話したいことがあっても引き際が肝心

 成人の息子さんから、化粧水の『アルピタバリアミストローション』を頼まれたというお客様がいらしたが、うちのお店では入荷は可能なものの在庫は無く、『キュレル』でも良いと言うので売り場を案内した。
 ただ、アトピー性皮膚炎に効果があるかと訊かれたため、害にはならないけれど、良くもならないと考えられることを伝えた。
 病院からは『ワセリン』が処方されているそうで、本人がベトつくのを嫌がってるというお話があったため、それは塗り過ぎの可能性があることをお話した。
 例えば、手の甲の面積なら人差し指の先で『ワセリン』を取ったら取り過ぎで、小指の爪先に引っ掛ける程度あれば充分。
 それを薄く薄く延ばして30分もすれば、ベトつきなど感じなくなるはずである。
 また、医療用ワセリンより割高になってしまうが、市販品には不純物の少ない『ワセリン』もあるから、試してみても良いだろう。
 しかし、そういうお話をしていると、お客様に面倒くさそうな雰囲気が漂ったため打ち切り、ご本人に来店していただくよう勧めた。
 今回の場合は買い物を頼んだのは化粧水であるが、頼んだ人と頼まれた人が同じ基準で選ぶかどうか分からないし、得た情報をフィードバックするかも疑問。
 買い物を人に頼むというのは、案外とデリケートな問題なのだ。

 やや高齢でタバコの臭いの強いお客様が来店し、咳の相談を受けた。
 その時点で『ダスモック』(清肺湯)の出番かなとは思ったけれど、ヒヤリングをしない早合点は宜しくない。
 そこで、症状を詳しく訊いてみると、微熱もあるというので風邪が考えられる。
 やはり、基本には忠実であらねば。
 ところが、お客様は前立腺の治療を受けていて、飲んでいる薬と市販の風邪薬は一緒に飲まないようにと医師から聞いたという。
 やはり、基本には忠実であることは大事。
 お薬手帳は持ってきていなかったが、薬の現物は持参していたので調べてみると、2種類のうち一つが確かに、一部の総合風邪薬とは相性が悪いことが分かった。
 一つは排尿を補助する薬で、風邪薬によってはそれを邪魔してしまう可能性がある。
 お客様には、調剤してもらった薬局に問い合わせて市販の風邪薬を使って良いか相談してから決めるか、微熱については『清肺湯』でも面倒を見られることを説明したうえで、現在強く出ている症状の咳に絞って使ってみるかを提示してみた。
 すると、以前にも『ダスモック』を使ったことがあるとのこと。
 そうであれば、他の物を特別選ぶ理由も無いだろうとお勧めして、お買い上げいただいた。
 ただし、成分表示をおくすり手帳に貼って一元管理し、担当医には使ったことを報告するようお願いした。
 それから、体を休めるのと同時に内臓を休めるために食事は消化の良い物にして下さいと伝えた。
 お帰りになってから、お薬手帳は使用した薬の履歴こそが大事なので、薬の現物ではなく手帳の方も持ち歩くようお話するのを忘れたことに気がついた。
 まぁ、しょうがない。
 一時に、アレもコレもと欲張ってお話しても、鬱陶しさのほうが増してしまうかもしれない。
 また来店された時の話題の一つとして、覚えておこう。

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