大手製薬メーカーの陰謀(嘘)

 お客様から睡眠薬が欲しいと注文されたけど、市販には睡眠改善薬しか無いことをまずは説明。
 台湾人だそうで、日本に呼び寄せた高齢の母親が台湾で処方されていた睡眠薬を忘れてきてしまったという。
 ありゃん、それは困りましたねぇ(;´・ω・)
 ただ、不眠症と一口に言っても、寝るまでに時間が掛かる寝付きが悪いのと、中途覚醒や早期覚醒といった短時間睡眠の場合と、寝てもウツラウツラとして眠りが浅いのとでは、原因も対応も変わる。
 もちろん現代薬では、いずれに対しても眠気を催す成分が入っていれば、作用機序は違っても似たような効き目だから、相性さえ合えばどれを選んでも大差は無いという考えたかもあるけど。
 だけど、今回のように環境が変わったことも加味すると、現代薬で良いのかという迷いもある。
 先の不眠症の例で云えば、寝つくまでに時間が掛かるのは肝臓が無駄に働き過ぎるからで、中途覚醒は腎臓機能が低下しており、眠りが浅くなるのは胃に不要な水が溜まる胃内停水が原因。
 そのうえ、歳を取ってくると心臓の機能も低下し、心臓の場合は機能の低下を過活動で補おうとするため動悸が激しくなり、これがまた寝つきを悪くしてしまう。
 あくまで一時的に睡眠補助剤を使うのは良いとして、原因とつながっている体内の異常は見過ごさないように注意したいところ。
 お客様に本人と連絡を取ってもらい確認したところでは、寝付きが悪いのと浅いのとの複合というお話だった。
 ひとまず本国に帰れば睡眠薬はあるのだから、あくまで一時的な用達で良いだろうと『ドミーリオ』と『ウット』を案内したうえで、慣れない土地に来たことでの心身の疲労の可能性をお話して、『ナイトミン』(酸棗仁湯)も紹介した。
 『酸棗仁湯』は、夜勤をされる人や高齢者に向いていて、「疲れ過ぎて寝られない」ときに適応する。
 人間は疲れが極限に達したり、加齢により体が弱くなると防衛機能が働くのかセンサーが鋭敏になり、ちょっとした物音に反応したりして寝つきにくくなってしまうのだ。
 自分の心臓の鼓動さえ気になってしまうという人は、お試しあれ。
 お客様は『酸棗仁湯』に興味を持たれたが、本日のところは『ドミーリオEX』を試して頂くことになった。
 あと、詳しく本人について訊いたところでは、昼寝はされているようなので、夜に眠れないことを気にし過ぎると余計に体の負担になるため、ノンカフェインの温かいお茶などを飲んで夜を過ごす方法を提案した。

 やや高齢のお客様から、『コンドロイチンZS』とサプリメントとの違いを質問された。
 医薬品とサプリメントの比較って、難しいんだよねぇ。
 医薬品のほうが治験データを取っていて信頼できるという考え方もあるけど、治験データを取って医薬品として申請するのには莫大な費用が掛かるから、ある程度の効果と安全性を確認したら、あえて健康食品として売り出すということもあるため、評価しづらい。
 また、関節痛の原因は骨だけの問題ではなく、神経や血流といったことも関係するため、本格的にコンドロイチンを摂取するのであれば、一度は病院で診察を受けてから検討するのが良いだろう。
 そういうお話をしたら、実はサプリメントのグルコサミンをすでに飲んでみたら膝の痛みを感じなくなり、使い切ったため医薬品に変更するかを迷っているそう。
 ふむぅ、そういうことであれば強くは勧められない方法だけど、そのサプリメントをやめてみて症状が再発するかを観察してみるという手はある。
 例えば、よく目に良いとされているブルーベリーの効果は、眼科医によれば確かにあるそうで、ただし摂取をやめると効果も無くなる一時的なものなのだというのだけれど、それはつまり体感できるという事。
 結果が判明したら、教えてください(o ̄∇ ̄)o←マテ
 お客様はゴルフを良くしていて、打ちっぱなしにも通っているというから、運動自体が歳相応に負担になっているとも考えられるため、『牛車腎気丸』を紹介してみた。
 本日のところは、サプリメントのグルコサミンを購入された。
 そうそう、今回の件で思い出したけど、以前に某製薬メーカーの学術部員さんから、とある市販薬の開発苦労話を聞いたことがある。
 医療業界の陰謀論を唱える人は、厚生労働省と大手製薬メーカーが結託して好きなようにしてるみたいなことを喚き立てているけど、そんなことは無いんである。
 その市販薬を『製品X(仮名)』とすると、以前から主成分を1錠に10mg含有して販売しており、「症状A」に効くものとして売っていた。
 そして、1錠への主成分の含有量を倍の20mgにして治験データを取ったところ、「症状A」に対しては頭打ちで優位な差は確認できなかったものの、「症状B」と「症状C」にも効果があることが分かった。
 そこでメーカーは、いずれ「症状B」と「症状C」に対する効能を申請するものとして、先に市場を開拓しておくために「症状A」の効能で20mgの薬を発売しようと厚労省に申請したら突き返されてしまったそうな。
 今まで10mgで効能があることが確認されているのだから、20mgにする必要は無いと。
 しかし、実は同じ主成分の薬は医療用では、すでに20mgが主流になっている。
 だから、安全性さえ証明できれば市販薬にも適応できるはずとメーカー側は考えていた。
 しかも、小さい製薬メーカーからはすでに同じく20mgの物が発売済みなのだ。
 なのにどうして申請が通らないのかといえば、書類上では「20mgにする必要は無い」ということだったけど、厚労省の担当者からは「大手だから自重して」というようなことを言われたそう。
 つまり、大手が市場を開拓するのを目的に、やたら主成分の濃い製品を発売したら、中小のメーカーまでこぞって同じすることをするから、それでは医療行政に問題が生じて困ると。
 で、研究チームは改めて治験データを取り直し、今までは10mgと20mgを使った人を対象に「症状が改善した人と、やや改善した人と、改善しなかった人」での比較をしていたのを、さらに踏み込んで「症状が改善した人」の中から「10mgを使用した人」と「20mgを使用した人」を比較して、20mgを使用した人のほうが10mgを使用した人よりも約10%だけではあるけれど、優位性が確認できたという資料を付けて再申請し、やっと発売にこぎつけたという。
 そして学術部員さんの話では、ここまでやったのだからてっきり一緒に申請した「症状B」と「症状C」の効能の許可も下りると思ったら、結局「症状A」の効能でしか許可を取れなかったそう。
 ここがこの話の面白く、また市販薬の効能書きだけを見ているだけでは分らない事なんだけど、そもそもの主成分を開発したメーカーが「症状B」と「症状C」での効果を認めていないから駄目だと判断されたという。
 正確に言うと、主成分の開発元は外国の製薬メーカーで、その主成分で儲けて開発費も回収済みなため、新たに莫大な費用を掛けてまで、同じ主成分で別な症状の薬を売り出す気が無く、その費用を肩代わりするとかでもしないと協力を得られないらしい。
 もし費用を肩代わりして新たな効能を証明したとしても、今度は費用を肩代わりしたのに開発元のメーカーの主成分を使う訳だから、納入してもらう代金は当然必要だし新たな製品の製法を教えない訳にもいかないしで、そこまでしてでも売れる算段が無いことには実現することはできないという訳。
 少なくとも、厚労省の方針が変わらない限りは。
 なので、本当は「症状B」と「症状C」に効くとは分かっていても、市販薬としては「症状A」についての効能しか添付文書にもパッケージにも書けない。
 まぁ、もっとも素人が自分で調べただけで、薬の応用をするのは危ないからしない方が良いんだけどね。
 それでも興味があれば、効能が違うはずの薬同士に同じ成分が含まれていたら、そのへんの関係を考えてみると面白いし、災害時などの非常事態には役に立つこともあるので、薬を買う時には効能書きだけでなく成分表示にも目を通してみてください。
 そして、使った薬はお薬手帳などに記録しておくのをお忘れなく。

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