塗り薬のステロイド剤は怖くはないけど、「使い慣れてる」と思われるのは怖いです

 お客様から「フルコートS」なる物を注文され、念のため調べたところ存在しないので『フルコートf』を案内すると、奥さんが虫刺されにいつも使っているとのことで購入された。
 しかし、これも念のため炎症が弱い場合には薬も弱い物を使う方法があることを伝えた。
 虫刺されならば長期連用なんてことはしないだろうけど、良く効くからと他の皮膚疾患のときにも使い、それが同じ場所に使い続けるという可能性を払拭できない。
 特に今回のように、薬の名前を正確に覚えていない人にお遣いを頼んでいるのは、事故を招く要素の一つ。
 そして、虫刺されの薬なら痒み止めも入ってることをお話すると、「いや痒みは治るのよ」というので、炎症と痒みはまた別なことを説明した。
 炎症は、患部が熱を帯びることによって免疫機能を活性化し、血流を促すことで老廃物の回収と再生のための材料を運ぶのを目的として起きる、いわば身体の防衛機構による働きである。
 一方、痒みというのは弱い痛みで、痛みは脳に異常が起きたことを知らせるための警報であり、患部では痛みの伝達物質を生成している。
 炎症を抑えれば異常が解消するから痒みも治まるものの、炎症が治まるまでは痒みは感じるものなので、それまでに患部を掻いてしまうかもしれないし、痒みはストレスにもなるから、痒みを別な成分で感じないようにしたほうが良いこともある。
 ステロイド剤で痒みが治まるとまで感じているようなら問題は無いが、自分が効くんだから他の人にもと思って、例えば痒みを我慢しにくい子供に使うとかだと適切でないケースも考えられる。
 奥さんは虫除けスプレーは使っているそうなので、体に吹きつけるよりも塗った方が効果的なことをお話した。

 お客様から頭皮の痒みに「テレビでCM している薬を」と注文をされたので『ムヒHD』を案内したけれど、患部の状態を自身でも確認していないうえ、病院で処方された薬が効かなくて、薬を変えてもらっても駄目だったから市販薬を買おうというものの、処方された薬については覚えていないというため、お薬手帳か実物をお持ちいただくようお話したところ、お帰りになった。
 処方された薬はチューブに入っていて、オレンジの蓋で白いクリームと、紫の蓋で白いクリームだったというのだけれど、それだけでは判別のしようがない。
 でも、調剤薬局に勤務している人だと推測できる模様。
 分かる人、スゴイ(゚д゚)!!

 高校生を連れたお客様が『メソッドASクリーム』と『レスタミンコーワパウダークリーム』をレジに持ってきたのでヒアリングしたところ、使うのは親御さんで、前者を指先の荒れに使っているとのことだが、指先がボロボロで痒みが強いというため受診の有無を尋ねると、長患いでずっと病院に行ってないとのことだった。
 また、『ベトネベート』を使っていたというので、『ベトネベートクリームS』と『ベトネベートN軟膏』を案内してみると、昔に医者から勧められて前者を使っていたそうだ。
 『ベトネベートクリームS』はステロイド剤の単剤で、『ベトネベートN軟膏』はステロイド剤と抗生剤の複合剤だから用途が異なる。
 ステロイド剤は優れた抗炎症を示す一方、患部の免疫機能を低下させて細菌に侵されやすくなるうえ、皮膚の再生を阻害してしまう。
 だから一般的には傷口には使わないが、オデキのように炎症を抑えながら細菌も倒さなければならない場合には、ステロイド剤と抗生剤を組み合わせる。
 そこからすると、『メソッドASクリーム』はステロイド剤に、抗生剤よりは弱い殺菌成分と痒み止め他に、皮膚の材料を運ぶ成分が加わっているので、ステロイド剤単独よりはマシかもしれない。
 とはいえ、症状は子供の頃からだというので、改めて病院を受診するよう勧めた。
 なにしろ指先がボロボロだから、漫然とステロイド剤を使い続けて良い状態とは思えず、医師の監督下での対応が欠かせないはずである。

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