胃腸薬は症状を言語化するのが難しいから、選ぶのも難しい

 お客様が『ザ・ガードコーワ整腸錠α3+』をレジに持ってきたさいに、使うのは初めてか尋ねると既に使っていて、反対に「どれくらいの期間、飲んだら良いか」と質問された。
 まず乳酸菌による整腸作用を期待する点で言えば、どんなに身体に良い菌も外から来たモノは全て敵として防衛機能が働くから、仲良くなるのに2週間くらいかかると説明したところ、ちょうど2週間飲んでいたそうだ。
 そして『ザ・ガードコーワ整腸錠α3+』の特徴の一つは、胃酸に弱い乳酸菌を腸で育て直すための納豆菌が加えられているところ。
 問題なのはもう一つの特徴で、乳酸菌を守るために制酸剤も入っている。
 つまり、胃の消化力は落としてしまうのだ。
 この点は、『新ビオフェルミンS』など他の整腸剤と比較したうえで使うか検討したほうが良いだろう。
 するとお客様は、食べると下痢しやすく、食べるのが速いからかもとお話されていたが、詳しく訊いてみると以前に胆石を取ったことがあると分かった。
 胆石のできる原因は未解明だが、腸での消化に役立つ胆汁の成分が石のようになってしまう。
 現在の下痢が腸の消化力の問題の可能性をお話して、胆汁の成分の一つであるウルソデオキシコール酸の『タナベ胃腸薬ウルソ』を紹介した。
 この胃腸薬も、乳酸菌製剤と同じく2週間程度は連続で使うことに意味がある。
 何故なら、胆汁は消化に使われると肝臓に戻されてから胆嚢に運ばれ、体内を循環しているので、車のオイル交換と同じようにウルソデオキシコール酸を入れ替えるのが目的だから。
 そう説明したところ、以前に大腸炎と診断されたことがあるものの自然に治ったという話も出てきた。
 そして、あれこれ考えるからストレスもあるかもというため『桂枝加芍薬湯』を紹介すると、やはり医師からも案内されたそうだが、そのときは漢方薬は長く飲まなければならないと思い断ってしまったという。
 確かにそういう使い方もするが、『桂枝加芍薬湯』自体はに用いる『葛根湯』などのように早く効いてくれる漢方薬である。
 それに、長く飲むという点では整腸剤も同じこと。
 お客様は、腸内環境を整える『ザ・ガードコーワ整腸錠α3+』と、腸の消化力の改善に働く『タナベ胃腸薬ウルソ』と、ストレス性の胃腸不良を落ち着かせる『』で迷われ、いずれにしても病院を受診することを考慮して、使った薬の成分表示をに貼っておくようにと勧めた。
 今回は、『タナベ胃腸薬ウルソ』を試していただくことになった。
 早く食べてしまう対策として、食事は全てを食卓に揃えて食べるのではなく、コース料理のように一品ごとに出して、残りを順番に席を立って用意する手間を入れ遅くする方法を提案した。

 カップルのお客様が『太田胃散A錠』をレジに持ってきたので、散剤とは処方内容が異なることを伝えると驚かれた。
 散剤の『太田胃散』に入っている、胃の働きを助ける健胃成分が少なくなっていることを説明したところ、使うのは女性の方で、胃の症状についてはうまく言語化できないようだった。
 確かに、胃腸の症状というのは人に伝えるのが難しい。
 ならズキズキとか締め付けられるようなとか、もう少し言語化しやすいのだが。
 お客様にも「難しいですよね」とお話して、お湯と水のどちらを飲むと楽になるかという簡易的な鑑別法を挙げたところ、お湯を飲む方が良い感じというため散剤を勧めたけれど、粉薬は飲めないとのことだった。
 お湯を飲んで楽になるということは、胃が冷えているか疲れていることが考えられ、健胃剤が欲しいところなのだが。
 水を飲むと楽になる場合は、胃炎を起こしているか胃熱を伴っているので、胃酸の出過ぎを抑える制酸剤が向いている。
 それに、胃腸にも味覚と嗅覚があるので、匂いを感じやすい散剤のほうが少しだけ効果が上回ることが期待できる。
 そこで錠剤の『スクラート胃腸薬S』と『ギャクリア』(六君子湯)を紹介したけれど迷われたので、飲み慣れている薬を飲むのもまた効果的と伝えて、そのまま『太田胃散A錠』をお買い上げいただいた。
 お客様からは、「また来ます」と言っていただけた。

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