
 現代医療としては鼻炎のうち、鼻水は最初にウイルスなどを排除しようとする早発反応で、鼻づまりは鼻の奥の血管が腫れて炎症することにより外敵と戦ったり患部を修復しようとする遅発反応とされている。
 でも漢方的には、鼻水は内臓が冷えると起きる症状で、鼻づまりの方は暖かい空気が上半身に昇って降りてこられずに篭もると起きると解釈して、温かい物を積極的に飲食したり入浴したりすることで下半身、主にお腹周りを温めて熱を循環させると鼻の症状は治まると考える。
 今回の場合、余計な成分の入っていない無印の『イブ』であれば、『パブロン鼻炎カプセルα』などの鼻炎薬と併用か、漢方薬では上半身を冷す『銀翹散』を用いるという方法も考えられる。
 私たちはお客様の話を聞きながら、頭の中で複数の薬を候補に上げて取捨選択していき、その過程では普段の仕事の内容とか家でお風呂に入っているか、食事はどんなメニューが好きかといったことからも、「コッチが合うかも」「コレは避けよう」と判断するので、代理で薬を買いに来る場合には本人に連絡が取れるのが望ましい。
 お客様は、他にも『OS-1』を購入されので、熱が引いたら不要なことを伝えた。
 また、食欲があっても内臓はダメージを受けてるかもしれないので、ゆるい食事にして量を控えるよう伝えた。
 お帰りになった後で電話が入り、『イブ』と『PL錠』を併用して良いか訊かれたので、喉の痛みがつらく鼻炎が鼻づまり寄りならば『イブ』を単独で、鼻炎が鼻水よりならば『PL錠』を使うようお話した。
 『イブ』の効能には書いていないから目的外で使うことは勧められないが、主成分であるイブプロフェンは炎症も抑えるので、鼻の奥の血管が炎症して腫れている鼻づまりには効果が期待できるし、そういう治験データもある。
 発熱と喉の痛みがあるのであれば、そちらは効能書き通りだから、ついでに鼻づまりの面倒も見てもらえるという訳だ。
 一方、鼻水のほうが顕著なようなら『PL錠』に入っているプロメタジンメチレンジサリチル酸塩が、抗ヒスタミン作用と抗コリン作用があり、同じ鼻炎症状でも鼻づまりより鼻水を抑えるのが得意という次第。
 こうして、使う前に販売店に電話で確認してもらえるのが、市販薬の販売形態において理想的だと思う。

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 お客様からアセトアミノフェン剤剤の『ノーシンAC』を求められ、うちのお店には置いておらず『タイレノール』も品切れとなってしまったため、同じアセトアミノフェン製剤の『バファリンルナJ』を紹介したところ、いつもは奥さんが頭痛に『ロキソニン』を使ってるとのことだった。
 新型コロナウイルス対策にアセトアミノフェンが良いというのはデマであることをお話したうえで、なぜアセトアミノフェンを選ぶのかという目的を考えるのが大事と伝えた。
 また、頭痛にも種類があることと鎮痛剤も成分によって効き方が異なるため、本人が相談した方が良いとお話したところ、本日はお帰りになった。
 本人と連絡さえ取れれば、こういうすれ違いも減らせると思うのだけれど。

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