「適当に選ぶ」その前に、目の前にいる専門家に相談を! プライベートな情報に鍵があることも

 お客様が、サリチル酸製剤で塗り薬の『トクホンチールOX』とフェルビナク製剤の貼り薬の『フェイタス5.0』をレジに持ってきたのでヒアリングしてみたところ、主訴は腰痛で「適当に選んだ」というため成分によって鎮痛効果や浸透力が異なることを説明した。
 鎮痛効果を三段階で考えた場合、『トクホン』や『サロンパス』に代表されるサリチル酸は一番弱い。
 というより厳密には鎮痛効果は無くて、弱い刺激を皮膚に与えることで痛覚神経を混乱させて痛みを誤魔化しているため、捻挫や打撲ような痛みには力不足である。
 一方、その弱い刺激がマッサージになるから、肩こりなど血流を改善させることが症状の軽減につながる場合に向いている。
 フェルビナクは、鎮痛効果が一段上がるとともに浸透力にも優れており、痛みで動くのもツライというレベルでなければ常備しておくと便利であろう。
 市販の外用消炎剤の中で一番鎮痛効果が高いのは、インドメタシンやロキソプロフェン、そして成分が血液中にも浸透しするジクロフェナクトリウムは最も優れているとも言える。
 ただし、その浸透力の高さゆえにジクロフェナクトリウムを使う場合は、持病や他に使用している薬の有無の確認が欠かせず、また日光に当たった場合に皮膚炎を起こす副作用があるため注意が必要。
 しかもこの皮膚炎は、薬を使った患部に現れるとは限らず、関係の無い場所に発症することがあるため、副作用と気づかないケースも有り、UV対策が欠かせない。
 今回のお客様は仕事での作業が原因らしく、病院には一回行ったきりだそうなので、医師には仕事内容まで話して意見を聞き、同じ病院にデータを積み重ねていくのが大事とお話をした。
 個人情報の保護意識が歪んだ形で肥大化している患者さんがいて、プライベートなことを訊くと怒られることもあるから、医師も私たちも根掘り葉掘りは質問しないので自分から情報を伝えるようにした方が良い。
 仕事柄、腰痛を繰り返すようであれば年に1回は誕生日などと決めて受診するよう勧めた。
 内臓には痛覚神経が無く(もしあったら、心臓が動くたびに激痛である)、内臓疾患を腰痛と感じることもあるため、同じ病院にカルテを残しておけばデータを比較して「いつもと違う」ことに気づいてもらえる確率が上がる。
 本日は、24時間貼りっぱなしにするジクロフェナクトリウム製剤の『ボルタレンEXテープ』をお買い上げいただいた。
 なお、強い薬の貼り薬だとかぶれやすいと考えるのは勘違いで、どの成分に反応するかは人によるから分からない。
 かぶれる原因は、汗やホコリを巻き込んだまま密封するせいということもあるので、貼る前には患部を正常にするのを忘れずに。

 お客様から口内炎の薬を求められ、強めの薬と患部の修復を促す薬とがあることを説明すると、初期で炎症も強いようなのでステロイド剤の『オルテクサー軟膏』と『口内炎軟膏大正クイックケア』を案内したところ、ミント味の後者を購入された。
 口内炎や皮膚炎、先の外用消炎剤を使うような症状も、強い薬を怖がって弱い薬をダラダラと長く使うより、最初に強い薬で症状を抑えて、症状が軽減するに従い薬も弱い物に乗り換えていく「ステップダウン方式」が、身体にも財布にも優しい選択となる。
 お客様は、お風呂に入ろうと思えば入れるもののシャワーで過ごしてるというため、口内炎を治すには血流と保温が大事とお話をした。
 患部を治す材料は血で運ばれるし、患部の温度を上げることによりウイルスなどの外敵と戦うために免疫機能を活性化させようと身体は炎症させているからである。
 冷たい物を飲んだり、シャワーで済ませて身体が温まらないと「もっと炎症させなきゃ!」と変に頑張ってしまうんである。
 太い血管が通っている背中側に重点的にシャワーを浴びるよう勧めたけれど、湯船に入るのが一番とも伝えた。

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