咳にも乾燥性と神経性があるように、薬も「強い」「弱い」ではなく目的による使い分けを考えます

お客様がまっすぐ漢方薬の棚へ向かい『半夏厚朴湯』をレジに持ってきたけれど、使うのは初めてというためヒアリングしてみると、主訴はだそうなので、特に神経性のや喘息に適してることをお話した。

神経性の咳というのは、激しく咳き込むというよりは喉が締まって、息は吸えるけど吐きにくいといった息苦しさや、「喉に梅の実が引っかかってる」と喩えられることのある「梅核気(ばいかくき)」と呼ばれる状態のこと。

痰が引っかかってる感じがするのに痰は出ないような、咳払いが多い人にも適応し、受験生とその親の緊張を解いたり、面接とか発表会で登壇するというときにも使える。

するとお客様は、病院から抗生剤と去痰剤が処方されたそうだが、薬の内容は不明で、咳止めが出なかったため買い求めようと思ったそう。

抗生剤が体内をさせている可能性も考えられ、それで喉の違和感や咳があるとするのならと説明し、上半身を潤す『麦門冬湯』を紹介すると、家にあるかもというので家族に電話をしてもらったところ、無かったとのことで『麦門冬湯』を購入された。

体内がしてるのは、他に胃炎を起こしてる可能性もあるので、胃に優しい食事をするよう勧めた。

お客様から鎮痛剤の棚を尋ねられて売り場を案内したところ、強い薬を避けてアセトアミノフェン製剤の『タイレノール』を使いたいというため、売り場を案内したうえで、薬は強い弱いではなく体の中で何をやっているかが大事なことを説明した。

例えば、一口に「血圧を下げる薬」と言っても、血液をサラサラにしているのと血管を拡張しているのとでは、やってることが違うから注意事項も異なる。

鎮痛剤では、アセトアミノフェンは中枢神経に働きかけて痛みを感じなくさせるものの、神経の先っちょである末梢神経への効果が少ないため炎症を抑える力も弱い。

反対に、末梢神経の炎症を抑えるのが得意なのはアスピリン製剤で、肩こりや歯痛に向いており、市販薬で有名なのは『バファリンA』である。

イブプロフェン製剤の代表の『イブ』や、同じプロピオン酸系のロキソプロフェン製剤の『ロキソニン』は、痛みの信号を発する末梢神経と、その信号を受け取る中枢神経の両方を抑えてくれる分だけ、効きが良いとは考えられる。

ただし、痛みの伝達物質であるプロスタグランジンは胃を保護するよう指示するホルモンでもあるため、痛みを止めると胃の保護機能も止めてしまう。

痛み止めが胃に悪いと思っている人は多いと思うが、胃に悪い働きかけをしているのではなく、痛みの伝達を止めることが胃の守りを弱めてしまうことになるのだ。

だから、薬を「強い」「弱い」で選ぶことに拘泥してしまうのは本末転倒でもある。

お客様の主訴は肩こりとだそうなので、希望通りのアセトアミノフェン製剤に緊張を解く芍薬を加えてある『ハッキリエース』や、血圧が関係し肩こりと連動したに用いる『釣藤散』に鎮静剤を合わせた『奥田脳神経薬』を紹介したところ、ようやく詳しく相談してもらえ、アセトアミノフェン製剤とアスピリン製剤に鎮静剤を加えた『エキセドリンプラスs』』を紹介すると、そちらを購入された。

ところが、お会計を終えてから心療内科で肩こりにも使える薬が処方されていることが分かった。

ズゲッ(゚д゚;)!?

あうっ、今さらながらキャンセルしてもらいたい……。

心療内科の処方された薬と、鎮静成分の系統が被ってしまう可能性がある。

どんな病状で心療内科を受診しているかわからないから、それでなにかパニック症状などを起こすようだと困る。

仕方がないので、に成分表示を貼って担当医に報告をするようお願いした。

そしてお客様には、を持ち歩くよう勧めた。

病院に連れて行かなくても、常日頃から持ち歩いてもらえれば市販薬を買うときにも参考になるし、出先で事故に遭った場合の救命処置にも影響するうえ、大規模災害によって避難生活をしなければならない場合には、医師の診察を受けずとも薬を受け取れる特例がある。

「おくすり手帳と個人情報の使い方」

お客様から高齢の母親の褥瘡(床ずれ)の相談を受け、「粉の市販薬がある」と医師から言われたというのだけれど銘柄は不明だった。

せめて成分が分かれば探せないこともないのだが、どうしてお医者さんも成分名で伝えてくれなかったのか。

そしてお客様は昔から使われている『コーフル』もどこにもないと言われたので、昔とは「床ずれ」の考え方が変わり、寝床と擦れたのではなく自重で細胞が潰れた状態であることを説明した。

『コーフル』は殺菌剤と、患部が服などと擦れないようにする酸化亜鉛が入ってるだけなので、今となっては使いどころの無い薬である。

あっ、もしかして『コーフル』のことなのか?

確かに、酸化亜鉛はベビーパウダーなんかの主成分でもあるけど。

いずれにせよ、うちのお店でも取り扱っていない。

お客様には、薬を調剤する薬局は病院を受診していなくても相談できることをお話して、本日はお帰りになった。

調剤している薬局であれば、受診している病院とも連絡が取れるはずである。

若いお客様がリップクリームを購入されるさいに、唇の荒れは空気のだけが原因ではなく、寒さに対抗しようと体が熱を出し、胃炎などを起こして体内のも関係することを説明した。

嫌な喩え方としては、胃壁が唇で表になっているようなものなので、特に唇が荒れる日は胃に優しい食事をするようにと伝えた。

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