『お薬手帳』を持ちましょう

 病院からの処方箋を持ってきた患者さんに薬を出した時に、ウチのお店が初めての人だったので、『お薬手帳』を持っているかを確認した。もし持っていなければ渡さなければならない。
「持っています」との事だったので、「ではこのシールを貼っておいて下さい」と薬剤名を印刷したシールを渡したら(手書きでも良い)、「このお店のはもらっていません」と言われた。
 んん~?
 どういう事かと思って尋ねてみて、ギャッ!!Σ( ̄□ ̄;)
 この患者さん、訪れた薬局ごとに『お薬手帳』をもらっていて、それぞれにそのお店でもらった薬剤名を書き込んでいる事が分かった。
 『お薬手帳』は、いわば患者さん自身が携帯するための“薬歴簿”である。
特に複数の病院にかかる場合や複数の薬局で薬を購入する場合、医療機関は互いに患者さんに渡した薬の情報を知りえようが無い。しかし、『お薬手帳』に時系列ごとに服用している薬剤名が記帳されていれば、それを見る事で副作用などを防ぐ事ができる。
 それと、あの阪神・淡路大震災の時には多数の医療関係者がボランティアで駆けつけたが、実際には怪我人や病人を目の前にしながら、その人がどんな持病を患っているのか、どんな薬を日常的に服用しているのかが分からないため、ほとんど医療行為を施す事ができなかった。しかし、この『お薬手帳』を持っていれば、いざという時に適切な治療を受ける事が可能となる。
 それが複数の手帳に別々に記帳していて、持ち歩かずに家に置きっぱなしではなんの意味もなさない。
 詳しく訊いてみると、今までに『お薬手帳』の意味や活用方法を説明された事は無いという。
 病院の方はちょっと分からないが、薬局の方は『お薬手帳』に薬剤名を書き込んであげたり、ウチのように薬剤名を印刷したシールを渡す事で、“薬剤服用歴管理・指導料”や“薬剤情報提供料”をもらう事ができる。
 ぶっちゃけて言えば、『お薬手帳』を患者さんに活用してもらう事が薬局の収入になるのだ。薬局こそ、収入UPのためにコレを活用しない手はない(笑)
 今までの薬局が情報を提供しない代わりに先に挙げた指導料や情報提供料を差し引いて料金的に患者さんの負担を軽減しようとしていたというのなら話は分からないでもないが、『お薬手帳』は渡しているのだから、おそらく患者さんから代金を徴収しているはずである。
 ううむ、他にも『お薬手帳』の意味を知らされないままになっている患者さんがいるのだろうか。
 とにかく今回の患者さんには、他の『お薬手帳』に記帳してある分を一冊に書き写すか、切り取って貼り付けて下さいとお願いした。
 テレビで衝撃映像系の番組を観ていたら、一般の人による人命救助の感動的なシーンで、奥さんが「よく助ける気になるわよねぇ。私だったら絶対命懸けてまで助けない。」と言った。
 お前なぁ……、そんな正直な。介護の仕事をしているクセに(苦笑)
 確かに、今回のような番組を観て感動するという事は、“自分にはできそうもない”行為だからこそ感動できる訳で、多くの人が感動したのだとしたら、やはりそれは普通にはできないと無意識に認識しているからだろう。
 にもかかわらず、時として人は他人を助ける事を半ば脅迫的に求める事があるのだから、まぁ勝手なもんである。
 確かに人を助ける行為は尊いし、賞賛に値するとは思うが、同時に“馬鹿”であるという事も忘れてはならない。
 死ぬかもしれない人に代わって自分が死ねば、それを哀しむ人もまたいるのだ。(いなかったらどうしよう………と遠い目(・_・)
 いくら人を助けたからといって、遺族にとっては誇りにはなっても慰めにはならないだろう。
 また、勇敢な“馬鹿”がいると、先に述べたように脅迫的に人助けを求める“馬鹿”まで現れて、生き残った人々を苦しめる事にもなる。
 西鉄バスジャック事件の時には、1人の男性がバスから脱出し、そのために犯人が激怒して女性教師を殺害してしまった。そのテレビ報道で、あるコメンテーターが「1人で脱出するなんて男らしくない」などと非難していた。事件後、この男性はマスコミの取材には一切応えず、神経症になってしまったらしい。
 池田小での児童殺傷事件では、教師がパニックになり子供たちの避難誘導が迅速に行われなかったとして非難の声が上がった。被害を免れた教師は、意見陳述で児童を守れなかったという点では自分も加害者ですと述べて、やはり精神的にまいっている様子が窺(うかが)えた。
 だがしかし、自分が死ぬかもしれない状況において、それぞれの選択を、なぜ非難されなければならないのか。
 たまたま乗り合わせただけの赤の他人を助ける事に、美徳以外の意味があるとは思えない。
 例え教え子だとしても、消防士や警察官でさえ“自己の生命・安全を守ること”と厳命されているのに、職能として訓練を受けていない教師にそんな重責を負わせる方がどうかしている。
 もし“命懸けで他人を助けなければならない”のが当たり前の社会になったりしたら、それこそ暮らしにくい社会になると思うのだがどうか。

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