お客様からサプリメントの『蜂の子』を尋ねられ、用途は耳鳴りと難聴というため、直接的な効果は期待できないことをお話した。
もちろんその効果を謳っているメーカーなどはあるし、実証実験による有効性が学会で発表されたというニュースもあるけれど、何故か研究が更に進んだという情報が見当たらない。
しかも、どういう仕組で効果があるのかとなると、「ストレスを軽減するから」なんて曖昧なもの。
もちろん医薬品の中にも作用機序が不明な成分はあるとはいえ、たとえば主作用に付随する副次的な作用、いわゆる副作用についても検証されているのに対して、『蜂の子』はその辺りも不明。
一方で、期待されているのは加齢性の耳鳴りや難聴でもあるため、お客様の年齢からすると合わないと考えられる。
それにサプリメントの問題点は、成分の効果以前に加工の信頼性が各社でバラバラな店。
消費者庁の調査によれば、体内で吸収されないまま排泄されてしまう製品が少なからずあり、それらも含めて検証されて世に出ている医薬品とは、そもそも比較のしようが無い。
そう説明して水分代謝を改善して三半規管の働きを助ける『苓桂朮甘湯』を案内したところ、この漢方薬については使ったことは無いものの、病院ではやはり水分の循環を改善する『柴苓湯』が処方されていて、効いた気がしないという。
おっと、処方されてる薬があるのであれば、下手に割り込むことは出来ない。
医師に使用感については伝えていないというため、まずは医師に相談するよう勧めた。
処方された薬が一回でも効かないと通院をやめてしまったり、効かないと感じてるのに医師に言わず、漫然と薬を受け取りながら使っていないという人がいるけれど、医師の頭には複数の薬の候補があり、「次はコッチを」と考えているものなので、使用感は伝えたほうが良い。
人間の身体は機械ではないから、特定の薬が全員に効くなんてことは無く、同じ症状、同じ効能に使う薬でも、成分によって作用機序が異なり、どれが合うかはトライ・アンド・エラーを繰り返すしか無いのだ。
それは市販薬についても同じで、よくあるパターンは効かなかった薬と同じメーカーの製品を避けて、他のメーカーの「同じ成分の薬」に乗り換えてしまい、やっぱり効かないという。
一か八かの運を天に任せるギャンブルでは勝率は上がらないから、薬の側は成分の種類や量の情報を、使う側の人間についても体質や生活スタイルなどの情報を突き合わせて、効きそうな薬を選んでいく作業が必要なんである。
お客様は、食事をするのが嫌いで、お菓子に行ってしまうため栄養不足を自覚しており、サプリメントで補おうと思ったという。
おおっ、新しい情報である。
子供の食事はちゃんと作ってるというので、お餅を雑煮にもお汁粉にもするように、お菓子のレシピで野菜などを摂る方法を提案した。
人参やカボチャなんかも砂糖で煮詰めてジャムにするのは珍しくないし、市販のお菓子でも野菜を使った商品はある。
すると玉子も食べるというから、栄養としては完璧に近く、後はビタミンCを足すだけとお話をした。
それこそ玉子は料理にもお菓子にも使われる材料で、食べる量に対する栄養量は野菜の比ではない。
というか、食べる量に対して一番栄養が摂れないのが野菜である。
野菜よりも牛肉、牛肉よりも豚肉、豚肉よりも羊肉、羊肉よりは魚介類が栄養価が高く、その頂点に君臨するのが玉子なんである。
高齢になると「健康を考えて」野菜中心の食事にする人が多いけれど、実は高齢者の骨粗鬆症や筋肉量の低下などの原因は、圧倒的な栄養不足。
それを避けるためには、玉子をメニューに加えるのが良い。
最期に、お客様から亜鉛のことを尋ねられ、確かに味覚のみならず他の感覚にも関係することをお話しすると購入された。
お客様が『チョコラBBプラス』とサプリメントの『ヘム鉄』を購入されるさいに、鉄に関して何か検診で数値が出たのか尋ねると返事が無かったため、もし貧血に使うのであれば大きく分けて三つのパターンがあることを説明したところ違う主訴と分かった。
いわゆる鉄不足による貧血は「落ちるような感覚」で『人参養栄湯』も組み合わせるのが効果的なのだが、天井が回る感覚には水分代謝を改善する『苓桂朮甘湯』が適しており、雲の上をフワフワと歩いてるような感覚だと高血圧の可能性があって『釣藤散』や『七物降下湯』が候補となる。
お客様の場合は「むずむず脚症候群」で、テレビのコメンテーターが言っていたらしく、実際に効いてる気がするとのお話だった。
現在は「レストレスレッグス症候群」と呼ばれており、厚生労働省のサイトでは夕方から深夜にかけて下肢を中心に痒みやムズムズする不快な感覚がして充分に眠れなくなると説明されており、原因は不明ながら鉄欠乏性貧血や腎不全による人工透析を受けてる人に多いという。
ただ、お客様が病院を受診したかは不明で、血流を良くしてくれる『当帰芍薬散』を提案してみたところ以前に使ってみて駄目だったというため、「勉強になりました」と伝えて引き下がった。
効いてると感じてる物をあえて薬に変更する必要は無いし、私にしても症状の軽減のための提案であって治療できる立場でもなければ、その能力がある訳でもない。
とはいえ、テレビのコメンテーターを頼りにせずに、病院を受診しているのなら通院を続けて、受診していないのであれば病院を訪れてもらいたいとは思う。