医者のように診断はできませんが、患者さん本人を観察するのも重要な情報です

 奥さんから『腎仙散』を頼まれたというお客様が来店し、念のため『猪苓湯』『竜胆瀉肝湯』『五淋散』も紹介して、比較を説明した。
 漢方薬は生薬の種類が少ないほどシャープに効くとされ、この中では『猪苓湯』が該当し、病院でもファーストチョイスとして処方されることが多い。
 そして、より明確に排尿時に灼熱感を感じるようなら『竜胆瀉肝湯』が候補となり、原因に疲労や体力低下が思い当たる場合には『五淋散』が適応する。
 『腎仙散』は、よく漢方薬と勘違いされやすいものの、民間で伝承されてきた民間薬で、アレもコレもと生薬がテンコ盛りだから、実のところ何がどんな効果を担っているのか分かりにくい。
 お互いに効果を打ち消し合ってるんじゃないのかと、思ってしまうくらい複雑な処方構成なんである。
 主訴は腹部の不快感と排尿痛があるとのことで、『腎仙散』の効く症状の範囲が広い代わりに浅いことをお話すると、「弱いってこと?」と何度も尋ねられ、一応は以前に使ったことがあるというため、薬は「効くと思って使えば効く」ケースもあるから、そのままお買い上げいただいた。
 ただ、奥さんが使ってみてどうだったかは聞いていないというのが不安要素。
 もちろん、効いたから同じ薬を求めているとも考えられるけど、そもそも他の選択肢を知らない可能性も高い。
 排尿痛があるようであれば、やはり『猪苓湯』『竜胆瀉肝湯』の方が適応するようにも思える。

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 やけに痩せている若いお客様が『コーラックファースト』をレジに持ってきたけれど、便秘に薬を使うのは初めてで、苦満感は無く、量が出ないというお話だったため、便の量を増やす『新ウィズワン』を紹介した。
 『コーラックファースト』は刺激性の便秘薬だから、もし食べる量が少なくてということであれば適応しない。
 しかし、お腹で膨らむのが怖いと言われたので、病院でも処方されることのある『酸化マグネシウム』を案内し、同じ内容の『コーラックMg』をお使いいただくことになった。
 『酸化マグネシウム』は、腸内の水分を集めて便を柔らかくして出す。
 これも便の量が少ないようだと適応しないけれど、腸を刺激するよりはマシであろう。
 他に、『漢方便秘薬』なんかは「漢方薬だから身体に優しい」と勘違いされやすいが、中身は『大黄甘草湯』で『コーラック2』などと同じ刺激性なので気をつけてもらいたい。
 お客様には、便通は毎日でなくても良いことをお話した。
「毎日の排便を」というのは、子供に習慣づけるための躾の話であって、本来は「排便のために、毎日トイレに入る」のを習慣にすれば身体も学習するというのが目的。
 トイレに行って、便が出なければトイレに留まる必要は無い。
 食べる量や、消化にかかる時間は人それぞれだから、2~3日くらい間が空いても苦しいと感じなければ、便秘として悩む必要も無い。
 むしろ、便秘だと悩んでストレスがかかる方が胃腸の働きを悪くしてしまう。

 水虫の薬を子供を連れたお客様から求められ、売り場を案内しつつ、病院の受診の有無を尋ねると、家族が以前に受診して今回も同じ場所だから頼まれたとのことだった。
 殺菌成分を基本に、痒み止めを重ねていて抗炎症剤も配合されている『ブテナロックVα』と、抗炎症剤と麻酔薬が入っている『マリングランデ』に、痒み止めと抗炎症成分が一つずつ合わせてある『ラミシールプラス』を紹介してみたけれど、患部の皮が剥けてる以外のことは分からないというお話だった。
 むー、以前に診断されているとなれば水虫の可能性は高いとはいえ、皮が剥けて痒みがあるのは湿疹でもなる症状。
 水虫に湿疹の薬を使ってもステロイド剤入りじゃなければ大丈夫だけれど、湿疹に間違えて水虫の薬を使うと殺菌成分が皮膚の修復を邪魔してしまう。
 ちなみに、ステロイド剤を使うと皮膚の再生を邪魔するうえ、患部の免疫機能を落として菌が繁殖しやすくなる。
 それを利用して、水虫かどうかを見分けるという方法があるものの、もちろんお客様には勧めない。
 いずれにせよ、同じ水虫の薬を選ぶにしても痒みの強さで選択が変わるから、本人が来店するか連絡が取れるのが一番なんだけどな。
 お客様が『ラミシールプラス液』を選んで購入され、患部以外にも塗り拡げるようお話した。
 水虫の原因となる真菌は、患部以外にも棲み着いてるかもしれないので。
 実は今回、障害のあるらしい子供が他のお客様にぶつかったり床に寝転んだりで、説明している間も注意を払わなければならず大変だった。
 もちろん家族は片時も目を離せないから、なおさら大変であろう。
 うーむ、それを考えると患者本人が薬を買いに訪れたほうが良かったのではないか。

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