「痛み」に種類があるように、「鼻づまり」にも種類があります

 お客様から『イブ』を求められたけれど、鎮痛剤のみの無印なのか、鎮静剤を足してある『イブA』のどちらを使っていたのか尋ねると、思い出せないとのことだった。
 メーカーさんもいいかげん、パッケージを変えて見分けが付きやすいようにすれば良いのにと思う。
 患者さん自身が、どっちを使っていたか思い出せないくらい似たデザインというのは不便でしかない( ´Д`)=3
 お客様には念のため、同じく名前にAのつく『バファリンA』を紹介してみると、用途は生理痛で効かなかったそうだ。
 イブプロフェン製剤の『イブ』は『ロキソニン』の主成分であるロキソプロフェンの親戚筋で、痛みの信号の発出と中枢神経がその信号を受信する双方を止めるのに対して、『バファリンA』は主に痛みの信号の発出を止める。
 それだけを聞くと『イブ』や『ロキソニン』の方が痛み止めとして強力だと思うかもしれないけれど、なにも受信する中枢神経まで止める必要は無いというケースもある。
 例えば、肩こりは不快ではあるものの患部の炎症を抑えれば充分だろうし、虫歯なんかでの歯痛はどのみち治療が必要なのだから患部の炎症が一時的にでも沈静化すれば良いので、末梢神経に作用するアスピリン製剤の『バファリンA』を使うのは有効な措置であろう。
 ただ、生理痛は痛みの中では特殊で、一般的な痛みが生命の危機を報せる信号だとすれば、正常な生理活動の一環が苦痛となってしまっている。
 そこで生理痛専用薬の『エルペインコーワ』のように鎮痛剤に、わざと内臓機能を落とす成分を合わせるという方法も選択肢の一つとなる。
 お客様にも『エルペインコーワ』を紹介してみると、専用薬を使うほどではないという話で、しかし鎮痛成分だけでは不安だったのか『イブA』を購入された。
 使える薬の候補を増やすのも良いし、効いているのであればあえて薬を変えなくても良いと、お客様には伝えた。
 一番の問題は、他の候補もあることを知らないまま過ごすこと。
 だから、薬を求めるときには銘柄の指名ではなく、まず症状や目的を伝えてもらいたい。
 それこそ私より知識のある登録販売者や薬剤師はいくらでもいるので、初めて訪れた店では、今まで使い慣れてる薬が決まっているとしても相談してみれば、可能性が広がります。

 お客様が『イブA』を購入されるさいに無印とは処方内容が異なることを伝えると、車の運転はしないとのことだったが、鎮静剤の副作用は眠くなるとは限らず、一瞬の判断力が落ちることを説明した。
 症状についてもヒアリングしようとしたけれど、主訴は頭痛で、しかしズキズキするタイプなのか、締め付けられるような感じなのか、朝方に頭が重くて午後にかけて楽になってくるのかなど、症状がハッキリしないうえ、3日以上続いてるというものの、お客様の反応が鈍くて残念ながら打ち切った。
 人間の体は機械ではないから、起きている症状がテキスト通りとは限らず、それを言葉で表現するのが難しいということもあるので、これは仕方のないところ。
 自分が患者になったときには日頃から人に相談する練習が必要だし、こちらもヒアリングが上達するには数をこなすしかない。

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 若いお客様が、お薬手帳を片手に漢方薬の棚で長考してる様子だったので、何度か近くを通って挨拶してみたけれど、いつのまにか帰られていた。
 『葛根湯加川きゅう辛夷』『荊芥連翹湯』を見ていたようだったから、鼻づまりだろうか。
 患者さんが相談を望まなかった以上、どうすることもできない。
 ストーカーではないけれど、お客様が何の薬を見ていたかというのは、後でヒアリングすることになった場合には重要な情報。
 例えば、胃腸薬を見ていたお客様が最終的に鎮痛剤をレジに持ってきてヒアリングしてみると、食べすぎの腹痛に鎮痛剤を使うつもりだったというケースは、年に3回はある。
 もし、胃腸薬を見ているのを目撃していなければ、鎮痛薬を買うのは頭痛や生理痛かなと、声をかけずに見逃してしまうこともあり得る。
 今回のように鼻づまりが予想される場合、鼻づまりにも種類があるので、お客様から相談を受けたりレジでお会計するさいには、最低限その鼻づまりの仕方を確認しないと、適応しない薬を売ってしまう可能性も考えられる。
 もし主訴が、鼻づまりと鼻水を行ったり来たりしているようなら上半身を温めながら不要な熱を発散する『葛根湯加川きゅう辛夷』が適応するし、鼻が詰まる一方で寝苦しくなるようなら上半身を思いっきり冷す『荊芥連翹湯』の方が効果的で、詰まった鼻汁が喉に落ちてくるようだと胃が悪くなってる可能性があるので胃薬としても働く『辛夷清肺湯』が候補となる。
 これは「鼻づまり」という症状が、一筋縄ではいかない難しい症状でもあるからだ。
 現代医学で考えた場合、花粉に反応したりウイルスなどを追い出すための「早発」の症状が「鼻水」であり、遅れて鼻の奥の血管が炎症して膨らみ外敵と戦ったり壊れた細胞を修復するために「遅発」の症状として「鼻づまり」となる。
 一方、漢方的には胃などの内臓が冷えると余分な水分を排出するために「鼻水」が起きて、反対に胃炎といった内臓が熱を持った状態の場合には熱を放出するために上半身にその拠点を築き「鼻づまり」となる。
 なので、漢方的な養生法は鼻水でも鼻づまりでも同じで、積極的に温かい物を飲食したり入浴し、服装はお腹周りを温めるために下半身に厚着をする。
 内臓が冷えているのなら温めるのは最も有効な手段だし、体内に熱を持ち上半身に熱が上昇して篭もるのなら下半身を温めて血流を良くし熱を循環させてやるのだ。
 そういう養生法も含めて、お客様に提供する情報を事前に頭の中で整理するのにも、お客様を観察することは重要なのだけれど、残念ながら上司の中には、そういうことを理解してくれず、お客様に呼ばれてからレジに駆けつければ良いと他の作業を優先するよう指示されることもある。
 もちろん他の作業も重要とはいえ、医薬品のコーナーにお客様が来たなら、目的が薬なのだから優先順位は自動的に上がる、と私は思っている。
 なので、そんな上司に邪魔されないためにも、入店したら先に相談して下さいませ(´∀`)

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